キャリー [強制起訴シリーズ]
起訴者:元店主
強制起訴シリーズ36弾
スティーブン・キングの長編デビュー作であり、70年代にブライアン・デ・パルマによって映画化、どちらも名作の誉れ高い作品である「キャリー」。それを、「ボーイズ・ドント・クライ」のキンバリー・ピアース監督がリメイク。主演は美少女俳優として人気絶頂のクロエ・グレース・モレッツ。しかし・・・そもそもキャリーは不細工で暗い苛められっ子の設定。その彼女が超能力を得て、みんなに復讐!という劇なので、クロエ主演で大丈夫?そもそもなんでいま「キャリー」のリメイクを?との事で話題になっている作品です。
- マツヤマ
- なかなか面白かったよ。オレはデ・パルマ版の「キャリー」は観てないんだけど・・・当時はホラー映画として避けてたからな、でもこんなに面白いなら観ておけばよかった、と思ったよ。
- ヤマネ
- ええー!ボクはちっとも面白くなかったですよ!デ・パルマ版は昔に観ましたが、それとは較べものにならない。どころか、今年観た映画の中でも最低ランクの映画です!
- 元店主
- 私も・・・ダメでした。デ・パルマ版の方が遥かに面白かったです。マツヤマさんはデ・パルマ版を観てないから、けっこう楽しめたんじゃないですか?
- マツヤマ
- そうかぁ?・・・むむむ、そこまで言うなら、今からニコ動でデ・パルマ版を観るから、ちょっと待ってろよ。
- ヤマネ
- 今からですかー? じゃあ、本でも読んで時間つぶしてますから。
── しばしお待ち下さい ──
- マツヤマ
- よし、観たぞ!
- ヤマネ
- ほう、で、結果は?
- マツヤマ
- オレはピアース版(今作)の方が好き。
- ヤマネ
- えええー!うっそー、あり得なーい!マジですか?・・・ケンタロウさんはどう思います?
- 元店主
- ・・・ううう、やっぱ、ほむらちゃんいいわー
- ヤマネ
- また「まどマギ」観てきたんですか!このわずかな間に!もういい加減にしてくださいよー。・・・マツヤマさんがピアース版の方が好きって言ってるんですよ。どう思います?
- 元店主
- へ?そうなんですか。・・・えーと、実はデ・パルマ版観たの随分昔なんで、あんま覚えてないんですけど・・・でも、デ・パルマ版は映像がカッコ良かった覚えがあります。あの例の分割画面で。
- ヤマネ
- そうですよねー。今回は映像がダサいし、音楽ももっさーい。なんか90分のテレビドラマを見せられてる感じがしました。
- マツヤマ
- まぁ、確かにデ・パルマ版の方が音楽も映像もカッコ良かったけど・・・。
- ヤマネ
- それにやっぱクロエが可愛いすぎます。あれじゃ、いじめ→復讐という劇にリアリティが生まれませんよ。
- マツヤマ
- いや、そこらはちょっとオレは違う意見。現代はむしろ可愛い子だってターゲットにされると思う。不細工とかネクラとか、そういう分かりやすい符丁で苛められる時代じゃないんだよ。
- ヤマネ
- ふむ。それはそうかもしれません。でも、ドラマの問題なんですよ。クロエがもともと可愛くて、体格もいいもんだから、別にプロムのドレスを着たって、特に輝いて見える訳でもなく。むしろ普段の格好の方がよくね?といった感じ。幸せの絶頂から絶望の奈落へ、という落差が表現できてないんです。だから超能力でプロム会場をムチャクチャにする場面も、予定調和的でのんびりムードのマグニート(Xメン)か?と、笑いそうになりました。
- マツヤマ
- そうかぁ?オレはプロムでのクロエは輝いてたと思う。あの幸せそうな笑顔!のちに台無しになるのが分かってるだけに、あの笑顔の輝きは眩しかったな。
- 元店主
- 私はプロムの惨劇で先生を助けたのがどうにも解せないんです。デ・パルマ版では自分に好意的な人も無関心な人も悪意を持ってる人も、無差別に殺してたでしょ?あっちの方がキャリーの絶望の深さが出てると思うし、リアルだと思います。
- ヤマネ
- ボクはスーの描かれ方が気になりましたね。デ・パルマ版では、スーとトニーが本当にキャリーの味方なのか、どうか、が分からなくて、それが物語に深みを与えていたと思うし、ハラハラドキドキさせられたんだけど、今回は単なる分かりやすい善人でしょ。展開にスリルがないし、人間的にも魅力がない。全てが予定調和的で、なまぬるいんです。あと、ラストが酷い。
- 元店主
- そうそう!あの終わり方はないよね。デ・パルマ版の「キャリー」といえば、あのラストで伝説になってる訳だけど・・・今回のあれはなに?
