「バトルシップ」 []
まさに舞台は2012年の現在。環太平洋諸国の海軍将兵がハワイに集結して例年通りの「環太平洋合同演習/RIMPAC」が開催された。演習中、海上に巨大な物体を発見。その物体が放つかつて見たこともないハイテク兵器による攻撃に「演習のためのサプライズ演出?」それとも「北朝鮮の攻撃?」。んなバカな!。北朝鮮どころか今の地球上にあんな技術あるかッ!?っていうか、ハッキリ言おう、これはアメリカが日本の手をギュッと握って(骨砕けるくらいに)「オレたちトモダチ、だ・よ・な」と言ってくれている、とてもありがたい映画なのだ。ババ~ン!
演習の開幕式では日本の他に、マレーシアとオーストラリアの参加が確認できるが、その後はほとんど日米以外の海兵隊は登場しない。日米の「絆」を描いたお話のようだ。
演習前の日米サッカー親善試合では、アメリカ海軍のやんちゃな将校アレックス(テイラー・キッチュ)が日本の自衛官ナガタ(浅野忠信)から顔面に蹴りを入れられペナルティキック。いつもはアメリカ人どうしの友情物語のプロローグとして使われるパターンだ。
そんなことはどうでもよくて、とにかくエイリアンの艦隊は技術が進歩し過ぎて、地球レベルの兵器では歯が立たない。上官たちが殉職し、最高指揮官は順送りでアレックスに。しかしアレックスの戦法は幼稚すぎて犠牲者は増えるばかり。
とにかく相手の兵器は最強。とくにスゴいのは巨大なハイパーヨーヨーみたいなやつがヘリコプターや艦船を縦横無尽に切り刻むのだ。これでは人類にほとんど勝ち目はない。
そこでナガタ登場。「レーダーを使わずに、波から相手の動きをつかんで攻撃をしかけよう(そんで武器はどうすんの?)」という提案にアレックスも日本人の戦術に感服。それからは何だか知らないけど、こっち側の兵器が当たりまくり、効きまくる。それでも相手の爆撃によってこちらの船は沈没。しかたがないから、現在「パールハーバー記念館」になっている70年前の戦艦「ミズーリ号」までムリヤリ出航させて、その砲弾もまた当たる当たる、効く効く、・・・ってそんな船動くかっつうの!?。
とツッコミどころはいくらでもあるが、すべて大目に見よう。映画は楽しければいい。でもなんでいちいちパールハーバーなんだよっ!っていうのもまぁそれもハリウッドのお家芸みたいなもんだから大目に見ようじゃないか。
ということで、何がありえないかっていうと、日本とアメリカがあんなに対等なわけないだろっ!ってことだ。ハワイで結ばれる友情、オーストラリア、マレーシアというキーワード、日本の主導権、さらに世界に先駆けて日本だけ先行上映ということが何を意味するのか? それをエイリアン来襲の原因から探ってみることにする。
宇宙のはるか彼方にある地球にほど近い環境の惑星に向けて、オワフ島の通信施設から交信を試みるという「ビーコン・プロジェクト」が始まったのが数年前。筆者の勝手な推測だと、おそらく数年前とは4年前の2008年のことだろう。今更言うまでもないがそれは世界経済の終わりが始まった年である。すなわちこのエイリアン来襲による人類殲滅の危機は何を意味するものかというと、それは近々来るかもしれないといわれる世界大恐慌のことなのだ。今この経済危機を乗切るためには世界各国が協力しなければならない。オーストラリアもマレーシアも参加が決定しているが、最も頼りになるのは日本の力だ。って何の話だ?
2011年11月13日、ホノルルAPEC首脳会議の際、野田首相は「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」という非常に分かり難い言い回しでオバマに伝えたそうだが、アメリカ国内には「日本の首相は全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せると述べた」と発表された。
「属国日本が保護国アメリカと対等に交渉できるはずがないだろう」と言う反対派に対し、「見てごらん、オレたちこんなに仲良しじゃないか」とアピールしているのがこの映画だ。
対等対等っ! ア・リ・エ・ナ・イ・・・って。
ユニバーサル100周年記念作品という重要な作品を本国より1ヶ月も早く公開するのも「日本は特別な存在だから」というメッセージだ(ってもしかして違う理由があるかも…)。そもそもこの映画が「100周年記念作品」だなんて日本以外では宣伝していないはずだ。どう見たって100周年作品にしては軽過ぎる。しかもこの映画は本来なら2011年に公開予定だったはずだ。浅野忠信が主役に蹴り入れるシーンも、ジミー大西が出てるのも、日本人を喜ばせるためなのだ。えっ、ジミー出てない? ジェシー? ジェシー・プレモンズ?
しかしまぁ現実でも映画でも、アメリカが原因をつくって、とばっちりを喰らうのが中国だというところだけは実にリアルだ。
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