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2008年10月04日(Sat)

「落下の王国」 ☆☆☆☆★

Text by Matsuyama
父さん、次はいつ映画観に行くの?
う〜ん、いつになるだろうなぁ。
家の引越しが終わっても荷物がなかなか片付かないからな。
でも父さん何もやってないじゃん。
家のこと全部母さんがやってるよ。
いや、マサユキにはそう見えても、父さんだっていろいろやっているのサ。
ココ(頭)でいろいろとネ。
何を考えているの?
父さんのことはいいんだ。
マサユキはウチがどうしてこの島本町山崎という場所に越してきたか知りたくないかい?
安かったからでしょ。
京都の三条大宮の方が便利だったのにネ。
「都落ち」っていうんでしょ?
オイオイ、子供が夢のないことを言うもんじゃない。
ココに来たことは「都落ち」ではないんだよ。
父さんがこれから面白い話をしてあげよう。
お前がこの世に生まれてきたことによって、ウチはこの場所に運命的に引き寄せられた“真実の御伽話”をお前に聞かせてあげよう。
第1章:かつて日本は他民族国家であったことを忘れてはならない。
「日本人のうちにユダヤ人の血が流れているとは早くから学者の唱えたところである。
かつてある有名なヨーロッパの人類学者が京都の市中を歩きながら、行き交う市民のうちに紛れもなき多くのユダヤ人であると見て指さしてこれを案内の日本人に示したとのことである。
その他日本人の習慣の中にユダヤ人のそれに似たるもの多く、また神道とユダヤ教との間に多くの著しき類似点ありという。
今日アメリカの日本人排斥に対して、その国一派のキリスト信者が『日本人イスラエル説』を唱えて多いに日本人のために弁じたことを私たちは知る。
日本人の敬神にユダヤ人的の熱誠あるは、人のよく知るところである……」(『内村鑑三著作全集』1924年11月に述べた言葉より) 
え〜っ、日本人の中にユダヤ人がいるっていうの?
そういうことだ。
ユダヤ人といっても古代のユダヤ民族のことだ。
約2700年前から数回にわたって、古代イスラエルからユダヤ民族が日本にやって来ていたという御伽話サ。
渡来帰化した人々は「秦氏(ハタシ、ハタウジ)」と名乗ったんだ。
「秦」って字、ボクの名前にも使われているネ。
第2章:平安京を建設した渡来人
当時は平安京と書いてタイラノミヤコと読んでいたという。
渡来人、秦氏は養蚕、機織、金工、土木など優れた技術を持っていたという。
6世紀後半、秦河勝(ハタノカワカツ)の登場で政治的色も濃くなり、秦氏は平安京の造成を計画することとなる。
平安京造成に伴って鴨川や淀川の治水工事も行なったという。
そして当時の秦氏の活動の拠点は現在も京都市右京区に存在する太秦(ウズマサ)であったという。
ところでマサユキ、カタカナ読めるか?
なんで話変えるの?
せっかく面白くなりそうだったのにぃ。
いいから、カタカナ読めるか?って聞いているんだ。
半分以上は読めると思うけど。
いいか、父さんの言うことをよく聞け。
この紙切れを持って、母さんとスーパーに買い物に行ったとき、母さんにバレないように店員さんに聞いて、これを取ってもらって、コッソリ母さんが持ってるカゴに入れればいいんだ。
わかるか?
これだ読めるな。
わかった。
"バ ボン ハ パ…"?
そうかーが読めないのか。
"バーボン ハーパー"って書いてあるんだ。
それなんなの?
これがあれば楽しい気持ちになれるんだよ。
今の父さんの頭の中には悪い虫がいて、父さんから元気を奪っているんだ。
だからこれがどうしても必要なんだ。
じゃぁ母さんに頼めばいいのに。
母さんは家の片付けで忙しいだろう。
だからあまり心配かけたくないんだ。
マサユキはだからコッソリやってくれればいい。
カゴに入ってしまえば、母さんはイロイロ忙しいからそれに気付かずにレジでお金を払って、それで成功だ。
そうすれば父さんも話の続きができるのサ。