- ヤマネ
- そりゃ、同じギミックを使う訳にはいかないでしょうけど、それなら何か、違うものを用意しないと。あの墓石がビシっと割れたのは・・・もー、めちゃめちゃ脱力した!へ???なに?これでおわりー???て。
- 元店主
- あのラストに典型的だけど、なんか凄く説教臭いんだよね、今回のは。いじめはダメですよーって言いたいの?って感じ。デ・パルマ版は下世話で見せ物っぽくて・・・そこが良かった。キャリーの事も突き放して描いてるし。誰も映画館で説教されたくないよねー。
- マツヤマ
- むむむ、そこまで言われると、オレとしても反論せざるを得ないな・・・。確かに今回のはデ・パルマ版に較べて生温いかもしれないけど、そこがいい所なんだよ。現代的で。
- ヤマネ
- へ?どういう事です?
- マツヤマ
- デ・パルマ版が作られた70年代は、東西冷戦時で、敵と味方がわりとはっきりしてた時代なんだよ。だからあんな明暗のくっきりとした復讐劇が撮れたわけ。ところが現代は、敵と味方が相互浸透して不分明、グローバリズムの進展によってあらゆる価値観が一様に均され、どこまでも薄っぺらで生温い世界が広がってるんだよ。そういった現代の“リアル”をこの作品は反映してるんだ。で、そういった時代には薄っぺらな善意が蔓延るんだよ。はっきりとした“敵”に鍛えられる事がないからね。ナイーブ過ぎる善意、と言ってもいいけど。先生やスーはそれを表してるわけだ。
- 元店主
- おお、なーるほどー。・・・でも、それならこの映画はその“薄っぺらな善意”を肯定してる事になりますよね。デ・パルマ版では殺された先生を助けてるし、スーの扱いもよくなってるし。それはやっぱり、ダメなんじゃないですか。
- マツヤマ
- うーん、そこはオレの深読みによるとだなぁ・・・、先生もスーもちゃんとキャリーの復讐はうけているんだ。
- 元店主
- へ?どういう事です?
- マツヤマ
- まず、先生だけど・・・あれは単に助けたんじゃなくて、わざと地獄絵を見せる為に生かし(殺さず)、ステージの上に立たせたと思うんだ。自らの生温さを自覚させるためにね。で、スーの方はお腹に手を当ててたから・・・あれは赤ちゃんに何か呪いをかけたんじゃないかな。スー本人も、あんな事されたら後々まで不安を引きずるだろ?
- ヤマネ
- それは強引過ぎますよ!それじゃ深読みじゃなくて、無茶読みです!映像表現的に言っても、先生を持ち上げた後に床の上の連中を殺してるし、家が沈む前にスーを外に放り出してるので、明らかに“助けた”という表現ですよ!
- 元店主
- 確かにあの後、先生もスーもトラウマを負うでしょうが、それは結果として死ななかった他の関係者も同じだし、それが殺されるより悪い事だったとは思えないんですけど。つまり復讐を受けたとはいえないのでは。それに、やっぱそういう“生き残った者が負うトラウマ”といった点にスポットが当るのは、説教臭いと思うんですよね。いじめはいけません!いじめる奴は当然悪いが、いじめを阻止できなかった者たちも悪いです!みたいな。なんか、気持ち悪いですよ。
- マツヤマ
- むむー、でもやっぱキャリーが可哀相だろ・・・
- ヤマネ
- あ!わかった!マツヤマさん、クロエ・グレース・モレッツが良かっただけなんじゃないですか?それでそんなにキャリーを擁護してるとか。
- マツヤマ
- ドキ!・・・実はオレ、今回初めてクロエ・グレース・モレッツがいい!と思ったんだ。可愛くて、可愛くて・・・もう、クロエ・グレースに萌えっつ、て感じ?
- ヤマネ
- ・・・豚の血を浴びせられた気持ちです。ボクは別にそれほどいいと思えないんですけどね、クロエ。あ、そうえいばケンタロウさんはクロエファンでしたよね。
- 元店主
- うん。でも・・・今回はフツーだったかな。なんつーか、2、3年前の方が良かった。14歳ぐらいの頃のクロエが。
- マツヤマ
- 14歳?それって、もしかして魔法少女たちの年齢じゃないか?
- 元店主
- ドキ!・・・やっぱ、ほむらちゃんに較べたらクロエなんて・・・。だってほむらちゃん、子供に果物かなにか頭にぶつけられて、ドロっとキャリーみたいに顔が染まってたけど、全く動じないし。「せいぜい仲良くしましょうねー」って、カッコよすぎ!
- ヤマネ
- あー!もう二人とも!いい加減にしてくださーい!!
