2010年 映画鼎談 その3 [ベストテン]
- 元店主
- 去年の3月いっぱいでRCSが20年の活動を終了したわけだけど、20年前といえば私たち世代が、ちょうど映画を真剣に観て、理解を深め始めていた頃で「RCSがあったから出会えた」という映画監督や作品が山ほどありますね。少なくとも私にとって、京都の映画シーンとはRCSとババさんだったから。この両方がなくなったのはホント、なんというか・・・。
*説明しよう!「 RCS」とは、1990年に設立した映画上映企画会社である。京都駅前のルネッサンスビル内に造られた劇場、ルネッサンスホールの上映企画からスタート。バブルの崩壊とともにルネッサンスホールも閉館となり、1992年からは九条大宮で成人映画ばかりやっていた「みなみ会館」に活動の場を移し、同時に滋賀県大津市の滋賀会館の上映企画をはじめ、数多くの映画上映イベントを企画し、京都(周辺含む)の映画シーンを牽引するも、2010年3月、その活動に終止符を打つ。尚、みなみ会館は自社企画にて現在も上映中である。
- ヤマネ
- ボクもみなみ会館には刺激的な思い出がたくさんありますyo!。
- マツヤマ
- オレもそうだけど、ここ5〜6年くらいはほとんど行ってなかったかな。
- テラリー
- スミマセ〜ン!荷物を忘れちゃいました。駅に着いて財布が無いと思ったら、カバンごとオパールに置いて来たことに気付いて・・・。
- ヤマネ
- アホすぎるやろそれ!さては店のすぐ外で仲間に入ろうと待っていたな!?
- 元店主
- とりあえず今、RCSの話が始まったところだから、テラリーも何かしゃべって帰りなさい。
- テラリー
- ええ! RCSですか? そうですねぇ。とにかく単館作品が大きなスクリーンで観られるのが嬉しかったです。でも、最近は単館上映されるような作品でも、シネコンで上映してますから。あと、明らかに大スクリーン向きの作品なのに、120インチ程度のスクリーンを3つも持ってる“京都シネマ”に上映権を“とられたり”してたのがほんとに悔しかったですね。京都シネマは大型のシネコンに比べたら、そうとう映画に対する思い入れが深いはずだから、大スクリーン向きの作品はみなみ会館に譲ってくれたらよかったのに・・・。ということで、最終電車に間に合わないので急いで帰ります。さようならー。
- マツヤマ
- おつかれ〜! って、あいつけっこう毒吐いて帰ったよな。「とられたり」ってのも人聞きわるいしさ。オレたちが誤解されちゃうよ。
- 元店主
- でも120インチって言えば、マツヤマさんがイリーガル上映してたロマン座のスクリーンと変わらないんじゃないですか?
- ヤマネ
- イリーガル上映ですか?捕まりますよマツヤマさん!
- マツヤマ
- 大丈夫!メンバーは「RCF(ロマン座シネマファミリー)」といって、みんな家族だから。家族で楽しむのはOKなわけでしょ?カネもらってるわけじゃないし。いいんだよ。だいたいオレはアナーキーだもんね(笑)。
- ヤマネ
- ロマン座はテラリーやババさんもよく行ってたっていうし、RCSの代表の佐藤さんも来られたことがあるんですよね?
- マツヤマ
- わるいけど家族のことはあまり言いたくないな。
- 元店主
- そうそう、佐藤さんで思い出したけど、雑誌「映画秘宝」9月号のデニス・ホッパー追悼特集で、川勝正幸がデニス・ホッパーと日本の関わりについて書いてるんだけど、そこで彼らがデニス・ホッパーを初めて日本に呼んだ時「京都はRCS佐藤英明の仕切りで映画祭」と、さりげなく佐藤さんの名前が出て来るんだ。ま、事実を書いただけ、と言われればその通りなんだろうけど、私は川勝正幸から佐藤さんへの「お疲れ!」という労いがこめられていると、深読みしたな。
- マツヤマ
- 確かあの時、デニス・ホッパー夫妻の京都観光をエスコートしたのも佐藤さんじゃなかったかな?
- 元店主
- ええ、確かそうです。で、その時に佐藤さんがデニス・ホッパー夫妻を歓待したのが・・・「きんなべ」です。そう、今のオパールの隣の店!・・・ああ、その時のオパールが今の場所にあったら!
