2008年 映画鼎談 その3 ~完結編~ [ベストテン]
……前回からの続き。
なぜ、マツヤマさんは子ども(マサユキくん)が生まれたのに、家を空け、映画館に通っているのか。それは……
- マツヤマ
- それはマサユキもいっしょに映画館に行くからですよ。レビュー読んだらわかるじゃないですか
- ヤマネ
- イヤイヤー、あれはマツヤマさんが逃げ道としてマサユキくんを登場させているだけでしょ!!第一まだ1歳の赤ちゃんじゃないですかー。ボクの見立てでは、おおよそ自信がなさそうなときにマサユキくんが登場しますよね〜
- マツヤマ
- そんなことはありません。では、これを見てもそんなことが言えますか?
- ヤマネ
- この人、北海道の実家のお父さんでしょ
- マツヤマ
- 違ーう!これがマサユキなのです
- オガケン
- えーっ!産まれて1年でコレですか?まさか・・・79歳?
- ヤマネ
- ケンタロウさーん、それは産まれたときが80歳の『ベンジャミン・バトン数奇な人生』ですよー(笑)
- オガケン
- わはは、ばれたか。あれは確か、今年の2月公開予定だったかな?でも、予告編みたら全て分かってしまったような気がする・・・・。ああいう予告編は問題だと思うけどなー。ところで、今年期待の映画ってありますか?
- マツヤマ
- あのう、マサユキの話は?
- オガケン
- マサユキくんの話をすると長くなりますからねぇ。来年、正式にこの鼎談に参加して貰いましょう
- ヤマネ
- マサユキくん、来年78歳!(爆笑)
- マツヤマ
- もういいですよ! ・・・とりあえずはボクの期待はチェ・ゲバラの2部作です
- オガケン
- あれは面白そうですね。でもソダーバーグだからちょっと心配。大丈夫かな?
- マツヤマ
- とりあえずは中南米諸国とアメリカの帝国主義との戦いが正しく描かれていれば合格とします。って、なんだかエラそうですが
- ヤマネ
- (写真を見ながら)・・しかしそれにしても、マサユキくんはいいですね!。うちの娘より断然、髪の毛があります。遺伝って恐いなあー!ところで、ボクはやっぱり『チェンジリング』を期待しています。
- オガケン
- あーっ、イーストウッドのヤツ!それは絶対マスト!!!
- マツヤマ
- ところでケンタロウさん、『ザ・ムーン』ってアポロ計画のドキュメンタリー作品は知ってました?
- オガケン
- ぜんぜん知りませんでした。確か、新たな蔵出し映像も含む“ドキュメンタリー”なんですよね?凄いなー。監督はロン・ハワードですか。『アポロ13』『ビューティフルマインド』『ダヴィンチ・コード』・・・うむ、典型的な“火消し”監督ですね。昨今は、アポロの月面着陸に対する疑惑が高まっていて、それで月面着陸のオリジナル映像を検証させろ!という声も激しくなっている様なんですが、それに対して、NASAは、フィルムなくした、って言ってるんですよねー。ははは、怪し過ぎ。それで、新たな蔵出し映像、と銘打ったブツを出してきた訳かな。これは面白い展開になってきましたねー。やはり、見に行くべきかな
- マツヤマ
- ケンタロウさんもやっぱり"無かった”派?
- オガケン
- いや、私は“なかったら面白いのになー”派です。あの月面着陸の映像が、実は本当にキューブリックが撮っていた、と判明したりしたら・・・・・・、生きてて良かったー、と、欣喜雀躍すると思いますよ。
- マツヤマ
- ボクの店の数人の映画好きのお客さんにね、軽く『ザ・ムーン』の話題を出すと数人が数人とも"実際に月には行ってないでしょ?"って言うんですよ。これが一般的な意見になってきたのかな、と。となれば、メジャーサイトで試写会後にいち早くレビュー書いてる"イタく感動した人たち"って、なんなんでしょう。御用レビュアなのか?それとも単なるイタい人たちなのか?
