「白雪姫と鏡の女王」 [強制起訴シリーズ]
起訴者:元店主
強制起訴シリーズ21弾
「白雪姫と鏡の女王」
ターセム・シン監督
「セル」「落下の王国」「インモータルズ」・・・と、常にアート性過剰の映像で独自のスタイルを誇るターセム・シン監督の最新作はなぜか「白雪姫」!今年はルパート・サンダース監督による「スノーホワイト」もあり、なんで白雪姫ばっかり?と思ってたら、グリム生誕200年なんですと。グリム童話の中で最もアメリカ人に愛されていると言われる「白雪姫」。さて、如何様にアップデートされている事やら。
- ヤマネ
- はい、はーい!言わせて下さーい!・・・もう、ダメでしたわー、これ。ターセムの作品の中では凡作でしょうー。全体的にゆる〜い感じ。ゆるすぎ!
- マツヤマ
- まぁ、ターセムは『落下の王国』という傑作があるからなぁ、あれに較べれば全然落ちるけど・・・
- 元店主
- うん、ヤマネくんの言いたい事は分かるよ。でも、これ、一応ターセムのつもりでは家族向け映画らしいし。まー、こんなもんなんじゃない?ゆるさでいえば。
- ヤマネ
- おろ?二人とも、これ面白かったんですか?これが???
- マツヤマ
- いや、まーまー、というのが正直な所。別段面白かった訳でも、面白くなかった訳でもなく、まーまー。ただ・・・、う〜ん
- ヤマネ
- なーんか、歯切れが悪いですね!なにが言いたいんですか!
- マツヤマ
- ・・・うーん、確かに、映画の99%は、ふーん、こんなもんかー、まーまーだな、といった感じで観てたんだよ。でも、実は、思わず泣いてしまった所があるんだよな・・・
- ヤマネ
- ええ!どこですか?
- マツヤマ
- エンディングだよ。みんなでボリウッド風に『LOVE』を歌って踊る所。あそこでゾワッと鳥肌が立って、気づいたら・・・もう顔中涙まみれでグチャグチャだったよ
- 元店主
- ああ!あそこは良かったですね!私も最後にみなで歌って踊る、というエンディングは大好きです。前に『エンジェル・ウォーズ』というどうしようもない映画を観た時も、その99%は怒りと脱力感で観てたんですけど、映画のエンディングでみんなで『ラブ・イズ・ザ ドラッグ』を歌って踊る、というのを観て、一瞬許せるかも、と思いましたもん
- マツヤマ
- 『スラムドッグ$ミリオネラ』とかな。まぁ、ボリウッド風味、なんだろうけど。あのシーンのおかげで、評価があがったな。終わりよければなんとやら、だよ
- ヤマネ
- ええー・・・、いや、ボクもインド映画大好き!ラジニカーント最高!『ロボット』見逃しちゃったよー!ええーん(泣)!・・・という人間なんで、もちろんエンディングでダンス!というのは好きですけどー、『スラムドッグ』も良かったですけどー、・・・この映画の場合は弱い!と思うんです。なぜかといいますと・・・ジュリア・ロバーツが一緒に踊ってない!
- マツヤマ
- あ、言われてみれば、そうだな
- ヤマネ
- はっきり言ってこの映画の最大の欠点は、ジュリア・ロバーツを活かし切れてない事です!!!
- 元店主
- それは、同意。確かに、この性格設定なら、もっといけたよね。ジュリア・ロバーツなら。私も、その点は残念だった。ジュリア・ロバーツ、好きなもんで
- ヤマネ
- ボクは別に好きじゃないんですが、とても評価してるんですよ、ジュリア・ロバーツ。彼女なら、もっと圧倒的に意地悪でワガママでチャーミングな女王ができたはずです。それがなんか、しょーもないギャグばかりやらされて・・・。これでは、『スノーホワイト』の女王役のシャーリーズ・セロンに負けてるでしょ。多分。あっち観てないからテキトーですが。・・・あとは、エンディングにおける白雪姫役のリリー・コリンズのダンスがぎこちない。それがちょっと。歌はさすが、親父がフィル・コリンズだけあって上手ですが
- 元店主
- まぁ、そうかな。でも可愛いやん、リリー・コリンズ
- ヤマネ
- そういう問題じゃなくてですね! やっぱこの映画は白雪姫が剣をとって女王軍と闘う、という映画なんですから。その点がしっかり描けてないとダメだと思うんです。自ら闘うヒロイン。んで、その点、リリー・コリンズは身体があまり動いていません!アクション&ダンスが弱い。運動神経、鈍いんじゃないですか?