- マツヤマ
- まぁ、食後のコーヒーはカフェ・オパールで、オオヤコーヒーを飲んだだろうな。当時はまだ、オオヤコーヒーという名前じゃないけれど。
- ヤマネ
- とにかく佐藤さんの持ってくる、当時は超マイナーだった監督の作品や特集企画は一般の劇場とは全く違いましたよね! というか、こんなのが観たかった!という奴を、やってくれる。
- 元店主
- そうそう。ババさんが「みなみ会館の○○がスゴかった」と言えば、私やヤマネくんらが、短い上映期間内で必死に観に行って、その話題で盛り上がったり。
- ヤマネ
- オパールカウンター周辺はもう映画サークル状態でしたよねー。パゾリーニ特集とか、ヘルツォーク特集とか、一日に2回、3回、みなみ会館とオパールを往復したりして、無茶に濃密な時間だったなあ。 個人的には、みなみ会館で観た、思い出の作品ベスト3は「アポロンの地獄」、「フィッツカラルド」「ハワイ・マレー沖会戦」。どれも生涯のベスト10にも入れたくなるぐらい感動しました。 あと、10代だったボクが、初めてオールナイトで観た映画が、「不思議惑星キン・ザ・ザ」だったですけど、なんでこんな深夜に映画観てるんだろ、自分、って。なっつかしーなあ、もう!
- 元店主
- 私はやっぱり若松孝二特集かなぁ。そこで出会った「ゆけゆけ二度目の処女」とか、生涯のベスト10に入るしな。むろん、パゾリーニ特集は燃えたよねぇ。「ソドムの市」も生涯のベスト作品だ。・・・ああいう作品を当時オパール常連になりたてのオイシンなんかに観にいかせて、むりやりレビュー書かせて、「いったいナニ観て来たんや!」とか言ってみんなで叩きまくる・・・という所から「オパール道場」が生まれたりした。
*説明しよう! オイシンとは・・・面倒くさいので省略。
- 元店主
- それとか、「ビッグ・リボウスキー」や「バッファロー’66」を続けてみて、みんなで「これからはボーリングだ!」とか言って、オパールボーリング大会を開いたりして。そんな風に、様々な形で展開していけたのが良かった。そもそも、RCS自体が映画を映画館だけにとどめておくのではなく、様々なイベントをやったりして、色んな形で楽しんでいこう!みたいな感じだったし。佐藤さんもラジオに出たり、クラブメトロでイベントやったりしてたみたいだけど、実はそこらは私はよく知らない。確かマツヤマさんは関係してましたよね?
- マツヤマ
- うん、一緒にやってたやってた。それこそ「ゴダールナイト」とか、市川崑の特集に絡めて「黒い十人の夜」なんてのもやったね。オレはもともとサントラのイベントなんかもやってて、それにも佐藤さんはよく来てくれてたしね。
- ヤマネ
- よ!サウンド・インポッシブル!
- 元店主
- でも、みなみ会館はホント遠かったなぁ。当時はバスか地下鉄乗継いで通ってたけど、今はそのパワーないかも。トホホ。
- ヤマネ
- ババさんも、もちろんそうでしたけど、映画好きな人ってフットワーク軽いし、行動範囲が広いですよねえ。ババさんはサイクリストでもあった訳ですが、もともとは映画館を効率よく廻るためにサイクル自転車に乗り始めたんとちゃうか?・・・ボクも20代の時は、観たい映画をおいかけて、和歌山やら、神戸やら、滋賀やら、十三やら、電車乗り継いで行きましたもん。今はフットワークにぶったわー。
- 元店主
- そうそう。オパールもその範囲のど真ん中だったからね。今はちょっと逸れたけど・・・(泣)
- ヤマネ
- ケンタロウさんは映画から歌舞伎にシフトしたんでしょう?今のオパールは南座の近所ですからね。歌舞伎とか文楽とか、年間どんだけ観てるんですか?
- 元店主
- ん〜、ざっと10回くらいかな?って、それは関係ないだろ!歌舞伎の切符取るために「松竹友の会」に入ったんだけど、おかげでMOVIXでも安く観られるようになった訳だし。そういえば、歌舞伎見るためにわざわざ東京や四国まで行ってるなぁ・・・。
- ヤマネ
- ゴダール特集なんかもしょっちゅうやってましたよね。「え〜っ、また同じのやるの〜!」って思う作品や特集も多かったけど、その度に初体験者っていたんだと思うし、いつでも入門コースを用意してくれている、啓蒙活動だったんですね、あれは!・・・京都は学生の街。大学に入ったら、とりあえずはみなみ会館で「ゴダール」に触れて、大人の入り口に立っている自分を実感する、と。いたいけな少年少女を、怪しい大人の世界へ誘惑する・・・そんないけない団体だったんですね、RCSは!ありがとうございました!
