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2012年03月27日(Tue)

SHAME -シェイム- 強制起訴シリーズ

起訴者:松山禎弘

強制起訴シリーズ 15弾
「SHAME -シェイム-」(R18+)
スティーブ・マックイーン監督

仕事以外のすべての時間をセックスに費やす、いわゆる「セックス依存症」の男ブランドン(マイケル・ファスベンダー)。一人暮らしの彼のもとに、恋愛依存症でリストカット癖のある妹シシー(キャリー・マリガン)が転がり込んでくるあたりからブランドンのセックスライフが徐々に狂い始める。
「全編セックスしか描かれていない」という触れ込みに下心ありありで挑んだ3人に、はたして「SHAME -恥- 」はなかったのか?

ヤマネ
…っていうか、下心ありありで選んだのマツヤマさんでしょ! しかしまぁ、なんか知らんけど女性客でいっぱいでしたね。あと中年のオッサンも目立ってたけど、監督の名前で「大脱走」みたいなんと間違ったんちゃうかな。
元店主
ハハッそれはないでしょ。オッサンはやっぱりAV鑑賞の感覚じゃない?
マツヤマ
オレは初日のレイトショーだったけどガラガラで15〜20人くらいっだったかな? チューハイのロング缶とサラミ持って入って余裕で飲めたね。
ヤマネ
それバリバリAV鑑賞のオッサンやん!
元店主
でもマツヤマさんが期待するようなセックスのシーンなんてまったくなかったよね。
マツヤマ
コラっ、キミたち。勝手に決めつけるな! でも確かにセックスシーンなんてなかったようなもんだよな。オレの目にはスポーツに見えたよ。もうセックスはオリンピック競技にしてもいいんじゃないかなって。
ヤマネ
何を競うんですか、いったい?
マツヤマ
はやさとか。
ヤマネ
早さ?速さ?どっち?べつに聞きたくはないけど・・・
マツヤマ
速さ・・・かな。ピストン運動の方ね。3分間に何回とか・・・。万歩計とか着けてさ。いや、この場合はチ◯ポ計かな。
元店主
ちょっとマツヤマさん、オパールのサイトが汚れるからやめてくださいよ。
マツヤマ
あー、でもタイトルに「R18+」って書いたからいいかな?って思っちゃってさ。
元店主
もうどうでもいいですけど、映画の話がぜんぜん展開しないじゃないですか。ヤマネくんはこの作品どうっだったの?
ヤマネ
いやぁ、ズバリ、ダメでした!映画としては、まあまあ練られていると思うし、青みがかった色は苦手だけれど、映像もスタイリッシュ。音楽もパターン化してはいるものの上手かな。 でもボクは物語重視なんで、物語が凡庸だったり、つまらなかったりするとぜんぜんダメなんですよ。登場人物にまったく共感できないし、監督は観客に冷たいだけなのか、深読みを期待し過ぎているのか分からないけど、考えるほどその先には紋切り型のつまらない世界がありそうで、深く考える気力が湧いてこないって感じですかね。
マツヤマ
オレは結構好きな世界だったな。確かに語られないことが多過ぎるし、敢えて映さないとか、わざとボカす部分なんかもあって、その意味がよく分からないままだ。でも最後まで入り込めたし、映像的にもすごく凝ってる。結末に「そんなんないわ!」っていうような破綻もないし、好きなシーンもいくつかあったよ。
元店主
映像は確かにスタイリッシュだったし、音楽もカッコ良かった。若いときはそれだけでも良かったんだけど、話の方が・・・ねぇ。
マツヤマ
それってオレが若いってこと?
ヤマネ
うん、特に中身が。
元店主
いやいや、どっちにしても、私は別につまらないわけでも退屈な訳でもなかったけど、面白さがよく分からない映画、って感じですかね。とても文学的な監督さんで、心象風景を描くのが得意。マラソンで走る所をズーッとワンカットで撮るところとか、雨の中を歩いてると、背後に海があってそこから何本もの黒い杭の様なものが突き出てる様とか。後者なんか安岡章太郎の「海辺の光景」かと思って、ちょっと笑っちゃいましたが。
マツヤマ
