ムービー43 [強制起訴シリーズ]
起訴者:元店主
強制起訴シリーズ32弾
「メリーに首ったけ!」「愛しのローズマリー」など、過激でいながらハートウォーミングなロマンチックコメディーで一世を風靡したファレリー兄弟の兄貴の方、ピーター・ファレリーによる新作は、なんと!現代の「ケンタッキー・フライド・ムービー」を目指したものだった。様々な監督と、超豪華な俳優陣による14のスケッチ集。とはいえ、アメリカでの評価は散々。「歴代の最悪映画における『市民ケーン』的不動の存在」とまで言われて、糞味噌にけなされまくり!あんまり評価が悪いので、日本では「とにかく最低の映画!下衆・下劣・下品の3G映画!ドン引き!」と、最低さを強調する宣伝に。果たして、強制起訴メンバーは如何に観たのか?
- ヤマネ
- ほんとーに、最低でしたね!どの話しも捻りがない、驚きがない、パワーがない。なにひとついい所がない、最低に下らない映画でした。あー、観て損した!
- マツヤマ
- そうかぁ?確かにオレも下らないと思ったし、そこまで面白いと思った訳でもないけど、救いようがないほど下らない映画、とは思わなかったよ。っていうか、これより下らない、最低の、救いようのない映画って、いくらでもあるだろうが。
- 元店主
- 「東京家族」とかね。
- ヤマネ
- わー、それを言わないでー!・・・確かに、ボクも先日「ガッチャマン」を観に行ったんですが・・・「ムービー43」より遥かに下らなかったです!
- マツヤマ
- だろ?同時に上映してる映画の中でも、「謎解きは〜」とかAKBの大阪版みたいなグループの映画とか、明らかにこの映画より下らない映画に溢れてるじゃないか。現在の日本映画の9割はこの映画より下らないんじゃないか?
- ヤマネ
- うーん、分かるんですけどー、でも、この映画、“下らない”というのを売りにしてるじゃないですかー。これはそもそも下らない映画なんだから、「下らない」と言ったら負けだぜ、みたいな雰囲気出してるじゃないですか。ボク、そういうの気に入らないんですよねー。松本人志みたいで。松本も、全然面白くないのに、面白くないって言ったら負けだぜ、みたいな雰囲気を周り全体で作って勝手に盛り上がってるじゃないですか。ああいうの、ダメ。ボクはそんな戦略にはのりません!面白くないものは面白くないと言います!
- 元店主
- それだって、ある意味戦略に翻弄されてると思うよ。冷静に、作品に向き合えてない、というか・・・。確かに全体としてはイマイチだし、それぞれの作品の出来不出来も激しいけど、けっこう面白い作品はあると思う。ヤマネくんは、本当にひとつも面白い作品はなかったの?
- ヤマネ
- そうですねー、敢て言えば・・・「ホームスクール」ですかね。
- 元店主
- あ、あれ良かったよね。 ナオミ・ワッツ最高!あの変態ぶりは凄いよ。
- マツヤマ
- オレも面白かった。息子を学校に行かさないで、家で教育してる両親の話なんだけど、息子に高校生活で必要な経験は全てさせる!とか言って、二人で高校生の格好して息子を苛めまくってるんだよな。初体験までさせたりして。あれは、過保護は虐待に通じる、っていうブラックユーモアだと思う。ヤマネくん的にはどこらへんが面白かったんだ?
- ヤマネ
- ええ、まぁ、ボク的には我が家の教育方針に活かせるかと・・・。
- マツヤマ&元店主
- ええー!!
- ヤマネ
- じ、冗談ですよ、もちろん、当たり前じゃないですか!二人ともなにそんなビックリした顔してんですか!
- マツヤマ&元店主
- ・・・(一瞬、顔本気だったよな)(ええ、ヤマネくんは娘さんを可愛がってますからね)・・・
- ヤマネ
- かーぁぁぁっつ!!!変な誤解を受けるからやめて下さい!イジメですよ、これ!
- マツヤマ
- わはははは。あの、最初の奴も面白かったぞ、「ネックボール」。のど(ち*こ)に金玉の袋を下げたヒュー・ジャックマンの勇姿!袋から毛が落ちる、とか、寒くて縮こまる、とかリアル過ぎて爆笑もん。あれは誰でも笑えるんじゃない?ヤマネくんはどう?
