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2013年10月06日(Sun)

ビザンチウム []

Text by 元店主

現在における吸血鬼映画の流れを作り出す画期となった名作「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のニール・ジョーダン監督が、20年振りに撮った吸血鬼映画。しかも主演は「ハンナ」のシアーシャ・ローナン。という事で、これは観ずにはおれんだろー!と公開前から勇んでおりましたが、なんと公開2週目ですでに一日一回のみの上映という惨状。なんでやねーん!と、激しく憤りを感じながら、結構無理して時間を作って観に行って参りました。
むろん、ものすごーく楽しめましたよ!

「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」は、人の生き血を吸いながら永遠に生きねばならない、それも人目を忍びながら・・・というヴァンパイアの苦悩に焦点をあて、正にヴァンパイアの内面を描いた、という点で画期的な作品でした(ちなみに、世界的にこれを最初にやったのは萩尾望都の「ポーの一族」だと思うのですがね)。
今回の作品もその流れは受け継いでおります。「インタビュー・・・」は、トム・クルーズとブラピというイケメン吸血鬼の話でしたが、今回はシアーシャ・ローナン&ジェマ・アータートンという美少女&美女のコンビの話。
ヴァンパイアの内面描写がさらに進んで・・・というか、はっきり言って、歳をとらない&人の生き血を吸う、ということ以外、もうただの人間とあまり変わりません。別に日光も十字架もニンニクも平気っぽい代わりに、特別の能力も特にない。女性だから力も弱いし、家もない、お金もない。歳をとらないのがばれない様に、ひっそりと、僻地を放浪しながら生活しています。さらに彼女らには敵がいる。
こんなハードな環境、無慈悲な世界を、彼女らは逞しく生き抜いていかなければならないのです。その奮闘振りが、人間的感動を呼びます。
特にクララ(ジェマ・アータートン)。彼女は自らの人生(?)をしっかりと自分のものとするためには、世間の掟も、闇の掟も顧慮しません。自らの欲望をはっきりと認識し、誰にも頼らず、自らの力でそのために闘い続けます。彼女こそ真のリバタリアンだ!と、大いに感嘆したのでした。

むろん、シアーシャ・ローナン。彼女も素晴らしいです。彼女は主に、この映画における耽美方面を担当しています。あの透き通る様な青い目。端正に整ってはいるものの、なんとなく時代から外れた感のある、むしろクラシックな美少女ぶり。その顔の大きさも含めて、一歩間違えれば「おばさんっぽい?」とも思えるのですが、まるで中世の絵画から抜け出して来たかの様な美少女ぶりは、吸血鬼の様な人外な存在にこそ相応しいでしょう。
その彼女が、好きな男の子の血をたっぷり含んだハンカチを目にして息をつめ、喘ぐとこ。とか、エレベーターの中に閉じ込められて、天井から滴る血に次第に染まっていくとこ、とか、とてもエロチックでいいです。これぞ吸血鬼映画の醍醐味。

それにしても、かつては人間を脅かす暗黒の力の顕現であった吸血鬼が、今やほぼ人間と同じ様に悩み、苦しみ、生きるための苦闘を続けなければならない存在として描かれるとは。そして、そんな彼女たちの姿に勇気づけられるとは。闇の世界も大変だ。現代とはそんな時代なのかもしれません。

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