- マツヤマ
- はは、そこんところも、『スノーホワイト』に負けてるんじゃない?『スノーホワイト』の白雪姫役のクリステン・スチュワートは、監督のルパート・サンダースとできちゃって、恋人のロバート・パティンソンと破局してたぞ。アクティブで素早いよな、行動が。あっちの映画も、確か、白雪姫が反乱軍を率いて女王軍と闘う話だろ。オレも観てないから、テキトーだけど
- ヤマネ
- 大体、リリー・コリンズってそんなに可愛いですか?眉毛、太すぎません?
- 元店主
- そこが可愛いんじゃないか!
- マツヤマ
- オレも最初は、眉毛太すぎだろ?と思ったよ。でも途中で、ああこれはインドなんだ、白雪姫はインドを象徴してるんだ、と思ってから納得できたよ。財政破綻寸前の鏡の女王は当然アメリカ。白雪姫は新興国インド。で、王子はアメリカの属国だよな。だって、ほんとに犬になってたし。小人たちは、アメリカに使い捨てにされたタリバンとか、そんな感じかな。日本で言えば山口組とか。だからこの映画は、アメリカの属国に対して、いつまでも強欲なアメリカの帝国支配に付き従うのか、それとも世界平和のためには自立して、新興国側についてアメリカと闘うのか、それを突きつけている映画なんだよ。こういった形で、アメリカに対する批判・闘争をさりげなくやってみせた所に、オレはターセムのインド魂を感じて、感心したね。正しい民族的アイデンティティの主張の仕方だと思った。どこかの島の領有権を主張して愛国心を奮い立たせている様な、そんな程度の低い話じゃないんだよな・・・
- 元店主
- 領土や人種に訴える愛国心は下劣ですからね
- ヤマネ
- おおーっと!その話は危ない危ない!・・・では急いで話を戻すとですね、王子役のアミー・ハマー。も〜〜〜う!最高にイケてなかったですね!『J・エドガー』ではあんなに良かったのに・・・。もしかして、えらい大根なんじゃないですか?
- マツヤマ
- 彼は『ソーシャル・ネットワーク』でのウインクルボス兄弟役も良かったけどな。ま、所詮、属国役なんだからイケてないのは当然なんだよ。やたら差別意識の強いキャラだったしな。
- 元店主
- 確かに王子は魅力ゼロでしたねー。で、あんな魅力のない奴に、白雪姫が惹かれるのがどーにも解せん。あれがこの映画の最大の問題点でしょう
- ヤマネ
- いや、白雪姫は18年間も閉じ込められてたんだから、最初に会ったイケメンにやられちゃうのはアリだと思うんです。問題は、女王の方ですよ。海千山千のはずなのに、あんな男に惹かれるなんて!
- マツヤマ
- 王女はウインクルボス王子のお金が目当てだったんじゃないの?
- ヤマネ
- むろんそれもあるでしょうけど、それだけでなく、王子の男性的魅力に惹かれてる様な描写もあったでしょう。それにお金だけが目当てなら、最初に出て来た金持ちの男爵と結婚すりゃいいんです。
- 元店主
- うーん、それは多分、彼女も追いつめられてたから。とにかく、財政危機は一刻も早く解決しなくちゃならないし、あの程度でもそれなりに若くて見栄えが良ければ、ま、オッケーだろうと。彼女は現実主義者なんだよ。だからそれはいいとして、やはり問題はリリー・コリンズの方だろう!いくら免疫がなかったからって・・・あれはやっぱ納得できないよ、全く!