- ヤマネ
- え、まー、少しはワロタ・・・かな。
- 元店主
- ほらほら〜、やっぱヤマネくんも面白がってるじゃない。冷静にみれば、けっこう面白いんだって。じゃあ、あれも面白かったでしょ、あのウンチのやつ。
- マツヤマ
- ああ、恋人からウンチかけて!とか言われる奴な!頑張ってかけようと、しこたま喰って、下剤まで飲んで臨んだら、「焦らないで」とか言われて焦らされる!わはは
- 元店主
- そうそう!で、我慢できん〜とか言いながら、オナラがプープーでるんですよねー、ははは
- ヤマネ
- あ、あれはあんまり・・・笑えなかった
- マツヤマ
- ええー!ウンチとオナラだぜ、鉄板じゃないか!
- 元店主
- ウンチとオナラで笑えないなんて、おかしいんじゃない、ヤマネくん?
- ヤマネ
- げ、下品ですよ、二人とも!・・・ていうか、幼稚すぎますよ!そんなもんで喜んでるの!
- 元店主
- 何を言ってるんだヤマネくん、幼稚じゃなくて、童心だよ。男はみんな、映画館の暗闇の中では童心に返るんじゃないか!ピュアでイノセントなんだよ。
- ヤマネ
- そっちこそウンチとオナラでピュアとイノセントだなんて、なに言ってるんですか!40歳も大幅に過ぎた男が童心とか、気持ち悪いですよ!
- 元店主
- ほっほー、やるつもりか?ヤマネくん。やるんだな?覚悟はいいか・・・TRUTH OR DARE!
- ヤマネ
- 受けてたちますとも!じゃ、マツヤマさんから・・・TRUTH OR DARE!どっちですか!
- マツヤマ
- え、え?あの・・・であ?
- ヤマネ
- よし!DAREですね!・・・じゃー、マツヤマさんは次に来たお客さんを丸刈りにすること!
- マツヤマ
- ええー・・・いやー、あの、・・・それは?
- 元店主
- あれ?マツヤマさん、ハルベリーの出てたスケッチですよ。ほら、最後から3番目、かな。ハル・ベリー、こんなんよくやったなーってやつ。真実を言うか、相手の無茶な要求を飲むか、というゲーム。拒否ったら負け、というやつですね。
- マツヤマ
- ああ、あれね・・・あれか・・・
- ヤマネ
- なんかマツヤマさん、目が泳いでますけど・・・
- マツヤマ
- ・・・すまん!実はオレ、後半寝てたんだ。
- ヤマネ&元店主
- ええー!!!
- マツヤマ
- いや、ちょっと仕事が忙しくて、疲れてたんだよ。アルコールも入ってたし・・・
- ヤマネ
- いやいや、別に言い訳しなくてもいいんですよ。みんな、この映画、最初の方だけ面白くて、後にいくに従ってどんどん面白くなくなる、と言ってますから。ボクも同意見です。
- マツヤマ
- それに関してはオレは意見がある。この映画の題の「43」とは何か、という問題なんだが・・・それは多分、ジョン・ケージの「4’33”(4分33秒)」から来てると思うんだ。「4’33”」も初演の時、最初はみんなシーンとしてピアニストの演奏を聴いて(観て?)いるんだけど、だんだん何もしない事に客席がざわめきだして・・・といった展開だった訳だけど、似てるだろ?この観客の反応を見越して、制作側はこの題名をつけた、とか。
- 元店主
- なんか相当強引な意見ですね・・・ん?なにかを誤摩化された様な気が・・・まぁ、いいや。私的には「TRUTH OR DARE」も次のバスケットボールのやつも面白かったので、後半に行くに従って面白くなくなる、といった感じは受けなかったですね。一番最後のネコのやつは・・・
- マツヤマ
- あ!あれ面白かったよな。あの直前に目覚めたんだ。最後に面白いやつが観られて良かったよ。
- ヤマネ
- ええー!あれ、面白くないですよ!!
- 元店主
- 同意見!あれは単に面白くないだけでなく、不快です!
- マツヤマ
- え、そうなの?
- 元店主
- まづネコがちっとも可愛くない!むしろ醜悪。そんなネコ(雄)が、自分の飼い主(男)の恋人に嫉妬から悪逆の限りを尽くすって・・・どこが面白いんですか!不快ですよ。ビーズル(ネコの名前)死ね!って感じですよ。
- ヤマネ
- ボクはむしろ飼い主の男性の鈍感さが嫌でしたね。自分の恋人が酷い目にあってるのに、ちっとも気がつかない。あの手のバカさは救いようがないですよ。不快です!
