ヴィンセントが教えてくれたこと [強制起訴シリーズ]
起訴者: ヤマネ
強制起訴シリーズ58弾
ヴィンセント(ビル・マーレー)は偏屈不良老人。仕事もせずに飲んだくれ、酒場では下らない民族差別ギャグを飛ばして顰蹙を買い、ワガママ放題で行きつけの店を困らせ、博打と売春に現を抜かし、家は荒れ放題。近所付き合いもなし・・・という体たらくだったのが、何故か隣に引っ越してきた家族(母と子のみ)の息子オリバーの面倒を見ることになってしまう。最初は全く合わないと思われた二人であったが、そのうち徐々に意気投合、あまつさえオリバーは、ヴィンセントの中に“聖性”を見いだしていくのであった・・・。
アメリカでスマッシュヒット!一部でビル・マーレーの最高傑作との呼び声もあるらしい一品です。
- ヤマネ
- ・・・・・・すんません!「ピクセル」を選んでおけば良かったー、と猛烈に反省しました!
- マツヤマ
- 全くだよ、なにこの薄っぺらい映画。ぺらぺら過ぎて、誉めるのはもちろん、貶す気にもなれないよ。
- 元店主
- 私も同意見です。なんか、こう、どこかで観た様な感じの話を継ぎ接ぎしてつくった感が凄くて・・・、マーケティングのみで出来た映画、というか。
- ヤマネ
- 「グラン・トリノ」に似てる、とは言われてますが、惚けて記憶の無くなった奥さんとの挿話は「君に読む物語」っぽいし・・・
- マツヤマ
- 喧嘩の仕方を教えるのは「カラテキッド」か?オリバーが色々とヴィンセントについて調べていく感じは、「ものすごくうるさくて、あり得ないほど近い」を連想させたしな。
- 元店主
- いや、いじめっ子と最終的に親友になる、とか、嫌われ者が倒れてリハビリで頑張る、とか、最後はみんなで食卓を囲む、とか・・・な〜んか、「あるある」的な、「それそれ」的な、いかにも「いい話」的なエピソードを寄せ集めて作ってる感が強いんですよ。設定は、それこそ「いい映画」からパクってきて寄せ集めている、というか。
- マツヤマ
- このパクリ感。これはもしかして・・・サノケン的?「エンブレム佐野氏に教えてもらったこと」だな、まるで。
- ヤマネ
- んー、んー、まー、分かるんですけどー、ボクはあの件に関しては一言ありましてー・・・そもそもデザインなんて、似たものがあって当たり前なんです。特にああいう大きな公共のイベントに使うものだと、シンプルで、使い勝手がよくて、大衆受けがよくなければならない、という縛りがあるので、似たものがあって当たり前。だから、似てる事をもって=パクリ=だからダメ、という事にはならないんです。東京オリンピックのエンブレムに関しては、商標登録にも抵触してないし、あれをパクリとするのはかなりビミョーだと思います。ってか、あれをパクリと断言しちゃうのは、デザインの事を分かってない素人の誤解だと思うんですよねー。ただ・・・佐野氏の場合は他に色々と問題があってですねぇ、事態をややこしくしているのは事実なんです・・・。
- マツヤマ
- 要するに、普段からちゃんとしてないと、いざという時に足を掬われる、という事だな!まぁ、素人目からしても、佐野氏本人はどーにも胡散臭いが・・・しかし、確かに映画に関しても、単に似てる映画ある、というだけで“パクリ”というのは安易だよな。
- ヤマネ
- そうなんですよ!映画だって、似たような設定、似たようなエピソードを抱えたもの、いくらでもありますからね!ただ、この「ヴィンセント」に関してはあまりにオリジナリティに欠けるように思えるのは事実。どういった所がそう思えるとお考えですか?お二人?
