2010年 映画鼎談 その2 [ベストテン]
- 元店主
- 日本映画がこんな状況になったのは、「踊る大捜査線」に責任があるのではないか? ということをヤマネ君に問い正したい!
- ヤマネ
- な、なんでボクに聞くんですか! 本当は、ケンタロウさんが言いたいことありありなんでしょう?
- 元店主
- まぁそのとおりなんだけど。でも、ヤマネ君とババさんは、この映画、最初に随分楽しんでいたじゃない。ババさんなんか私に薦めまくって、それで私も「どんなもんかいな」と観に行って、「な、なんだこれは!ただのテレビドラマじゃないか!」とひっくり返ったという思い出がある。はは。でも後に、ババさんもそのことを物凄く後悔していたみたいだけどね。あれが全ての間違いの始まりだった・・・と、頭を抱えていたからねぇ。ヤマネ君は今でもこのシリーズ面白いの?
- ヤマネ
- シーン・・・面白いわけないじゃないですか! 特に「3」ときたら、「たけしの挑戦状」を上回る駄目っぷりで、これはもう、面白いと思う人が世の中にいるんだろうか、というレベルです。
- 元店主
- あ、やっぱり「3」も観たんだ。豪勢だな。札束に火をつけるどこぞの成金なみだ。
- ヤマネ
- ありがとうございます!これならまだ「スペースバトルシップ ヤマト in キムタク」を2回観るほうがぜんぜんいいですよ!
- マツヤマ
- なるほど。オレは興味ないのは絶対観なくて、「踊る大捜査線」も観てないから、いいとも悪いとも言えないけど、「ヤマト」はオレの周辺ではけっこう評価高いけどな。キャスティング以外はメチャよかったって。
- ヤマネ
- それって、いいってことになるんですか?でも、もしかして「インディペンデンスデイ」より面白いかもしれない。キムタクさえ受け入れられれば。・・・あ、テラリーが居てくれて助かったあ!テラリー、「踊る大捜査線」シリーズの功罪について何か喋りなさい!
- テラリー
- ええ、また急に! ・・・よくわからないんですが、えー、テレビドラマをそのまま映画館に持ち込むというスタイルをヒットさせ、主流にしてしまった、というのが「踊る」の特徴でしょう。それまではドラマの映画化と言っても、基本ドラマとは別物、テレビ局もお金を出すだけで口は出さなかったですから。つまり、映画製作においてテレビ局の力が大きくなり、とにかく売り上げが優先されて作品性が軽視され、故に映画界が衰退してしまった・・・というのが期待されている答えでしょうか???
- ヤマネ
- なーんや、その答え!それはさっきココで学習したこと、そのまんまやろ! 政治家の街頭演説とちゃうんや。自分だけいい子になろうとせんと、もっと毒吐かんかい!
- テラリー
- ヤマネさんの話のもって行き方が強引すぎるんですよぅ!
- ヤマネ
- うるさい!人を「踊る」の脚本みたいに言うな!
- 元店主
- まあまあ、落ち着いて。確かに脚本がひどいという話はよく耳にするけど、そうはいっても、興行収入の実写邦画史上1位と2位が「踊る大捜査線」だからね。簡単に無視できるもんでもない。バカにして終わり、という訳にもいかない。この問題は大きい。・・・と、いうわけでテラリーがここで退場です。おつかれ〜!