- マツヤマ
- いや、あのさ、あれ、「テッド」のパロディになってると思ったんだよね。テッドは可愛いけど、ビーズルは醜い。テッドはいい奴だけど、ビーズルは嫌な奴。テッドはジョンに対して男の友情を抱いてるけど、ビーズルは飼い主に性的な妄想を抱いてる・・・と、ことごとく逆の設定だしさ。それにこのスケッチの前にセス・マクファーレンが出て来ただろ?だから、うまいオチになってると思ったんだけど。
- 元店主
- なってません!・・・でもこのネコのやつ、結構評判いいんですよね。私的には理解できないんですけど・・・。
- マツヤマ
- 笑いのツボって、人によって違うからなぁ。これって結構微妙な問題だ。どんなものが面白いかによってその人がある程度わかる、というか・・・。ちなみにオレはコメディーなら「カジノロワイアル」が好きかな。オシャレだし、なにより音楽が最高!観て居るあいだ、ずっと幸せだったよ。最近のでいうと、「イエスマン“YES”は人世のパスワード」とか「ギャラクシー・クエスト」かなぁ。
- ヤマネ
- ボクはですねー、「フライングハイ」!これは小学生の時に観て、死ぬほど笑って、その後も何度も観てるんですが、ここ30年ほどは観てないので、今観たら面白いかどうか・・・。最近のでは、「ギャラクシー・クエスト」・・・って、マツヤマさんと一緒やん!てへ。あとは「エースベンチュラ」や「少林サッカー」、そしてMr.ビーンですね!
- 元店主
- なるほど。私はですねぇ、「ワンダとダイヤと優しい奴ら」とか「オースティンパワーズ」「セシル・B・ザ・シネマウォーズ」・・・、それとやっぱ「ズーランダー」かな! 私は無意味でオシャレなコメディーが好きなんですよ。そういった意味で、この「ムービー43」も、まぁ、あんまオシャレではないですが、徹底的に無意味を目指した、という一点で支持したくなるんです。なんか“わざと下らない映画を目指した”とか言って、この映画の事を敗北主義とか捻くれてるとか、そんなニュアンスで語る人も居るんですが、それは違うと思うんです。やっぱ、無意味を目指す、というのは崇高で困難な事ですよ。
- ヤマネ
- それは分かりますよ。たけしの「みんなやってるか〜」みたいな、それまで凄くいい映画を作ってたのが、いきなりムチャクチャで無意味な映画を撮る、っていう、その気持ちはよーくわかるし、無意味さの意義、みたいなものも分かります。でも、やっぱ面白くないものは面白くないんですよねー。つまりは失敗作ですかね?
- マツヤマ
- そうかぁ?オレはそこそこ面白かったし、十分成功してると思うぞ。まぁ、途中で寝てたオレがこんなこと言うのもなんだけど。
- 元店主
- 結局、話はそこに戻ってしまうんですね。うーむ、今回はここらで時間切れという事で・・・。9月の課題映画はなんですか?
- マツヤマ
- おう、オレだな。9月の映画は「アップサイドダウン 重力の恋人」だ。上下二つの世界がある設定で、金持ちは上の世界、貧乏人は下の世界に住んでいる。で・・・
- ヤマネ
- あ、ニール・ブロムカンプの新作ですね!マット・デイモン主演だ、楽しみー
- マツヤマ
- いや、違う違う。あれは「エリジウム」。似てるけど、こっちはキルスティン・ダンストさまだ!
- 元店主
- マツヤマさん、「メランコリア」以来、すっかりキルスティン・ダンストのファンですね・・・
- ヤマネ
- はーい、では、次は思いっきり意味のありそうな映画で・・・また次回!
Comments
投稿者 uno : 2013年09月07日 23:25
バカバカしくて劇場で大いに笑いました。
面白いと思ったのが「ホームスクール」と「ブラック・バスケットボール」。
「ホームスクール」なんて実際にあると思うんですよね。
シリアスに見ると虐待の果てのマインドコントロールなんですが、めっちゃ笑いました。
ナオミ・ワッツ最高!ですよね。
「ブラック・バスケットボール」は1点取って喜んでる白人チームにじわじわと笑いが。
黒人チームはコーチにボロカス怒られたんやろうなあ。
そういや芸能事務所の社長役でCommonが出てましたが、Commonに向かってAss Holeって言ってたと思うんですよ。日米合作のジョーク?んなわけないか。
ゴリ押しキツくて後半食傷。
笑ったけどもうええわ!
投稿者 元店主 : 2013年09月09日 03:03
うのぴは大いに笑ったのか。それもまた、珍しい様な気がする。
バスケの奴は私も良かった。唯一、吹いたのがこれ。あとのはニヤニヤ〜って感じかな。でもバスケの奴はねぇ・・・あの、「ゆっくり手拍子うつな!」ってセリフで思わず吹き出してしまった。はは。
にしても
>ゴリ押しキツくて後半食傷。笑ったけどもうええわ!
というのは解せんなぁ。
私はむしろ喰い足りなかった。あと3、4個はスケッチがあって、30分くらい長かったら、満足したかも。なんか、すごく中途半端な所で終わったような気がするんだよね。
うのぴが「ゴリ押し」と感じたのはどこらへん?