★
- マツヤマ
- ところでオレがどうしても気になるのは・・・アメリカのバケツはそんなに重いのか?という事だよ。
- ヤマネ
- それボクも思いました!確かデ・パルマ版でもバケツで死んでましたね。
- 元店主
- あれは相当の違和感ですよねー。でも2度も同じ事やってるから、やっぱあれ、アメリカ的にはリアルなんですかね?そりゃバケツ頭に当ったら死ぬわ、とか。
- マツヤマ
- あと、自分の恋人に誘わせてキャリーをプロムに出席させる、というスーの計画がわからん。あんなことされて嬉しいか?たとえプロムが上手くいって、その時はキャリーは楽しくても、その後が却って悲惨だろ。
- ヤマネ
- そうなんですよねー。さっきも言いました様に、デ・パルマ版ではスーが敵か味方か曖昧なんで、如何にも罠っぽい計画でドキドキして観たんですけど、今回のは・・・あんたらもしかしてアホ?としか思えないですよ。幼稚すぎる。
- 元店主
- そもそもプロムという風習自体が謎なんで・・・。私的には、プロムなんかに行きたい連中は国籍人種関係なく、別世界の人間ですから。理解できません。
- マツヤマ
- あと、2作ともトニー役の男がカッコ悪いんだよな。あれで校内一の人気者って・・・アメリカ人の美意識はわからん。
- ヤマネ
- はい!ではまとめとして、アメリカ人は謎!特にアメリカのバケツが謎!という事でいいですか?
- 元店主
- 別にいいよ・・・。で、来月12月、今年最後の課題映画は?
- マツヤマ
- オレだな。12月の映画は「ウォールフラワー」だ。サリンジャーをジョン・ヒューズが撮った!みたいな映画らしい。
- ヤマネ
- わーお。学園ものが続きますね!みなさん、いじめはいけませんよー。てなことで、では!
Comments
投稿者 uno : 2013年12月02日 20:53
こんばんは。
まどマギ、キャリー、まどマギ、まどマギ。。。
キャリーが忘却の彼方へと消えていく(泣)
ブライアン・デ・パルマ版は見ていません。
ポスターを見て期待していたのですが、面白くなかったなあ。
作品の焦点が絞りきれていないのか、なんだかぼんやりした感じがあって。
キャリーに不気味さがあれば面白かったと思うんですよね。
クロエが可愛いくてキャリーが全然怖くない!クロエに陰がないんですよ。なんか輝いてないか?とさえ感じます。母親が断然不気味で怖い。キャリーの母親がスーの母親に仕立てたドレスを渡す場面。あの緊張感が全編にあればなあ。怖いの嫌いですが。
体育館での殺戮場面も呪いというより、超能力少女が暴れてるだけに思えて。。。
この作品で一番嫌な感じがしたのがスーとトミー。
スーは罪悪感からトミーに、プラムにキャリーを誘わせる。パルマ版はどうだったかのか分かりませんが、これが気持ち悪い。それもいじめやん!
しかもプラムの間も携帯でやり取りしてるし。
趣味悪いわ。
キャリーによる恐怖よりも、ねっとりとしたいじめの気持ち悪さが印象に残ってます。
最後に。あの高さからブリキのバケツが落ちてきて、角に当たったら死ぬと思います!
角に当たったかは分かりませんが。
あれ、10m以上の高さがありますよ。
たぶんドリフの金たらい落としで慣れてるだけちゃうかなあ。
では。
投稿者 元店主 : 2013年12月03日 02:51
おお、あのバケツのシーンにリアルを感じるとは!さすが理系の意見。
確かにあのシーン、ドリフっぽい。
ちなみに、うのぴの計算だといかほどの衝撃力になるのか、教えてくれないかな?(**キロの棒で思いっきり殴ったくらい、とか。そんな感じで)
あと、単純な書き間違えかもしれないけど、プラムじゃなくてプロムね。
投稿者 uno : 2013年12月05日 00:46
元店主さん
プラム。。。完全に書き間違え。プロムなんて言ったことないし!(言い訳)
バケツ問題ですが、いま簡単に計算出来る範囲で。
10mの高さから物体を落とした場合、簡単のため空気抵抗を無視すると、質量に関係なく時速約50kmになります。計算はしています。
空気抵抗があるので時速50kmよりは遅いにしても、近い速度だとは思います。
で、棒で例えると分かり易いのでしょうが、いまスッと思い浮かばないので勘弁を。
モーメントというものを考えなくてはならなくて。
時速50km近い速度で飛んできた金属製バケツが無防備の頭に直撃したと考えると、結構な衝撃だとは思います。
(空気抵抗に関しては難しい問題なのでどの程度減速されるのか分かりません)
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