溺れるナイフ [強制起訴シリーズ]
起訴者: マツヤマ
強制起訴シリーズ72弾
夏芽(小松菜奈)は中学生ながら芸能活動もしている美少女。が、家の事情で“浮雲”というド田舎に引っ越す事になり、芸能活動に支障きたすしー、こんなド田舎なんもなくて面白くないしー、と不貞腐れまくって、腹立ちまぎれに立ち入り禁止の神域の山に入ってしまう。そこには別世界の様な美しい入江があり、そして・・・神的な美しさを持つ美少年(管田将暉)が居た。夏芽は一目で彼と恋に落ちる。彼の名はコウといい、同じ学校のクラスメートだった・・・。
一部では“神コミック”とまで言われたジョージ朝倉による伝説の少女マンガを、新鋭・山戸結希が映画化。主演は管田将暉&小松菜奈という旬の美少年&美少女だ!
- ヤマネ
- やー、素晴らしい映画でしたね!今年は邦画が豊作で、いったいどーなってるのか!ドン!
- マツヤマ
- おお・・・素晴らしい、か・・・。オレ的には「素晴らしい」とか「良い」と言って他人に薦められる様な作品ではないと思う。が・・・個人的な話をさせて貰えば・・・大好きな作品だな。
- 元店主
- へー、意外。私はこの作品は好き嫌いが分かれると思ったんですが・・・みんな同じですね。
- ヤマネ
- と、言う事は、ケンタロウさんも・・・
- 元店主
- うん。好きな作品。観て本当に良かったよ。ただ、諸手をあげて「素晴らしい!」とは言えないのも事実で・・・けっこう「惜しい!」って感じが強い。
- ヤマネ
- それはどこらへんですか?
- 元店主
- なんていうか、前回の話に絡めて言えば、引き算ができてない、っていうか。スタイルの統一がない、というか。あれもしたい、これもしたい、あれもできる、これもできる・・・って感じでまとまりに欠けてると思うんだ。色んな撮り方をしてるんだけど・・・それで焦点がぼやけてしまっていると思う。それが・・・惜しい。
- ヤマネ
- ふーん、そうですかね。確かに、ゴチャゴチャしてて“若い”感じはありますけど。監督も若いんでしょうね、多分。
- マツヤマ
- オレは、基本、この映画で嫌な所はないんだけど、ただ、音楽だけはダメだった。超ダメだった。ほんと、ダメ!場面にあってるのもあったけど、全く合ってないのも多かったし、超ダサかったり、意味不明だったり、節操がないというか、センスがないというか・・・吉幾三も長過ぎだろ!
- 元店主
- 私も音楽が一番ダメでした。音楽に関しては全部とりなおして欲しい。この映画がもったいない・・・とまで思った。挿入歌も全部ダメ。志摩遼平も、広能役は良かったけど、エンディングの歌はダメ。映画の雰囲気ぶちこわし。もうー、惜しい!惜しいわー。
- ヤマネ
- 音楽は、ボクもイマイチと思いましたよ。入れ方とかも、ダサいし。でも・・・映像とか良かったでしょ?
- マツヤマ
- おう!映像は良かったよ。新宮で撮ってるんだよな。幻想的で美しい。あと、コウと夏芽の二人のシーンは、どれも良かったよ。
- 元店主
- そうそう!私はエンドロールを観ていてビックリしたんですけど、これ井土紀州が共同脚本なんですね!それで、舞台が新宮って・・・それ中上健次やん!じゃあ、あの火祭りとか、熊野の御灯祭り?いや、衣装とかそっくりだし。あんな仮面とかつけないけど。
- ヤマネ
- 原作のジョージ朝倉は、柳町光男の『火まつり』にインスパイアされて、あの祭りを描いたらしいですよ。
- 元店主
- へー、そうなの。じゃ、やっぱ御灯祭りやん。原作がそうなのだとしたら・・・別に、井土紀州がムリヤリ中上ワールドに作品を持っていった訳ではないんだね。なるほどねぇ・・・そういえば、全体に『仁義なき戦い』だったのも面白かったね。
- マツヤマ
- あの方言な。広島弁・・・というか仁義なき戦い弁。登場人物の名前も広能とか大友とか。でも、全体の世界観にはあってたよ。
- 元店主
- 井土紀州という名前で思ったことがあるんですけど・・・全体にピンク映画っぽい感じがありましたよね。いや、エロがどうこうではなく、低予算・早撮りでしか掬えない詩情に溢れている所が。
- マツヤマ
- 実際に、この映画、19日くらいで撮ったらしいぞ。
- 元店主
- そうなんですか!・・・じゃあ、私が気になったスタイルの混在とか、ちょっと粗い所とか、あんま問題じゃないかもしれない。だって、映像による詩情は確実に捉えられてますから。
- ヤマネ
- なんかキュンとくるんですよね!・・・やはり、管田将暉&小松菜奈という旬の美少年&美少女を映像に焼き付けた、というだけで素晴らしいんじゃないですか。
- マツヤマ
- やっぱ管田将暉だよ。小松菜奈はよく分からんが・・・管田将暉には惚れた。バイクの後ろから流し目を送るシーンなんか・・・鳥肌がたったよ。
- 元店主
- 私も小松菜奈はよく分からないですが、管田将暉は良かったですねー。輝いてた。この管田将暉の美しさは、正に時分の花。今だけの特権的なものですよ。これから彼もどんどんいい男になっていくかもしれないですが、この神的な、ナイフの様な美しさは今だけのもの。それを映像に残しただけで、確かに映画史的に意味のある映画かもしれないですね。
- ヤマネ
- 斜めから見た時に、額から顎にかけての流れるラインが理想的に完璧。走ったり、跳躍したりとかの動きもいい。正に全能感、神々しさが表現できてましたねー。彼が居なかったら、この映画は成立してないでしょう。でも・・・小松菜奈も良かったですよー!なんで二人には伝わらないの?
