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2012年12月14日(Fri)

高地戦 []

Text by 元店主

きたな。この年末という時期、このタイミングでこの映画がきたという事は、ほぼ、この映画が本年度の私の映画ベスト1に決定!という事になるだろう。
監督に「義兄弟」のチャン・フン、脚本に「JSA」のパク・サンヨンを迎えての朝鮮戦争を描いたこの映画、徹底的に容赦なく、クールでドライ。戦争の愚かしさを完膚なきまでに描き尽くした傑作となっております。

韓国映画といえば、その残虐描写の秀逸さによってよく評価されていますが、それは多分本質ではない。その本質は、やはりその容赦のなさ、にあると思われます。容赦なく、真実を描き出す。例えば、人の命というものは社会的には全く平等ではなく、完全に序列がある、という事。いかに勇士だ、英雄だと言われようが、兵士とは所詮捨て駒に過ぎません。そしてその事は、戦場で泥の中を這いずり回っている兵士たちはよく分かっている。なぜなら、彼らは常に戦場の中で、命に序列をつける作業をしているからです。
ここで何人の仲間を捨てればみんなが助かるのか。ここでは誰と誰を切れば、一番いいのか。そういった過酷な状況を彼らは生きています。それが、この映画には徹底して描かれている。

自分たちは所詮捨て駒に過ぎないと十分承知している。戦争が如何に愚かしくバカバカしいか、分かっている。また敵も同じく血の通った人間で、別に悪い訳でも、自分たちより価値がない訳でもないとも分かっている。故に、戦いたくない。敵を殺したくない。自分が殺される方がマシだ、とさえ、思う。
しかし。それでもやらねばならない。力を奮い起こし、この全く虚しい愚行を決然とやり遂げねばならない。殺したくもない敵を殺さねばならない。
この力をみんなに与えるために、ワニ中隊シン・イリョン大尉が最後に行う演説、激励はほとんど崇高なまでに感動的です。「オレたちこそ、そのワニだ!この戦場を支配するんだ!」「うおー!」
まだ若いのに、モルヒネ中毒で、自分より歳上の猛者たちを率いるシン・イリョン大尉。かっこよすぎます。

安倍自民党や、維新の会など、排外主義的で好戦的な輩が幅を利かすキナ臭い昨今。観るべき映画は正にこれではないでしょうか。
京都みなみ会館にて12月21日(金)まで上映中。まだの人は是非!

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