- 元店主
- む、こっちに振ったな。うーん、そうだねー・・・とにかくヴィンセント像がちゃんと描けてない。色んな“いい話”エピソードを寄せ集めてるんだけど、それらが有機的に結合してひとりの人格になってない。例えば、いい加減でだらしない、というキャラと、奥さんを8年間も超高級病院に入れていて、自分は毎週奥さんの着てるものを洗濯をしてた、というエピソードがちっとも繋がらない。故に、この奥さんに関するエピソードが、如何にも良い話にするためにパクってきた様に見えるんだ。その他のエピソードも同様・・・。たとえ他から似た様なエピソードをもってきても、ヴィンセント像がしっかりしていれば、パクリ感はないと思う。
- マツヤマ
- 卒中で倒れてからのリハビリも、あまりに驚異的だったよな。あれも、頑張ってリハビリしてる!という“いい”エピソードを無理矢理持ってきたようにみえるぞ。それに最後はなんかハッピーエンドっぽかったけど、病院の滞納してたお金はどうしたんだよ?とか、テレンス・ハワードへの借金は?とか、気になることだらけだったよ。こういった御都合主義も、他からパクって自らのものにできてない感に繋がると思うな。
- ヤマネ
- 映画の冒頭でヴィンセントのジョークに辟易していた老夫婦が、オリバーがヴィンセントについて調べている時にいきなり出て来て、「彼は素晴らしい人よ」とか言うのとか、あまりにわざとらしいですよね!・・・んー、ヘタクソなんですかねー、この監督。
- 元店主
- ただねぇ、この監督はCM出身らしくて、なーんか洒落てるっぽい雰囲気を作るのが得意なんだよ。それで誤摩化してる。ってか、良さそうなエピソードを洒落た雰囲気で繋げば映画になると思ってるんだよ、きっと。映画、というか創造行為をなめてるとしか思えん。ビル・マーレーがボブ・ディランを歌うラストシーンなんか・・・こんなもので誤摩化されると思ったら大間違いだぞ!と叫んだよ。心の中で。
- マツヤマ
- でも、ビル・マーレーファンは大喜びなんじゃないか。
- 元店主
- そうなんですよ!この映画、ビル・マーレーのパブリックイメージに頼り過ぎなんです。ビル・マーレーも、相当偏屈な奴で、映画に出てもらうこと自体が大変らしいですよ。マネージャーもエージェントも居ないから連絡とれないし、出る映画の選り好みも激しいらしい。でも、出演オファーが絶えない、という・・・なんつーか、その“偏屈で面倒くさいけど凄い奴”的なイメージに頼ってるだけで、映画の中でそういう人物像を作れているかといえば、全然そんな事はない。言ってみれば・・・アイドルや芸能人を本人のイメージのまま安易に使った映画と同じです!
- ヤマネ
- ぼくたちの様に、ビル・マーレーの事が別に好きでも嫌いでもない人間にとっては、きつい映画でしたね。そもそもビル・マーレーがそんなに凄いとは思えないんですけどー・・・。だって、いっつも演技はワンパだし、なーんかウザくありません?とはいえ、「恋はデジャ・ブ」とか割と好きなんですけど。
- マツヤマ
- オレは「ゾンビランド」かな。でも、まぁ・・・こんな映画のことをいつまで喋っていても仕方ないし・・・、せっかくだから安保法制採決時の山本太郎の演説についてでも喋ろうぜ!
- ヤマネ
- なんでですか!そんなの関係ないでしょう!
- 元店主
- 『いつまで植民地で居るつもりですか!』
- マツヤマ
- 『違憲立法してまで議員でいたいか!』
- ヤマネ
- 『本気出しましょうよ!』・・・って、二人とも止めて下さい!もう、少しはこの映画のいい所も話しましょうよ。・・・えっと、ボクはナオミ・ワッツが良かったんですよねー。ロシア人の娼婦の役で・・・ロシア語訛りの英語を頑張って喋ってたし。雑な感じもよく出てた。
- マツヤマ
- オレはメリッサ・マッカーシーかな。ああいう、生きて行くのに精一杯で、周りのことに気が廻らない人間って、居るよなー、って感じ。うまい。キャラクター的にも一番好感が持てたよ。
- 元店主
- 私は、敢て言うならテレンス・ハワードか。ま、彼はいっつもいい味だしてるけど・・・・・・ってか、結構豪華役者陣だな、この映画。それでいて、この薄っぺら感。うーむ・・・
- ヤマネ
- はーい!では、ここらで鼎談は終わりにして・・・来月の起訴映画は何ですか?・・・ケンタロウさん?
- 元店主
- あ、来月は・・・「ジョン・ウィック」にするよ。キアヌ・リーヴスによるガン・フーアクションだ!
- ヤマネ
- ガン・フー?ガン・ホーじゃなくて?
- 元店主
- そう、ガン・フー。ガンとカンフーの合体したアクションらしい。
- マツヤマ
- ガン・ホーアクションなら、やっぱ主演は山本太郎だろ!
- ヤマネ
- わけわかんないっす・・・・・・では、また来月!