- 元店主
- ははは。小松菜奈は確かにキレイだけど・・・ちょっと演技が下手じゃない?それに、夏芽のキャラも、私はあんまし好きじゃないんだな。「なんでもコウの言う通りにする!」「コウが全部決めて!」とか、あまりに自立心が無さ過ぎないか?
- マツヤマ
- でも、いまの女子とかも案外あんな感じなんじゃないの。オレはけっこうリアルだと思ったよ。で、やっぱそういった一般女子から見たカッコいい男を描く映画だと思うわけよ。
- ヤマネ
- 大友も良かったですよね。コウと並んでいい男2種。そのどちらからもモテる夏芽・・・って、女の子の理想なんじゃないですか。
- マツヤマ
- 大友くん、よかったよな。『青春デンデケデケデケ』の寺の息子とか思い出したよ。あのこ、ジャニーズにしてはオッサン臭くていい感じ。野々村竜太郎に似てるよな。
- 元店主
- 上白石萌音も良かった。あの高校デビューの感じとか、うまい。みんな中学生から高校生になる訳だけど、あまり変わらない。ま、そりゃ19日で撮ったんなら変わりようがないとも言えるけど、上白石萌音だけ、ちゃんと高校生に成長して変わった、という風にみえる。やっぱ上手いと思うな。
- ヤマネ
- 『君の名は。』での声優振りも大したもんでしたからね。彼女は期待できますね!
- マツヤマ
- そうなのか?確かに上手だと思うけど、オレには舞妓にしか見えないよ。
- ヤマネ
- マ~イコ~はレディ~・・・。とにかく、ラストのバイクのシーンは最高でしたよね!その前の、夏芽が主演女優賞を撮ったとかいう映画のダサさは酷かったですけど。
- マツヤマ
- あれは謎だったよな。そりゃ、その後コウに切り替わるから、それとの落差を出したかったのは分かるけど・・・にしても、あの映画は酷い。ダサすぎ。
- ヤマネ
- あんなんで主演女優賞なんてとれるかーい!
- 元店主
- はは。もっと映画もちゃんとカッコ良く撮るべきだったね。それでも大丈夫。この映画の管田将暉なら、さらにカッコ良く映って、ちゃんと落差は出ると思うから。ここらは、役者を信用して欲しかったなぁ。
- ヤマネ
- 二人の美しかった青春の時期の終わりを見事に描いた、最高のエンディングですよ。ボクは思わず、やった!と拍手してしまいました。これ以外のエンディングを思いつかないですよー。
- マツヤマ
- オレも、映画の後半になって、あまりコウが出なくなってから、夏芽同様せつない気持ちで映画を見てたもんだからさ、最後に久々のコウの笑顔を見たら・・・思わず涙が出ちゃったよ・・・。
- ヤマネ
- マツヤマさん・・・少女だったんですね。
- 元店主
- BLマンガ貸しましょうか?
- マツヤマ
- いるか!
- ヤマネ
- まー、てな訳で、今年はほんと良質な邦画が多い。この勢いにのって、本年最後の課題映画は・・・『マダム・フローレンス』にします!
- マツヤマ
- がく!全然繋がりがわからないよ!
- ヤマネ
- まーまー。年の終わりは、こういった正統派(?)映画で締めるもんです。てきとーですが。では、またー!
