パトリオット・デイ [強制起訴シリーズ]
起訴者: 元店主
強制起訴シリーズ79弾
2013年4月15日。パトリオットデイの日に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。この911に次ぐアメリカにおける最悪のテロ、と言われる事件を描いたのが、この『パトリオット・デイ』だ。
監督はピーター・バーグ。主演はマーク・ウォールバーグ。この韻を踏んだコンビでは、『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』と実録映画を2本撮っていて、これで3本目。ピーター&マークの実録もん3部作の完結編(?)と言われる本編を、強制起訴メンバーは如何に観たのか。
- ヤマネ
- まぁ、面白いことは面白いけど・・・
- 元店主
- ピーター・バーグ、上手だよね。前半はかなり面白かったよ。後半・・・ていうか、終わりの方がちょっと脱力だったけど。
- マツヤマ
- オレは・・・まぁ、普通。普通に面白かった。とても普通で、普通に・・・ふ、うっ!ゴ、ゴホッ!ゲボッ!
- ヤマネ
- マツヤマさん、大丈夫ですか?・・・確かに、前半からの持続する緊張感は凄かったですね。後の様々な形で事件に関わっていく人たちの日常を丁寧に描いて、でも彼ら・彼女らがどのような形で関わっていくのか分からず、それがずうっと興味を引き続ける。巧いですよね!
- 元店主
- 爆弾が炸裂するシーンも、こちらはすでに何が起こるか分かっているのに、実際に爆発した時はビックリした。その後の混乱の様子も凄くリアルで、ドキドキしたし。うまいなぁ、と。
- マツヤマ
- うーん、まぁ、巧いんだけど、オレはあそこは長過ぎると思ったな。あんなに延々と混乱の様子を見せる必要があったのか?社会派作品ならともかく、これは娯楽大作だろ。ちょっとやり過ぎだと思ったが。
- ヤマネ
- えー、でもピーター・バーグの演出は、実際の映像も使いつつリアルに作品を組み立てる、というものですから。あれは必要な長さだったと思います。あそここそ、最大のエンタメシーンですよ!
- 元店主
- 私は、後半の市街地での銃撃戦も良かったですねぇ。警察側も犯人側もパニクってて、もうムチャクチャ。ヤケクソ感がハンパなく、なかなかリアルで良かったですねー。思わず笑いそうになりましたけど。
- マツヤマ
- あぁ、あそこは良かった。普通の住宅地なのに、犯人はボンボン爆弾投げるし、警察は銃を撃ちまくるし、クルマが爆発、炎上して阿鼻叫喚・・・まるで映画みたいだったよな。映画だけど。
- ヤマネ
- ボクは中国人の人が誘拐されるシーンも良かったです。思わず感情移入しちゃって、嫌な汗が出ました・・・。あんな風に事件に巻き込まれるんだなぁ。
- マツヤマ
- で、あの中国人がガソリンスタンドで逃げ出す所とかも、凄く良かったよな。もの凄い緊迫感で。素人とは思えない見事な脱出劇!まるで映画みたいだったな。映画だけど。
- 元店主
- ・・・・・・あ、もしかしてマツヤマさん、それらの事件が実際にはなかったんじゃないか、と言いたいんですか?
- マツヤマ
- いやいや、そこまでは言ってないよ。ただ、あんな事が実際に起きるのかなぁ、と。まるで映画みたいだなぁ、と。それだけだよ。
- ヤマネ
- 起きますよ!事実は小説より奇なり、って言葉を知らないんですか!それって、マツヤマさんお得意の陰謀論ですよね?
- マツヤマ
- いやいやいや、オレは何も言ってない。ただ・・・ネットをちょっと開いてみれば、ボストンマラソン爆弾テロ事件はアメリカ政府による自作自演、という話がいくらでも出て来るよ。オレじゃない、彼らが言ってるんだ。
- ヤマネ
- ネットは陰謀論の温床ですからねー。でも、そんな事はあり得ないですよ。そんな事をしてもアメリカ政府には何の得もないですから。そもそも、911にしてもこのボストンマラソンテロにしても、そんな大規模な陰謀が可能な訳ないじゃないですか。安手の小説じゃあるまいし。
- マツヤマ
- 事実は小説より奇なり、って言葉があるんだが・・・。
- 元店主
- 私も陰謀論そのものは嫌いじゃないんですけど・・・私が陰謀論を好きだったのは、物事を多面的に観る事ができるし、単純に面白いからです。ところが、昨今のこの手の陰謀論は、あまりに単純で貧しい。テロがあったら政府の自作自演。事件があったら政府の陰謀。なんでもかんでも安倍が悪い。とか、ほとんど条件反射で、思考停止状態だと思うんです。そういうのは面白くないし、好きになれないですねぇ。私としては、どうせ陰謀論を展開するなら、もっと面白いのを考えて欲しいです。
- マツヤマ
- ほう、たとえばどんなのだ?