- ヤマネ
- あれ?ケンタロウさん、なんか力み過ぎじゃないですか?そんなにリリー・コリンズが良かったんですか?
- 元店主
- うん、良かったよ。可愛い。凄く可愛い。もう、それだけで、この映画を貶す気には到底なれないな
- ヤマネ
- はー、まぁ、ヒロインが良かったら、だいぶ映画は楽しめますわね。やー、幸せなこって
- マツヤマ
- こらこら二人とも、この映画に関してはそんな話ばかりしてたらダメだろう。なんといってもターセムの映画なんだから、まづその美術、セットと衣装について語らなきゃ
- ヤマネ
- 御意! この映画は、ターセムとずっと組んで来た日本が誇るアーティスト石岡瑛子さんの遺作となってしまったんですよね。映画の最後にちゃんと『In Loving Memory of EIKO ISHIOKA (石岡瑛子さんに捧ぐ)』と出てましたね!ちょっと感動。
- 元店主
- サシャ・バロン・コーエンの『ディクテーター』でも、映画の最初に『金正日に捧ぐ』と出てたよ
- マツヤマ
- ほら、茶化さなーい!・・・オレ的にはさ、良かったよ、石岡さんの衣装。なんつーか、J・P・ゴルチエが衣装やった『コックと泥棒、その妻と愛人』を彷彿とさせる、その衣装の目立ち具合がさ。その手の映画って、今あんまりないから、いいと思うんだな
- ヤマネ
- そうですかー、ボクは石岡瑛子の衣装なら『セル』の方が良かったですけど。あんまり石岡イズムが爆発してなくて。・・・って、要するにそんなに石岡瑛子の衣装が好きって訳ではないんですよ。ワダエミの方が好き。チャン・イーモウの作品とか、色使いがいいですよねー
- マツヤマ
- オレはさ、結構好きなんだよね、石岡さんの衣装。なんか、この映画でいえば小人の足が伸びる奴とか、ああいったギミック的な所とか。石岡さん、スパイダーマンかなんかの舞台衣装をやった事があるらしくて、昔テレビでチラッと観たんだけど、それもカッコ良かった。まぁ、頭に白鳥載せてるのはどうかと思ったけどな
- 元店主
- 私も、そんなに石岡瑛子の衣装に思い入れはないんですが・・・、まぁ、今回ね、リリー・コリンズが色々な衣装を着替えまくる所とか、良かったですね。あの場面、最高。やっぱ私は衣装のみで云々ではなく、それを着てる人こみでしか評価できないですから。
- マツヤマ
- 『昼顔』でのドヌーブのサン・ローランとか
- ヤマネ
- 『ティファニー』でのヘップバーンのジバンシーとかですか。確かに、衣装だけで云々は難しいですねー。・・・セットや美術なんかでいうと、今回のはイマイチだったんですよね、個人的に。スケート穿いての結婚式、の所は良かったですけど。ボクはやっぱフェリーニやヴィスコンティが好きなんですよ!セットや美術でいえば。『そして船はいく』最高!
- 元店主
- 分かるんだけど、なんていうか、ターセムの映画って、美術や衣装が突出してるでしょう。フェリーニやヴィスコンティって、そんな事はないじゃない。美術や衣装は確かにもの凄いけど、うまく映画の中に調和してるというか。だからちょっとジャンルが違うと思うんだな。
- マツヤマ
- そうそう、それでオレはグリーナウェイを思い浮かべた訳。あれは、美術が突出してるだろ。最近はあんまりそういった映画を観てない様な気がするんだな。昔はよく観たけど
- 元店主
- ケン・ラッセルとかデレク・ジャーマン、ヴェンダース、なんかですかね。
- ヤマネ
- アラン・レネとかアントニオーニとかもでしょう。パラジャーノフとかもそうかな?