- オガケン
- イヤイヤ、やっぱりまだ"素朴に肯定”派が一般的だと思いますよ。マツヤマさんの店のお客さんがたまたま進んでるだけですよ
- ヤマネ
- でもね、僕はどうでもいいんですけど基本的には月面着陸あり、と思ってますヨー。捏造説も、読む分には筋が通っているように思えたりもしますが、はっきり言うと周りがあーだこーだ言っても証明できない問題でしょう。むしろ、着陸していたとしても、こういう我々には手の届かない限られた経験が一般化されて押し付けられてしまうことの方がアメリカ発ならではの問題という気がしますけど。そういうとこが気持ち悪いんでしょうね。・・・おっと何様でしょうか。てへ。
- オガケン
- まー、結局、月面着陸があったにしろなかったにしろ、我々が見せられたのって、要はテレビを通したショーじゃないですか。それを信じるか、信じないか、という事ですね。世の中にはテレビでやってる事なら何でも素直に信じてしまう人たちが居まして・・・これが結構危ない。だって、やはりテレビは効果的なプロパガンダ、洗脳の装置ですからね。まず疑い、自分の頭で考える習慣をつけないと。また、小泉政権の様な愚民政治が起こりますよ。
- ヤマネ
- うん、じゃあ、ボクは自分の頭で考えた上で、“一応月面着陸はあった”と判断して、『ザ・ムーン』を観にいきまーす。・・・そういえばイーストウッドがアポロ11号の乗組員ニール・アームストロングの生涯を映画化するって話が5年くらい前にありましたがどうなったんでしょうねー。
- オガケン
- 去年の段階ではユニバーサルが映画化権を獲ったというだけで、監督は未定のままじゃないかな。イーストウッドは多分、真実をバラすつもりだから普通に考えたら撮らせてもらえないような気がする
- ヤマネ
- そうかぁ、とりあえず今年は『チェンジリング』でイーストウッドが何を暴いているのかを確かめるとしますかー
- マツヤマ
- そうだね、今年もバンバン深読みしていきますよー
- オガケン
- ところでマツヤマさんのベスト10はやっぱりすべてが暴き系なんですか?
- マツヤマ
- そうでもないですよ。今回は政治的な面を無視して純粋に映画として楽しめたものを選びましたから、えーっと、全体の80%くらいですね、暴き系は
- オガケン
- 80%って、・・・単純に8本って言って下さい。それで『ダージリン急行』はすごく観たかったんですけど、どうでしたか?
- マツヤマ
- あー、あれは社会派作品ですよ。兄弟3人がインドを旅するんですが、この3人が支配者、偽善者、侵略者というアメリカの悪い部分を体現しているんですよ。ほのぼのと描いているんですが、やっていることはすべて途上国のマナーを無視した行為なんです。まったく同じことを自国や他の先進国でやったらどうなるかを考えながら観るといいでしょうね
- オガケン
- ウェス・アンダーソン、相変わらずだなぁ、これも絶対観ます!
- マツヤマ
- あと、ちょっと軽く扱われてたと思うんですが『ラスベガスをぶっつぶせ』も深読みすれば面白い作品だったと思います
- ヤマネ
- あれは、ベン・メズリックっていう原作者の実体験なんですよね?
- マツヤマ
- うん、確かにそうらしいんだけど、一般人のサクセス・ストーリーとはちょっと違って、この原作者はプロの作家なんだよ
- ヤマネ
- じゃぁ、実話っていうのはウソっていうこと?
- マツヤマ
- かなりの創作はされているとは思うけど実話がベースになっていることには違いないと思うよ。どこまでが事実か本人も前書きなんかで正直に書いてるしね。元々は医療界と政府が絡んだ陰謀を描いた小説『悪魔の遺伝子』や"X-ファイル"の原作を経て、後に4つのノンフィクションを世に送り出して、けっこう売れっ子だったりしてね。その4作の内のひとつが『ラスベガスをぶっつぶせ』なんだけど、他の3作すべて映画化の話があって、どれも『ラスベガスを〜』と同じケビン・スペイシーのプロダクションが製作することになっているんだよ
- オガケン
- 原作自体は政治的な内容なんですか?