Comments
投稿者 オーソン : 2016年11月26日 23:47
全く期待せず、少しでも面白いところがあればいいかなと思いながら観にいきました。が、予想に反して面白かったです。
前半の映像、良かったですね。主役2人の海で出会うシーン。良かったです。カットがすごい多いなと感じましたが、この不安定な映像が2人の関係性に良くあってました、音楽は格好よくなかったですけど、役割がノイズのようなものだと考えれば、これはこれでアリかなと思いました(少なくとも前半は)。
後半、大友が夏芽と野球場で昼ごはんを食べるシーンの大友の演技が良かったです。あと花の蜜を吸うところ。
すごく心休まる気分になれました。この時の大友は格好よかった。まゆげネタも良かった。
ただ、バッティングセンターとカラオケでの大友はやりすぎ感があって、うっとうしいなあと感じてしまいましたが…。この辺でのまゆげネタは正直辟易しました。
管田将暉良かったですねー。『ディストラクション・ベイビー』で、やな感じの四国のヤンキーを演じてて、上手な子だなあと思ってたんですが、神々しい役ができるんだと感動しました。火祭り、格好よかった。
粗は多い映画と感じたので、不満点はいくらでも挙げることができそうですが、特にストーカーファンが気になりました。安っぽいキャラで何とかならないのかと思いましたが、1回目の登場は仕方ないにしても、2回目はちょっと勘弁してと正直思いましたね。あのまま事件なく火祭りを観て夏芽は去っていくじゃだめなんすかねえ?
あと、劇場全員が失笑した(ように感じた)主演女優賞をとった映画。いくらなんでも酷すぎです。これなら映画シーンは一切ださずにコウちゃんとのバイクシーンだけにすれば良かったのに…。
管田将暉がいっぱいでる前半が特に良かったっす。
投稿者 uno : 2016年11月27日 20:40
良い作品だとは思うんですが、コウのヤンキー臭さがどうも苦手で最後までノレませんでした。そこが良いところなんでしょうが。。。
小松菜奈が良かった。綺麗なだけじゃなく、管田将暉のキレのある動きにも引けを取らない運動神経の良さ。コウを追いかけて森の中を駆ける夏芽、すごく良かったなあ。少しでもモッサリしてると台無しになる場面ですし。
あと、大友と一緒の時に見せる笑顔にはグッときました。コウには見せることが出来ない笑顔が、逆に切なくて。。。そんなわけで、大友の眉毛いじり、バッティングセンター、吉幾三と全部良かった。だかこそ、夏芽がコウに「大友といると楽しい」と伝える場面になおさらグッときて。
大友も良かったなあ。最初はキツいなと思う格好悪さが、後半に進むにつれ、だんだん良いなと思うようになって。やせ我慢に青春が滲み出てるというか。吉幾三、確かに長いかも知れませんが、あの格好悪さが沁みました。
と言いながら、一番印象に残っているのは、カナが夏芽にナイフを渡す場面。浮雲町から逃れられない運命の哀しさがカナの眼に溢れてました。夏芽が主演女優賞を取るのに対し、カナはその後どんな人生を歩んでいくのか想像を掻き立てる上白石萌音の演技が素晴らしい。
ツッコミどころとして一番は主演女優賞の映画(頭が混乱した)ですが、夏芽のストーカーのバカっぷりにも悶絶。なんで車に自転車積んでるねーん、天狗のお面も全然違うやろー!
コウを受け入れられたら楽しめたんでしょうが、そこはどうしようもない(苦笑)
投稿者 マツヤマ : 2016年11月30日 23:52
確かに、オーソンの言うように、「菅田クンがいっぱい出てる前半が良かった」ということはあるけど、後半の切なさや寂しさもあって全体的に面白い映画になっていると思う。
目線が夏芽→コウ、大友→夏芽という風に描かれているので、オレは「コウちゃん良いわ!」とひたすら思いながら観ていたから夏芽を客観的にみて良かった(とか悪かった)ということはなく、むしろコウよりも“キャラ的に少し弱い”感じがちょうど良かった。
音楽に関しては百歩譲っても「ノイズ的役割」とは思えず、ピアノ主体の音楽は控えめでテーマ性があってまぁ良かったんだけど、立て続けにヘンな電子音楽とかアンバランスな挿入歌で、ノイズというよりは違和感しかなかった。あえてノイズ的な役割といえば、やはり最後の主演女優賞受賞作品がそうだったと思う。
「小松菜奈が良かった」というウノピは、やはり大友クン目線だったのかな?にしても、コウがヤンキー臭い?バッサリ言うねぇ。でもあえて言うなら「不良っぽい」だろ。オレはどっちも思わなかったけど、どっちにしても、コウはこの映画の太陽であり、夏芽は太陽に活かされた地球。(原作漫画では対当なのかな?) 夏芽の夜を照らしたのは大友=月。
大友クンと夏芽のやり取りにはオレも癒されたけど、やはり夏芽の笑顔はラストがいちばんだっただろう。でもコウを受け入れられなかったら、無理かぁ。
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