- マツヤマ
- 最近ではやっぱジャコ・ヴァン・ドルマルの『ミスター・ノーバディー』だよな。あれは嬉しかった
- 元店主
- 個人的には最近のでは・・・ちょっと強引ですが、ティム・バートンの『ダーク・シャドウ』ですね。この作品、あんまり評判が良くないみたいですが、私は美術・セット・衣装全てオッケーでした。そうやって観る映画だと思うんですけどねー。お話なんてどうでもいい。・・・という訳で、ターセムみたいなアート系(?)って最近はあんまりないから、貴重な存在としてこれからも頑張ってほしいですね。で、来月10月の強制起訴映画は?
- マツヤマ
- あ、オレか。えー『ハンガーゲーム』・・・にしようかと思ったんだけど、これ三部作の一作目みたいなんで、パス。で、たまにはアニメもいいかと言う事で・・・『アシュラ』だ!
- ヤマネ
- ひえー!ジョージ秋山のやつですかー!・・・きっつそうー
- 元店主
- はい!では来月は『アシュラ』という事で、はりきっていきましょー!・・・でもその前に必ず『ロック・オブ・エイジズ』を観ること!
- マツヤマ&ヤマネ
- な、なんで!?
- 元店主
- アウォナロック!
- マツヤマ&ヤマネ
- イ、イエー!
- 元店主
- ま、そういう事です
Comments
投稿者 uno : 2012年10月08日 00:56
リリー・コリンズ可愛かったですね!
最初は、なんでこんなに眉毛濃いねん!もっさいなー、と思ったのですが、しばらく見てると、めっちゃ可愛いやん!と釘付けに。
特に元店主さんが言っている、スノーが修行するシーンで衣装を着替えてポーズを取るところなんて、完全にやられちゃいましたよ。
ではー!
。。。そんなの、許されないですよね。
印象的だなって思ったシーンがあって、それは鏡の中の女王が操り人形を使ってスノーと小人を襲うところです。
ここで、マツヤマさんの考えに乗っかっちゃいます。
私は鏡の中の女王がアメリカを操っている何者かだと思ったんです。
鏡の中の女王が、女王すなわちアメリカを見限って、自らの手でスノーすなわちインドと小人を襲う。
スノーと小人は知恵でなんとか乗り切る。
そして、アメリカを操る何者かに見限られたアメリカは、今までのツケを払わされることに。
気になるのは鏡の中の女王が最後どうなったのかが描かれていたかどうか。私は覚えてないんですよ。
では!
投稿者 元店主 : 2012年10月08日 03:14
おお!リリー・コリンズ可愛かったよなー!
ほんまにフィル・コリンズの娘か?と疑ふほど可愛かった。
この映画はさ、リリー・コリンズのPVみたいなもんだと思ふんだよ、個人的に。だから思ひ浮かべたのがフィル・コリンズの「恋はあせらず」のPV。いや、完全に親父に勝ってるだろ。親父、まるで7人の小人だけど。
うのぴの深読みに関しては・・・相変はらず、よー分からんが。
だって、どーみたって、鏡の中の女王は、ジュリア女王に使はれてたぞ。まぁ、最後にはあんな結果になったけど、別にジュリア女王を操って何かを企んでた・・・といふ風にも見えないが。そもそも、ジュリア女王に頼まれなければ、鏡の中の女王がスノーや小人を倒す必要なんてないと思ふけど。
私も鏡の中の女王が最後にどーなったか覚えてない・・・、なんか鏡が割れてた様な・・・。
はっきり言って、リリー・コリンズ以外は覚えてないな(キッパリ!)。
投稿者 マツヤマ : 2012年10月15日 23:57
最後は女王が怒り狂って鏡を割ったよね、確か。
鏡の中の女王は女王自身の内面の冷静な部分で、それを無視し続けたから破滅した、ということがリアルなアメリカの今の姿でもある。
女王もアメリカも絶対の悪ではないし、白雪姫も絶対の善として描かれているわけではない。というのがこの映画のリアルな部分だと思う。
深読みはあくまでも、その映画を面白く観るためのツールであるべき、とオレも最近は肝に銘じるようにしています。
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