「キック・オーバー」 []
待望のメル・ギブソンの新作はイギリス製作。とはいっても表面上メルは製作・脚本に関わっているだけで、監督は「アポカリプト」の助監督エイドリアン・グランバーグ。・・・知らん!誰それ? って、 まぁ現大阪市長を支える松井某府知事のような存在だと思えば分かりやすいか。だからこれは“メル・ギブソンの映画”と言ってもぜんぜん間違っちゃいない。
メル・ギブソンが好きだ(ちなみに大阪市長は嫌いだけど)と言うと、「えっ、DV 疑惑の?」、「ユダヤ人差別主義の?」、「カトリック原理主義の?」、「ドSの?いやドMだったっけ?」とか。・・・るせーよ!オレはメルが好きだって言ってるだけじゃねぇか。「えっ、小沢一郎支持してんの?」みたいな聞き方するなよ! っつうか、小沢も支持してるよ!グチャグチャ言うな! あぁそういえば、ユダヤやアメリカを敵にまわせばスキャンダルが付きまとうという点ではどっちも似ているなあ。
ということで今回もバイオレンス。メル作品の何が面白いかと言えばやはり過剰なバイオレンスシーンだ。拷問で足の指のをバッチンバッチンちょん切る音も・・・うん、やっぱウワサは一部当たってるのかも。
原題は「GET THE GRINGO」。邦訳すれば「アメ公(または、クソったれアメリカ白人)を取っ捕まえろ!」でいいのかな? でもなんだかマカロニウエスタンみたいなタイトルだな。「ADIOS GRINGO(続・さすらいの一匹狼)」を思い出す。グリンゴとはスペイン語圏から見た白人の蔑称。ちなみにアミーゴは男同士で「よう、兄弟(きょうでぇ)!」みたいな感じだ。そして何故かもう一つ原題(?)があって「HOW I SPENT MY SUMMER VACATION(夏休みの過ごし方)」は後記するが、よい子のみんなへのメッセージでもある。
さて舞台がメキシコに実在していたエル・プエブリート(小さな町という意味らしい)刑務所は文字通り小さな歓楽街みたいで、なんだかマカロニの舞台みたいだ。
主人公(メル・ギブソン)は適当に名乗るが本名ではない。まるで「ミスター・ノーボディ」だ。ドライバーとクレジットされいるが、以下からは“メル”で。
マフィアから大金を盗んだメルは、パトカーに負われ、国境の壁を破って、メキシコの悪徳警官に捕まり、カネは取られて身柄は件の刑務所に。その前の勾留所では牢の新入りとして壮絶なリンチを受けるが、嬉しそうにも見える。
これが刑務所内部!
まずは刑務所暮らしを始めたメルによる、所内の構造、人間関係や支配者などの分析が独白ナレーションで語られる。とくにラスト、いろいろと手に入れることが出来たメルが「よい子のみんな、犯罪は割がいいと思うかもしれないけど、オレのようなワザの持ち主がこれで済むわけがない。まあ残りの夏休みを楽しむとするよ」(って、R15+ だけど)って言っちゃう安っぽさが、やはり!マカロニ作品の「ミスター・ノーボディ」(1973、トニーノ・ヴァレリ監督)を思い出してしまう。
後半、ある事情で刑務所を抜け出し(ムショの出入りは牢名主が勝手に決められる)国境を越えてアメリカに来たメルは、公衆電話でクリント・イーストウッドのモノマネをしたり、大実業家になりすますなどして、公衆電話を駆使して、ある企業ビル最上階の社長室に2人の敵を呼びつける。モノマネはイーストウッドへのオマージュという声も多いが、それよりもイーストウッドを取り巻く権威主義のようなもの(メルの主観)への皮肉にも見える。
さて、そこの社長になりすましたメル。窓から景色を眺めている2人の後ろ姿に手榴弾をコロコロコロコロ・・・、ドッカーン! 、スプリンクラーの雨がザーッ!、そのとき、あらかじめ気絶させたそこの社長がいるトイレの戸が開き、傘をバサッと開いて、余裕たっぷりにその場から立ち去るメル。んー、粋だなあ。オッサンでなければ画にならないこのシーン。これは今年のベストシーンになるかもしれない。
「パッション」以降、醜聞続きで、ハリウッドから干された(これも醜聞のひとつかも)と言われているメル・ギブソン。国境を越えてイギリスからアメリカに投げつけた手榴弾のような映画だけど、届いていないし、破壊力もないかもしれない。でもこの不良(品)オヤジの全編全力疾走には興奮しっぱなしで、あっという間に終わってしまった、と思ったら上映時間95分か。それなりだな。
このオッサン、自分はヘビー・スモーカーなのにガキの喫煙は許さないという、ある意味道徳的な部分もあるということも付け加えておく。アディオス・アミーゴ !
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