- マツヤマ
- そう、映画の作り方とよく似ていて、けっこう"含み"で書いてるんですよ。例えば新作『ザ・オイルマネー <ドバイ原油先物取引所を創った新卒米国人青年の奮闘記>』はほとんどサブタイトル通りの内容なんですが、その主人公の新卒米国人青年が、あるアラブ人青年と友情を深めていく段階で、アラブ人青年が9.11について語るシーンで"9.11を裏で糸を引いたやつを見つけ出して殺してやりたいと思った"って言っているんです。決してロックフェラーとかいう名前は出てこないけど、作中で100年ものあいだ原油取引場を代々支配してきた悪役というのも登場します。ボクはこの映画化がいちばん楽しみなんですよ
- ヤマネ
- そう言えば、マツヤマさんは『20世紀少年<第2章>最後の希望』は観ないんですか?
- マツヤマ
- 観ない観ない!もう第1章で完全に希望は絶たれたから。ストーリーもラストまで店のお客さんから全部聞いちゃったし
- オガケン
- 私は第1章も観てないから何とも言えないんですが、最近の日本映画ってどうなんですか?私はぜんぜん観に行く気がしないんですけど・・・。シネコンに行くと『銀幕版 スシ王子! 〜ニューヨークへ行く〜』とか『少林少女』とか、いったい誰が観にいくねん!!って思う映画の巨大ポスターが貼られていて、茫然としてしまいます。でも、売れてるんでしょう?
- ヤマネ
- いや、あまり売れてないと思うんですけどー。でも、特にロードショー系はテレビドラマと連携した作品をバンバン売り出してますからね。んでー、スシ王子とかはもちろんダメです!でももちろん邦画にも良い作品はありますよ
- オガケン
- そりゃそうだよねー。北野武とか。見逃したけど・・・(くやしい!)。ヤマネくんはベスト10に3本も邦画が入ってるね。・・・あれ、でも『ハッピー・フライト』なんかはテレビドラマみたいなのと違うの?
- ヤマネ
- 違いますよー・・・。それに、あーそれ、ペンギンの映画でしょ?とか聞いてくる人が多くて困ります。
- マツヤマ
- あれ?違うの!?
- ヤマネ
- ・・・・。旅客機の発着に関わる人と部署が描かれているんです。機体の整備員、管制塔勤務の人々とか、グランドスタッフ(発券とか接客を担当する人)など、普段、どうなっているのかわからないことを含め、丁寧にエンターテイメントとしておもしろおかしく見せてくれる、好きなタイプの映画でした。好奇心が満たされるというか。飛行機ものといえば、「フライング・ハイ」「エグゼクティブ・デシジョン」「ハッピー・フライト」で決まりですね!
- マツヤマ
- 「フライング・ハイ」がベストに入るわけないだろ(笑)!
- ヤマネ
- まあ、いいじゃないですか。好きなんです。他にも「ぐるりのこと」なんかも良かったですよ。主演のリリー・フランキーがうまい。これは、どの年に公開されていてもベストに選ばれて不思議ではないと思いましたけどね。タイトルだけだと何の映画だかわからないですけど。
- マツヤマ
- 動物映画?
- ヤマネ
- はい!そうかもしれないです! ・・・それからやはり「ポニョ」ですねえ。自分に子供が出来たということもあって、そういう視線からも映画をみると、ホントよく出来てるなあ、と。映画館には子供がわんさか来てるんですけど、1時間半の間、子供たちが夢中になってかぶりついているんですもん。それだけで凄いなあ、と。子供にとって、現実と、ファンタジーの境界ってよくわかんないんですよね、その平行しているのであって、混在しているわけではない、二つの世界の行き来がとっても気持ちいいんです! ババさんなら去年のベストに選ぶに違いないです!