- 元店主
- グリーナウェイとかデレク・ジャーマンとか、最先端の作品もほとんどみなみ会館でやってましたよね。
- マツヤマ
- ああ、それはまだルネッサンスホール時代も被ってたかもしれない。そういえば、あのときRCSじゃなくてルネッサンス・シネマなんとか?って名乗ってたよね?
- 元店主
- ええ。でも、それはルネッサンスホールに合わせた名称じゃなくて偶然なんだそうですよ。元々、佐藤さんは「シネマ・ルネッサンス」という自主上映サークルを友人たちとやってて、京大西部講堂で石井聰亙の映画祭とかやったりしてたそうなんです。時代ですね。それが終わったあと、友人達は「スペース・ベンゲット」を立ち上げ、佐藤さんはルネッサンス・シネマなんとか?・・・を立ち上げた、という経緯らしいです。
- ヤマネ
- ところで、そのルネッサンス・シネマなんとか?の「なんとか」って何だったんですか? RCSのSなわけですよね?
- 元店主
- え〜と、なんだっけ? スペース?スタジオ?スクリーン?スクール・・・なわけないし・・・
- ヤマネ
- いや、勉強にもなったしそれもアリかも。
- マツヤマ
- アリとかナシとかじゃなくて、ちゃんとした答えがあるはずだよ、必ず。え〜と・・・RCS・・・ルネッサンス・シネマ・・・サクセション?
- 元店主&ヤマネ
- RCサクセション?!
- 3人
- ・・・・・・
・・・・・・
完っ!
後日、元RCSスタッフに取材したところ「ルネッサンス・シネマ・ステーション」だったということが判明。駅前のルネッサンスホールを離れる際に、RCSと改名し、「S」の意味を特定することをやめたという。だから、スクールでもサクセションでも間違いではないのである。
佐藤さんをはじめ、RCSのスタッフのみなさんおつかれさまでした。我々の映画の青春はRCSと共にありました。これからは、充実した映画の中年を送れるよう、精進したいと思います。ありがとうございました!
オパール鼎談メンバー一同
おまけ
- ヤマネ
- ところで、全然2010年の映画の話をしなかったですよね!? オパール映画2010ベストは、三人の票を合計すると、ダントツで・・・
って、みんなもう帰ったんかい!!!
こんなことなら、テラリーを帰すんじゃなかったなあ。おーい!、テラリー、ラリー、リー・・・。・・・。
・・・仕方がない。読者の皆さんのためにも、一人で頑張るか。
では、発表します! 2010年オパール映画ナンバー1は・・「ナイト・アンド・デイ」!です。全員、3位以内に選んでますネ。この映画、まさにアクションも笑いも過不足無く満足させてくれる、誰にでもおススメの楽しくて仕方がない映画です!元店主も、マツヤマさんも、この映画の脚本と、演出を最高に評価してましたなー。なんといっても、演出のテンポが最高!トム・クルーズとキャメロン・ディアスのキャラも、これまでの彼らのキャリアのイメージをうまく利用して作られていて、こちらをはぐらかすような、でもファンの期待にも応えてくれてもいて、にくいったらありゃしない。まだ観ていない人は是非どうぞ!
・・・。咳をしてもひとり、か。一人で喋るのも限界だな。帰るとするか。
- テラリー
- はあ、はあ! 終電が終わっていて、戻ってきました!!
- ヤマネ
- お、お前さん、いったい・・・何がしたいんだい。
- テラリー
- も、もちろん、キメのセリフを言いたいんですよ。
- ヤマネ
- あ、そうか。じゃあ・・・
- ヤマネ&テラリー
- 2011年も、オパール(及びロマンザ及びエキスポ及びテラリー)をよろしくお願いします!!!
おわり
Comments
投稿者 ぱく : 2012年10月06日 19:25
たまたま見つけ、読みました。
RCSの佐藤さんと思われる人を、かつてよく知っていました。
シネマ・ルネッサンスのメンバーです。空白の20年があります。
活動終了され、今、どうされているのでしょうか?
近況をご存じでしたら教えてください。
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