- テラリー
- えーっ!ボクもやっとノってきたのにー。
- ヤマネ
- 早よ実家に帰らなあかんやろ。
- マツヤマ
- これがシャンパン1本分の時間制限だよ。来年は3本持ってきなさい。
- テラリー
- (泣きながら)分かりました。でもみなさん。来年はボクの分析能力の凄まじさを見せつけますからね。これでもボクは同志社大がくぶんがくぶしん・・・・・
- 3人
- ほ〜た〜るのひ〜か〜りま〜ど〜のゆ〜う〜き〜・・・
- テラリー
- りがく・・・・・
- 3人
- い〜つ〜しか〜・・・・・
- ヤマネ
- さて、と。宮崎アニメも入れると、興行収入ベスト3は全部アニメだけど、その次が「踊る1、2」ですよね。確かに2000年過ぎたぐらいから、日本映画を観てもあまり面白くない。
- 元店主
- 少なくとも韓国映画には完全に負けてるな。
- マツヤマ
- オレ、韓国のラブコメは苦手だけど。
- ヤマネ
- でも今の日本映画が全然駄目だというよりは、むしろ、80年代よりは状況はいいんじゃないかと思いますけど。ただし、今よりは、やはり90年代のほうが面白かった。うん。もちろんそれ以上に60年代以前とかはもっと活気があっただろうし面白かったんだろうなぁ。リアルタイムで知らないんで何とも言えないんですが。・・・えー、シネコンの登場と重なる形で「踊る」によって、それまでの映画ファンと異なるタイプの人が映画館に足を運ぶようになったのはあるでしょうし、そういう人たちと趣味や話が合わない、かみあわないのは仕方がないことだとも思いますけど。それが、今、のトレンドなんじゃないですか。
- 元店主
- あれ?ヤマネくん、随分と無難なこと、言うじゃない。歳とって保守化したのか? そんなドラマ映画に足を運んでる連中なんて、要するにテレビドラマのオフ会とか、テレビの仕掛けたイベント感覚で映画館に足を運んでるだけで、ちっとも映画の事なんて好きじゃないやん。そもそも映画に興味もない。映画とは何かさえよく分かってない連中じゃないか。そんな連中に映画館を占拠されて、何とも思わないの?ノーモア映画館泥棒!は嘘っぱちか?
- ヤマネ
- もー!そもそも我々の様な考え自体が古いんですよ!もう所謂映画ファンなんて絶滅寸前なんです!映画自体が絶滅寸前なんだから。我々は時代遅れなんです!ダイナソーなんです!化石なんです!邪魔者なんです!不要物なんです!映画なんて贅沢品、誰も求めてないんです!ついでにカフェもね!
- 元店主
- う、ヤマネくん、随分と過激なこと、言うじゃないか・・・。歳とって惚けてきたの?
- マツヤマ
- まぁまぁ。そんなこと言ったら、ヤマネくんの様な建築家も、オレの様な美容師も、贅沢品で、不要とされるかもしれないじゃないか。こんな不景気で貧相な世の中じゃ。ま、そんなこんなでオレは今、自称プロソーパーでもあるんだけど。生き残りを考えないとね。・・・で、オレ、ひとつ思い出しちゃったんだけど・・・。
- ヤマネ
- オヤジギャグはやめてくださいね。
- マツヤマ
- 大丈夫!今回だけは。たしかあれは3年ちかく前だった。実際、買った人がみんな読んだかどうかは知らないけど、原作本がすごく売れてテレビドラマ化、映画化となった奴があって、これもヒットしたかどうかも知らないんだけど、たまたまそんな映画の撮影現場を見学する機会があったんだよ。訳あってタイトルは言えないけどね。で、オレはその現場に、生後5〜6ヶ月だった息子を抱いて行ってたら、ちょっと暇そうなスタッフか役者さんみたいな人がいてね。「かわいいですね」とか言われて、携帯で写真撮ってもらったりしながら雑談してたんだよ。
- 元店主
- 撮影現場はどんな感じだったんですか?
- マツヤマ
- それがね、監督らしき人がカメラを繰ってんだよ。けっこうエラそうな感じでさ。ほう、あの人が監督か・・・と思ってたら、突然、その暇そうなスタッフか役者さんみたいな人が現場に入っていって「はいカット」とか言うわけ。
- 元店主
- 実はその人が監督だった?
- マツヤマ
- 正解!
- ヤマネ
- 正にホームレス!
- マツヤマ
- あ〜っ、分かっても言っちゃダメ!それ以上言うなよ!
- 元店主
- ということは、問題はカメラを繰ってたスタッフですよね。
- マツヤマ
- そうなんだよ。その人が「踊る1、2」の撮影をやってた藤石某だったんだ。
- 元店主
- へー。あのくらいの大ヒットを飛ばしたら、スタッフにまで箔がつくんですねぇ。権威のあるスタッフが撮影チームをまとめてしまうと、監督が口を挟む余地もない、と。むしろ、監督には黙ってもらってた方がいい。変に作品性とか出されると困るし。でもその監督さんって、ババさんも好きな作品撮ってましたよね。
- マツヤマ
- うん、オレも好きな作品あるよ。けっきょくは看板なんだろうね。
- ヤマネ
- 絶望的やなー。邦画で今後100年残りそうな作品って、最近は全くないように感じますからね。って「踊る」が100年後まで観られ続けてるってことがあるのか!?