マラソンのところは観ている方は観客というよりもカメラマンの目線になるよなぁ。オレが好きなシーンはブランドンが職場の女性を誘って食事に行くところかな。場末のビストロって感じで、給仕がすごく要領悪いんだけど、ブランドンたちは会話に夢中だから給仕のことは気にならない。たいしたシーンじゃないのに、それを固定のワンカットでずーっと撮ってるんだけど、なんだか吉本新喜劇っぽくてね、笑えるだけじゃなくて、温かい感じだったな。
ヤマネ
あれが日本だったら、すぐにネットで「店員がどんくさい」とか書かれますよね。
マツヤマ
そうそう、お客さんがみんなミシュランの調査員みたいになって、写真は平気で撮るわ、「ぐるなび」とか「食べログ」とか個人のブログとかで書き放題。「アンタほんとに味わかるのか?」って「もっと時間を楽しめよ」って思っちゃうね。でもあのシーンはまったく違う。デート・シーンとしても素敵だったよ。
元店主
ただ2人はあまりにも料理そっちのけって感じでしたが。店側としては「だったらファーストフードでええやん」って思うんじゃないかな? まぁデートですからね、しょうがないか。そうそう、ビストロのシーンで思い出したけど、妹のシシーが歌手として出演していたクラブもめっちゃカッコ良かったよね。ロケーションにもこだわってる感じがしました。
ヤマネ
あそこでシシーが「ニューヨークニューヨーク」を歌うシーンでピーコが「涙した」らしいんですが、おすぎにいたっては「セックスは楽しむものだと今さらながら教えてくれる映画です」だって。どっちもまったく理解できんわ。
元店主
おすぎは「戦場のピアニスト」のときも「59 年生きてきて、この映画に巡り会えて本当に幸せです!」なんて評論家にあるまじき発言をしていたからね。。
ヤマネ
2年後の「オリバー・ツイスト」のときは「61年生きてきて良かった!」でしたからね。
マツヤマ
足し算は合ってるよ。
元店主
でも私もあのシーンでは泣けないですね。マツコはどうですか。
マツコ
あたしもねぇ・・・泣けなかったわよ。だって、英語なんだもん。でも“おけん”は涙もろいから泣いちゃったのかも?って思ったワ。
おけん
あたしはねえ、映画で意図的に泣かせるシーンにはまんまとハマっちゃうんだけど、あれはそんなシーンじゃないわよ!あたしも英語の歌では泣けないのよ。あたしが最近泣いた歌っていえば、由紀さおりとピンク・マルティーニのコラボアルバム「1969」の中の「パフ」って曲! ピーター・ポール&マリーの日本語カヴァーなの。アルバム自体がもう最高なのよッ! オッ・スッ・スッ・メッ!
ヤマネ
もう帰っていいですか? この映画にもほんまに興味ないし・・・。結局、妹との近親相姦の話なんじゃないですか。関係があるかどうかは別にして、お互い愛し合ってるように見えましたが。・・・って考えるほど空しくなる・・・
元店主
あ、私も近親相姦は頭をかすめたんだけど、それじゃああまりに月並みなんで、考えない様にしてた。もうなんでもかんでも悲劇の原因は親の性的虐待とか近親相姦とかやめてほしいし、それをもったいぶって分からない様に、かすかな暗示程度で示す、といふのはどうにもやりきれないので、それよりか、映像表現にだけ注目するだけで、それなりに楽しめたかな。
ヤマネ
ボクもその過去の何かが現在に影響を与えているということに結論づけること自体が紋切り型で、もういいやん、って感じになったんですよ。過去のトラウマがあろうがなかろうが、もう少し一方向的でない、一線を越えられない葛藤にずっと苦しめられている現在の二人、としてみていました。でも妹の最後の自殺未遂は、ありがちすぎて、ガクって感じでしたね。
マツヤマ
オレはね、みんなが思っているほど、この監督は観客にいろいろ丸投げしているわけじゃないと思うんだよな。兄妹以外の登場人物はキャラが希薄だから、ほとんど2人のことだけを考えればいいし、過去の親とか第三者のこととかも考える必要がない。シシーがブランドンの生活を脅かす存在だとすれば、シシーをそういう存在にしたのは誰か?というとブランドンしかいないんだよ。2人しか描いていないわけだから。だから性的虐待があったとしたら兄から妹に対してだと思うんだけど、結論がどうであれ「なんでセックス依存症なの?」ってことだよね。
元店主