Comments
投稿者 uno : 2015年09月28日 21:17
こんばんは。
ビル・マーレーがディランの「シェルター・フロム・ザ・ストーム」を歌うのを聞いて、まあいっか、となっちゃいまして。。。大好きな曲なもんで(単純)
オリバーを演じた子役(ジェイデン・リーベラー)のこまっしゃくれた所が良かったですね。オリバーがヴィンセントの家に最初に行った時、膝に猫を乗せて映画を見てる場面から、これから二人の関係はどうなるんだろ、ってワクワクしたんですが。。。
鼎談でも言われてますが、ヴィンセント像をしっかりと描けていない為、何者?となりモヤッとしたまま映画が終わってしまった。オリバーがヴィンセントのゴミを集め、過去を調べることから、ヴィンセントの英雄像を描くというやり方は強引だと感じました。にしてもオリバーのプレゼン能力が凄すぎる。不自然だろ。。。いるんですかねアメリカには。
色んなエピソードからヴィンセント像を描こうとしてると思うんですが、どれも尻切れとんぼになってしまってる。
良い役者だなって思ったのが、教師役のクリス・オダウドでした。この人、舞台役者でもあるんですね。そういや、メリッサ・マッカーシーが学校に呼び出されて泣いている場面で、校長と教師が困った顔をしつつ「あるある」って顔をしてたのも良かったなあ。
俳優は皆いい演技してました。
結局一番印象に残ったのがラストの「シェルター・フロム・ザ・ストーム」なんですよね。
投稿者 マツヤマ : 2015年10月01日 09:51
子役のこまっしゃくれた所も含め、美形ではあるけど、あまり可愛くないキャラは上手くいってると思う。しかし、ラストにヴィンセントとハグするシーンでは、観ている側が「可愛い」と思えるまで人物像を掘り下げていなければならないと思うのだが、あまり変わっていないから、ただ気持ちが悪い。
けっきょく、ヴィンセント像やオリバー像をしっかり描けない要因としては、エピソードをゴチャゴチャ盛り過ぎているからだと思う。親権訴訟の問題などは丸々要らないと思うし、オリバーが実は養子だとか、まったく無意味なエピソードになっている。
けっきょくラストの「シェルターフロム〜」のシーンに救いがあるかということになるんだろうね。オレはダメだったけど、ウノピ的にも、あの曲がかかったというだけが良かったということなのかな。
投稿者 uno : 2015年10月02日 01:08
マツヤマさん
振り返って考えると良かったとこってラストの「シェルター・フロム・ザ・ストーム」だけですね。というか曲そのものが好きなので。「シェルター・フロム・ザ・ストーム」が使われた理由も分からないんですが。家に帰って歌詞カードを見たら難解でした。。。
ただ映画を見てる最中に嫌な感じはしなかったんですよね。役者の演技力なんでしょうか。「ヴィンセントって捻くれてるけどイイ奴だよね!」な持ってきかたはベタベタやな。。。と思いましたが。
エピソードのそれぞれに観客の想像にお任せします感があって、しかもそれが尻切れとんぼで繋がらないから、何故そのエピソードが映画に挿入されたのかが分からなくて、これで終わり?って思いました。
投稿者 オーソン : 2015年10月04日 21:56
ビル・マーレイ、好きなんであまり悪くいいたくないですが、映画はちょっとアレでしたね…。でも、ラストのビル・マーレイの歌っている姿をみれただけでも良しと考えてしまいます。煙草やホースをいじっているシーンをみて、まあいいやという気分になりました。曲に対しては特に思い入れはないです。
主人公が初めて学校に行ったとき、先生と宗教に関するやりとりをしているシーンを観たときはカトリック批判、もしくはリベラルぶった宗教者への批判をラストにするために「St.VINCENT」なんて逆説的なタイトルにしたのかなと(ほんの少し)思ったんですが、そのまんまでしたね。。。
あと、ビル・マーレイが実は奥さん思いで色々としていたよというエピソードを丸ごとカットして欲しかったです。そんなビル・マーレイを個人的にはみたくなかったので。
それと細かいことですが、主人公のお母さんの旦那が弁護士という設定、説得力のある設定には全然思えなかったです。かなりご都合主義的な設定かと。
投稿者 マツヤマ : 2015年10月08日 21:09
いろいろ調べてみたんだけど、この映画、けっこう評判いいんだよね。悪く書いてるレビューがほとんどないと言っていいほど。だから、ここにたまたま評価が低い5人が集まってるのは奇跡だな。鼎談の引力に引っ張られていないとすれば。
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