- 元店主
- それは邦画だけの問題じゃなくて、ハリウッドなんかも似たようなものかも。3Dもねぇ・・・。この間、IMAXシアターで3D観たら面白かったけど、とはいえ、そんな“映像の新技術”だけで乗り切れるとは思えないんだよねぇ。
- マツヤマ
- エビゾーの新技術?それは灰皿にテキーラを入れたり・・・
- ヤマネ
- ↑無視。いやー、実際のところ、荒井晴彦なんかが言うように、性や暴力の表現といった不良性も映画の本質的な部分、というのはわかります。そういうのが今の邦画には無いという多様性の欠如が問題だ、というのもその通りと思いますが、おっちゃんらのその性と暴力さえうまく描けば映画、みたいなのにもみんなが飽きてしまったんでは、というか、そういうのも無いと困るんですけど、今はぺらい映画がブームなだけですよ。村上春樹がブームになるように。
- 元店主
- でも、それはヤバい状態なんじゃないの?エントロピーが増大しきった状態、といおうか。
- ヤマネ
- う〜ん、ボクは昔から、小津映画や、寅さん、好きですから、映画にそんな刺激性を求めてません。それでも、本当に優れた映画は、必ず美意識があって、何らかの感動があるわけじゃないですか。
- 元店主
- 私だって小津映画は大好きだよ。そして、性や暴力の描かれた映画は、どちらかというと苦手。だからこそ私は、何が描かれているか、ではなく、作品性の有無を問題にしてるんだ。作品性が、高いか低いか。単純に、ドラマ映画って、作品性低いやん。「踊る」だって、他のドラマ映画に較べたら作品性は高いのかもしれないけれど、いわゆる映画作品としては、作品性低いと思うな。相当ね。なんであれをババさんが褒めたのか、よく分からん。
- マツヤマ
- ただ、テレビドラマっていうのは映画以上に衰退してきていると思う。ヒットして映画化されるなんてものは、ドラマ全体からみたら希なわけで、問題はテレビドラマと関係ない映画作品に、いつまでテレビ局が介入するかどうかで邦画の未来が決まるって事じゃないかな?
- 元店主
- テレビ業界による抱きつかれ心中で滅びるか、映画業界が自立して生き残るか? なんだか日米同盟みたいな話になってきたなあ。
- ヤマネ
- テレビ局とタイアップしなければヒットはしない、というのは健全ではないですもんね!健全っていうのは違うかな、自然じゃない、かな。でも、最近どの日本映画を観てもつまらないと感じたり、面白そうだと思うのがやってない、と感じたりするのって、我々が単純に映画を観る本数が減ったこととも関係があると、考えてたんですけど。
- 元店主
- 映画を観る数が減ったら映画がつまらなく感じる、という説ね。
- ヤマネ
- そうです!昔は良かったのに、とかではなくー。自分の映画への接し方が体力ダウンしているだけって感じもしてますもん。やたらめったら沢山観ていたら、殆どくずみたいな中に光るものも混じってた、というのが「踊る」以前。「踊る」以後は、我々にとって面白くない映画が、テレビでプッシュされる話題作になってるので、少ない本数に絞っていけばいくほどクダラナイものにあたるという。
- マツヤマ
- あとは、オレらの個人的な問題だと。ババさんもいなくなっちゃって、さらにはRCSの活動停止。うーん、大きく響くねえ。我々的には「映画兄さん」的な存在がここ2〜3年で一気に失われてしまったんだから。
- 元店主
- その通り。2010年の京都映画界最大の事件は、RCSの活動停止でしょう。
- ヤマネ
- 事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!
- 元店主
- ではここから私たちがRCSと共に過ごした素晴らしい時間について語りましょう。
- ヤマネ
- どうして現場に血が流れるんだ!
- マツヤマ
- うんうん、それはいいね。
- ヤマネ
- 鼎談封鎖できません!
- マツヤマ
- キミがされてるんだよ。
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