〜 The next day 〜

成功したよ、父さん!
なんだコレ?
父さんこんなもん頼んでないぞ。
でも店員さんがコレだって……
「天才バカボンのおやじ(2)赤塚不二夫(竹書房)」……
バカボンパパじゃなくて、バーボン ハーパーだよ!
漫画本じゃなくてウイスキーだよ!
しかも第2巻だけって……
でも店員さんが楽しい気持ちになれるって……
もういいよ。
父さんが悪かった。
第3章:古代中国に辿り着いたキリスト教ネストリウス派
異端としてヨーロッパを追われたキリスト教ネストリウス派は東へ向かったという。
6世紀の唐に伝わって景教となる。
景教の寺、つまりは教会を大秦寺といい、大秦とはローマ帝国であると中国の文献に記されている。
ダビデは漢訳して大闢と書くが、秦氏が現在の兵庫県赤穂市に建てた大避神社、また、京都太秦の広隆寺のとなりに秦始皇帝を祭神のひとつとして建てられた大酒神社もかつては大闢神社と書かれていたという。
そして秦氏の拠点である京都の太秦。
大秦と太秦、字は違えども同じ意味を成すといわれる。
そしてウズマサという言語は古代ヘブライ語で「光の賜物」という意味であるという。
ネストリウス派、すなわち景教徒が異端とみられた要因は、イエスの母マリアの神格を認めなかったことにあるといわれる。
そしてもうひとつ、景教徒はイエスが唱えた三位一体を信じていなかったと考えられていたことだ。
三位一体とは、父なる神、子なる神、聖霊が一体であるということであり、すべてのものは三つのものから成るという教えである。
時間であれば現在、過去、未来、空間は三次元から成り、水は液体、固体、気体から成ると言えばわかりやすい……
ん?
なんか臭うゾ。
え〜っ、また途中でやめるの?
また?って言ってもなぁ、お前の股が怪しいんだゾ。
ホラやっぱりだ、ウンコ漏らしてる。
どれどれ、うわぁ、クッサ〜。
ウンコとオシッコと臭いで三位一体だなこりゃ。
第4章:三位一体を信じていた秦氏
京都太秦にある木嶋坐天照御魂神社(コノシマニマスアマテルミタマジンジャ)本殿の東側に織物の始祖を祀る蚕ノ社(カイコノヤシロ)がある。
機織(ハタオリ)を伝えた秦氏が建てた神社である。
ここに日本で希なる三柱鳥居がある。
通常、一方向へ礼拝する鳥居であるが、柱が三本、真上からみると正三角形のこの鳥居はどこから礼拝しても中央の一点に向かうことから、秦氏が三位一体を形にしたものだといわれる。
つまりは景教徒である秦氏は三位一体を信じていたということである。
東に向い、中国にたどり着いた景教徒は、しだいに西側のイエスの弟子たちが自分たちを誤解をしていることに気付いたことにより、西側にいくつもの書簡を送りつけ、そうではないと伝えたという。
それだけ耐え難い誤解だっといわれる。
どうだった、京都太秦の旅は?
おもしろかった。
やっぱり三柱鳥居がグッときたよ。
あぁやって形にしてまで「自分たちはイエス様の弟子だ」って言いたかったんだね。
さぁ、どうだろうね。
実はホントに三位一体なんか信じてなくて、あの鳥居もまったく違う意味で建てられたのかもしれないゾ。
そんなことないよ!
秦氏の想いは切実だったんだよ、きっと。
お前が涙ぐむことじゃないだろう?
こういう話が俗説だっていう意見の方が多いのが事実なんだゾ。

大山崎〜 大山崎〜 お降りの際はお足元に……

着いたゾ。
京都河原町から阪急電車に乗れば27分だ。
アッという間だろ。
………
島本町山崎
京都と大阪の府境に位置して島本町山崎は大阪府である。
阪急電車大山崎駅のある大山崎町は京都府である。
阪急大山崎駅とJR山崎駅は徒歩で3分ということもあり、各都市部のベッドタウン、または交通機関の連絡地点として広く利用される。
澄んだ水が豊富なことにより、大正時代にはサントリーのウイスキー蒸留所がつくられ、山崎ブランドとしても今や有名である。
都会に近いわりにのどかなところが気に入ったんだ。
引っ越して来てよかったと思っているよ。
ココは「秦」っていう苗字が多いみたいだね。
そうみたいだな。
あれ、家に帰らないの?
もう通り過ぎちゃったよ。
うん、まだ陽があるから、山の方にでも行ってみるか。
最終章:秦氏が見ていたもの
島本町北部の山側に若山神社がある。
渡来人の末裔といわれる僧、行基(ぎょうき)が創建したといわれる。
行基は貧民救済、治水、架橋などの建設、土木にも携わったと伝えられる。
素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祀い、明治時代までは牛頭(ごず)天王社とも呼ばれていた。
牛頭天王はスサノオと同一視されることもあり、そのルーツもまたインドを経由して古代イスラエルにあるといわれる。

予想よりもはるかに時間がかかり、登り斜面に息も絶え絶え父と子は若山神社に辿り着いた。
二人は境内側から眼下に広がる島本町を見おろし、そこに越して来た我が家を見つけたのち、夕陽があたる東側の枚方方面に視界を移そうとしたそのとき、視線はあるものに釘付けになったのである。

京都府南西部より注ぎ込まれる桂川、宇治川、木津川の三つの川が、島本付近でひとつの大きな淀川となる「三川合流」として、関西地域ではよく知られた地点に目を奪われ、二人は息を呑んだのである。
二人は今それがいちばんよく見える場所にいるのだということに気付かないまま、しばらくの間、じっとそれを眺めていたといいます。

Comments

投稿者 店主 : 2008年10月17日 02:11

マツヤマさん、お久しぶりです!
私は只今サンフランシスコからこの書き込みをしてをります。
久方ぶりにマツヤマワールドに触れられる事ができて、非常に懐かしい想ひに捕はれてをります。
やはり京都はいいですねー、歴史が長いからユダヤとの関係も語れる訳です。その点、アメリカは歴史が浅いから。
とはいへ、いはゆる“インディアン”の方たちの事を考へれば、歴史は結構あるんですけれど。
では、また日本でお会ひしませう!

投稿者 マツヤマ : 2008年10月17日 12:13

こうなると、もはやレビューとは言えませんね。「落下の王国」はすごく良かったんでオマージュのつもりです。
アメリカといえば「イントゥ・ザ・ワイルド」は最高でした。原作も良いです。イヌイットの歴史も面白そうですよ。
それではサンフランシスコの土産話(特に機内上映の)楽しみにしてます。

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