- 元店主
- う~ん、例えば・・・このボストンマラソンテロは北朝鮮の工作員による仕業だったとか・・・。
- マツヤマ
- それこそムチャクチャだよ!そもそも何の関係もないじゃないか。陰謀論を考える切っ掛けもない。
- 元店主
- いや、そうでもないですよ。4月15日はアメリカの“パトリオットデイ”でもありますが、金日成の誕生日でもあるんです。だからその特別な日を記念して、憎っくきアメリカに一発かます・・・とかね。まぁ、それぐらいトリッキーな事を考えてくれたら、陰謀論もまた面白くなると思うんですが・・・。
- マツヤマ
- いや、陰謀論ってそういうものじゃないんだがな・・・。
- ヤマネ
- ボクはマーク・ウォールバーグが「愛ですべて乗り越えるんだ!」みたいな事を言い出した時に、シラケちゃったんですよー。
- 元店主
- あ、それは私も同じ。そもそもこの映画で難しいのは、如何にしてイスラム系の人々へ憎悪を向かない様にするか、だと思うんだけど、それへの対処が“愛”。みんなで協力して苦難を乗り越えよう!みたいな、ひたすらポジティブな言葉をまき散らすという方法だったのは、残念だった。憎しみ、という絶対にあるネガティブな感情を、まるでなかったかのように無視して誤摩化す、というのは、やっぱシラケるよね。ラストでどんどん熱が冷めていったもの、私も。
- マツヤマ
- そこらはオレはちょっと見方が違って・・・こういった場合、たいてい「テロVS政府」みたいになって、テロと闘うのは政府、という事になるだろ?でもこの映画では、テロと闘うのは“愛”とした。つまり、テロと闘うのは俺たち庶民ひとりひとりなんだ、という事だよ。それがピーター・バーグの密かなメッセージなんじゃないか。
- ヤマネ
- おお、マツヤマさん、今の意見、なかなかいいですね!斬新。さっきの陰謀論よりずっといい。
- マツヤマ
- 要するに、政府のプロパガンダには騙されるな、という事だよ。
- ヤマネ
- 結局それかい!
- 元店主
- はい。それでは今回はこのへんで・・・7月の課題映画はなんですか?
- マツヤマ
- おう。『ライフ』にするよ。
- ヤマネ
- わー、また面白くなさそうな・・・え?これ『デッドプール』の脚本チームが作ってんの?なら面白いかも・・・てな訳で、また!
Comments
投稿者 オーソン : 2017年07月02日 21:30
面白かったです。はい。
犯人に誘拐された中国人男性が脱出の機会を図るためにドアに鍵がかかっていないか、犯人はどんな様子なのか、確認して逃げ出すシーンは本当に手に汗握りました。車から脱出しようとする時は、取っ手の位置と鍵のはずし方、あと犯人の視線と息遣い。ここぞというタイミングで飛び出すために息をひそめる感じ…。このシーンは本当に胸を打たれました。
あと、最後の犯人との戦闘シーン、あんな近距離で爆弾を爆破させながらおこなう銃撃戦はあまり見たことなく、迫力があって良かったですね。犯人を追おうとする主人公の車を他の警官が銃撃するシーンや銃撃戦をしている傍の家のおじいちゃんとのやりとりはけっこう可笑しかったです。真面目なシーンなのにユーモアがある感じが良かったです。
あと、犯人が爆破させるまでのマラソン大会の様子がドキドキでした。いつ爆発するの?いつ爆発するの?って感じで。ただ、爆発直前には犯人の行動を写していたので、そろそろ爆発がくるなというのがわかったのがちょっと残念です。
あと、最も残念だったのはみんなでテロに立ち向かおう!的なメッセージ色が強かったことです。ここを強調すると逆に実録ものとしてのリアル感が薄れるような気がしました。
投稿者 uno : 2017年07月02日 22:51
緊張疲れしました。
冒頭から丁寧に話しが組み立てられてましたよね。登場人物の日常をバラバラに描いて、この人はどういう形で事件に関わるのだろうと想像させるのは、上手いなあと思いました。ただ、緩急がなく、後半はクドく感じましたが。
手に汗握ったのは、誘拐された中国人とテロリストとのやり取り。テロリストの銃を奪おうかと迷う場面は、視線のひとつひとつにも緊張しました。ガソリンスタンドへ逃げこむ場面は、頼むから助かってくれ!と本気で思いましたもん。
この作品では、ガソリンスタンドの場面もそうなのですが、効果的に監視カメラの映像が使われていましたよね。特にマラソンコースは、繁華街ということもあるのでしょうが、あれだけの監視カメラが取り付けられている事に改めて驚きました。
やっぱり最後は、皆さんと同じくガクッと。。。市民が協力して愛の力でテロに立ち向かう。それは素晴らしい事だと思うのですが、それだけではテロの発生を抑止できないわけで。別の側面からラストを描いて欲しかったなあ。(とはいへ、その側面が何かは分からないのですが。。。)
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