- オガケン
- んー。ババさんとヤマネくんは宮崎駿に甘いからなあー
- ヤマネ
- 甘いも甘い、大甘です! それはそうと、今度、「ヘルボーイ・ゴールデンアーミー」が公開されますよね。(注:既に公開中)
- オガケン
- なに、それ
- ヤマネ
- ギジェルモ・デル・トロの新作ですよ。「パンズ・ラビリンス」の。
- マツヤマ
- え、そうなの? 「パンズ・ラビリンス」は凄い良かったからなー!
- ヤマネ
- 『ヘルボーイ』の続編なんですが、なかなか面白いシリーズなので、オススメですよぅ。で、先日、監督のインタビューを目にする機会があったんですが、最も敬愛する人は、宮崎駿だっっって、言ってましたよ。特に『長靴を履いた猫』が大好きで、『ヘルボーイ』でも色々とオマージュをささげてるみたいなことも。この人も宮崎系譜です。
- マツヤマ
- がーん!ショック!見損なったぞ、ギジェルモ・・・!
- オガケン
- そういえば海老蔵も宮崎駿ファンみたいなんだよねー、全くどいつもこいつも・・・
- ヤマネ
- いいじゃないですか、別に。僕は深読みせずに観ますから!ランラン♪ 他にも、京都だけ公開が遅れている『バンク・ジョブ』なんかも楽しみですねー。ジェイソン・ステイサムです。
- マツヤマ
- それなんかイギリス映画だけど、この不況でハリウッド映画などアメリカ映画の予算は厳しくなるだろうし、今後暫く傾向は変わってくるかもしれないね
- ヤマネ
- そーですよねー。日本も、『相棒』のスピンオフ映画なんかに金を使ってる場合じゃなくて、もっと、本当にいい映画を撮る監督に予算をまわしてほしいです。あと、シネコン以外の映画館をフォローしてほしい。みなみ会館とか、京都で一番いい映画館なのに、大変そうですもん。映画をテレビ画面のでかくなったものとしか思ってない客だけしか増えてないんちゃうかな???
- オガケン
- 明らかに映画界はテレビ業界にやられちゃってるからね。なかなか厳しいかも
- ヤマネ
- あー。アンゲロプロスとかどうしてんだろなー。ヴィクトル・エリセとか、ベニーニとか、みなみ会館に来ないかなー。もう撮ってないのかな?
- マツヤマ
- でも、ひとつだけ期待の作品がありますよ
- オガケン
- なんですか?
- マツヤマ
- それはね・・・『オパール復活の日』ババーン!2月初旬大公開!
- オガケン
- ははは、それはまた死んでたみたいですね
- ヤマネ
- 新作、『崖の上のオパール』ババーン!2月初旬大公開!
- オガケン
- 危ないよ!それじゃ。開店早々潰れそうじゃないか
- マツヤマ
- 『オパールをぶっつぶせ!』ババーン!2月初旬大公開!
- オガケン
- 潰さないで下さい・・・
- ヤマネ
- そして『オパール復活の日 パート2』ババーン!
- オガケン
- いや、もういいよ・・・
- ヤマネ
- え、ダメですか? じゃあ前の、『京都の6階で一番盛り上がっているカフェ』みたく、ナイスなキャッチフレーズを教えてくださいよー
- オガケン
- う〜ん、じゃー、『京都で一番真実の語られるカフェ!祇園の外れの小さなカフェから起こった運動が、後に世界を変える事になるとは・・・・・・それでも月日は勝手に来て勝手に去る、齢120歳の店主の胸に去来する衝撃の真実とは・・・』
- マツヤマ&ヤマネ
- 詳しくはWEBで!今年は新オパールをよろしく!
- オガケン
- あ、流された・・・
─ 完 ─
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