そうです。その話を最初にしてしまえば鼎談は早々に終わってしまいましたよね。それでですね、セックス依存症ってよく分からないんだけど、それって普遍的な病なの? すごーくアメリカ的な病の様な気がしてさ、個人的にはセックス依存症といえばエリック・ベネイを思い出すんだけど、でも、あれって単に浮気癖が治らなかったということではないわけ?
ヤマネ
ブランドンは別にセックスにおいて常軌を逸している訳じゃないし、他人に迷惑をかけてる訳でもない。それであんなに悩んでるのは違和感ある。なんでもっと自身持てないの?
元店主
「ドラゴンタトゥーの女」の時にも思ったけど、白人文明はセックスに比重を置き過ぎの様な気がするなぁ。もっと他に大切な事あるやろ、とか思ってしまうんだけど。
マツヤマ
ただ映画の中では「セックス依存症」って言葉が一度も出てこないだろ?まぁ言う相手がいないだけの話だけど、 ブランドンは合意のセックスかマスターベーションしかしてないから確かに病気とは思えない。でも問題はブランドンがそこから抜け出そうともがいている、っていう個人的な問題なんだよ。
ヤマネ
だから、そののもすごく些細で狭い世界の話を無理矢理意味深に、重大そうに撮っているのが、スーパーに感受性豊かな若手監督が「張り切って撮りました」的なイタさを感じるんですよね。
マツヤマ
オレは逆にそのチマチマっとした、ジメジメっとした世界を描いた映画ってけっこう好きなんだよな。セックス依存症っていう病名云々の話とは別に、他人の悩みなんて理解できないのはあたりまえで、その程度の悩みは誰でも持っている、ということでオレにも共感できる部分はあるかな。でも今の映画界全体がデフレ状態みたいで、映画の数はあるけどネタがない。
元店主
スキマとしてセックス依存症をつついただけなのかもしれませんよね。私はセックス依存症の本当の怖さは、それが病名として認知されたこと以外にないと思うんですが・・・。
マツヤマ
オレちょっと調べたんだけど「セックス依存症」ってのがネットの大辞泉にあってね。その意味は「ストレスを不特定多数の人とのセックスで解消しようとする状態」だってさ。
ヤマネ
なんか普通やな。ブランドンみたいに金も時間も適当にあって、見た目も良ければ、趣味として十分やっていけそうやん。
マツヤマ
もしオレが「実はセックス依存症なんだよ」なんて言ったら・・・
ヤマネ
「残念やったね」って笑ってあげます。
元店主
でもセックス依存症が「不特定多数の人とのセックス」ということなら、ブランドンはマスターベーションもOKだから、当てはまらないかもしれないよね。
マツヤマ
じゃぁもう「パチンコ依存症」の「パ」を取るだけでいいだろ!
ヤマネ
イヤーン!
元店主
きゅ、急にどうした!ヤマネくん。
ヤマネ
いや、実はボクも“おけんとマツコ”に寄りたかったなぁ、って・・・
マツヤマ
じゃあそのために改めて3人で寄ろうじゃないか!
ヤマネ
・・・(想像中)・・・やっぱりイヤです。
マツヤマ
じゃぁ、おけんと2人か・・・
元店主
私もイヤです。ということで次は私が起訴者で『アーティスト』!
ヤマネ
アカデミー賞作品! 直球やなぁ。
元店主
どうせみんな観に行く優先順位が低いでしょ? 天の邪鬼なんだから!
マツヤマ
ちょっと“おけん”はいってるぞ。

Comments

投稿者 テラリー : 2012年03月29日 22:04

僕にはダメでした。
部屋の間取りがおもしろいなとか、海辺のホテルかっこいいなとか思いましたが、映像や音楽に対する感性が鈍い僕にとっては、セックス依存症の原因は妹への愛ではと考えてしまった後は、紋切り型の解釈から抜け出せず楽しめませんでした。

投稿者 マツヤマ : 2012年03月30日 20:29

久しぶり!
昨晩、元店主と「東京かノルウェーまでテラリー探しに行こうか」って言ってたところなんだよ。

そうか、部屋の間取りまでちゃんと見てなかったよ。
それよりテラリーの立場から「セックス依存症」について語ってほしかったなあ。

そういえばテラリー、髪型のせいか、ちょっと性器っぽいな。
あっ、オレも切らせてもらってたか・・・。

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