あと、ダメだったスケッチは?
それから、ビーズルはどうだったのか。これを避けたらダメだろうが。
投稿者 ウメドン・ゴダール : 2013年09月09日 22:36
観てきました!
Tジョイの5番シアター(変なソファーのところ)で。
面白くなかったなあ…
どれも微妙なかんじでした。
これがまあまあ良かった!っていうのもないし…
最初の首のやつから、だんだん笑えなくなってきました。
バットマン&ロビンなんて全然おもんないし。
人の不幸とかデリケートな所を客観的に見て笑う。って、心の底から笑えないもんなのかな…
クスッと笑ったときもあったけど、考えたら笑ってた自分って残酷。
小人が同居人のプレゼントだったか…
あそこはi-Babeがプレゼントというテンドンをきたいしたんですが…
お毛毛が入りのスープでオエっ!ってなってたんと空調の加減で縮んだのは、ちょっとツボでわらけました。
どれもこれもクスッとしか笑えないかんじでした。
コモンのスーツ姿はかっこよかったです。
相変わらずめちゃめちゃまつげ長いし。
投稿者 元店主 : 2013年09月10日 00:06
うめどんへ
そうか!うめどんには面白くなかったか。いやー、良かった。これでこの映画の評価があがったよ。やっぱなかなかにいい映画だったんだな、これ。
ところで・・・
>人の不幸とかデリケートな所を客観的に見て笑う。って、心の底から笑えないもんなのかな…
クスッと笑ったときもあったけど、考えたら笑ってた自分って残酷。
の部分。こういったカマトトは気持ち悪いからやめる様に。
まぁ、確かにウメドンはずうっと人に笑われる人生だっただろうから、多少みんなと感覚は違うかもしれないが、この態度はよくない。
人は他人の不幸をみて笑うもんだし、そういった残酷な事実には向き合うべきで、自分はそんな事ありませんよーといったカマトトで逃げるのはよくないな。
無論、他人の不幸を笑うのは良くない事だが、人は良くない事もする。それがネイチャーでもある。そこをカマトトで誤摩化すのではなく、さらに進んで自分の不幸を笑える様にまでなるのが大切だ。
そういった事を、コメディー映画から学んでほしい。
エヘン。以上。
投稿者 uno : 2013年09月10日 23:19
見てる時はバカバカしくて笑えましたが、こうやって感想を書いていると何が面白かったのかわからなくなってきた。。。
結局下ネタなんでしょうね。瞬間的に笑っちゃうんですよ。
でもそれが続くと、やっぱりキツい。
最後はゴリ押しに感じました。
退屈だったスケッチはiBabe。リチャード・ギアを出してギャップで笑いを取ろうとしてるのでしょうがインパクトが無い。
ビーズルに関して。ビーズルがこの作品内で特に不快感を感じるスケッチではありませんでした。
ただ面白くは無かった。捻りがなくて中途半端。
このスケッチに対する不快感とテッドに対する愛着は切り離せないと思います。
投稿者 マツヤマ : 2013年09月11日 14:37
ウメドンへ
少なくともあの映画の中で“不幸”は存在してないと思う。デリケートなところも、“ヒュー・ジャックマンの喉”くらいしか思いつかないなぁ。あっ!、もしかしてウメドン、股間の問題で笑えない何か?!・・・、 まぁまぁ、それは置いといて、無闇に”不幸”というレッテルを貼ること自体が上から目線だと思うぞ。
>クスッと笑ったときもあったけど、考えたら笑ってた自分って残酷
“クスッと笑った”ことが大切なのであって、それについて感想を深めればいいんだよ。
“考えたら〜残酷”はウメドンが勝手に思っている一般論であって、ウメドン自身の意見ではない。本心を“普通ならこう考える?”という無意味な一般論でフタをすることはウツの原因にもなるので気をつけた方がいい。
ウノプへ
iBabe オレはけっこう好き。
iBabe ってネーミングだけでも笑えるし、新製品は“色も選べる”というところに、iBabeがあのカタチでなければならない必然性がある、と関心したよ。
リチャード・ギアはお仕事というより、スケジュールの合間にしかたなく寄っただけという雰囲気(演技かもしれないけど)で、支援者の息子とか知らんヤツの結婚式に出席した政治家みたいな佇まいがおかしかった。
ビーズルについて
>このスケッチに対する不快感とテッドに対する愛着は切り離せないと思います
この文章の意味が今ひとつ分からん。
投稿者 uno : 2013年09月12日 22:49
マツヤマさん
ウノプです。
iBabeの「色も選べる」あそこは笑いました。完全に忘れてましたが。。。
>このスケッチに対する不快感とテッドに対する愛着は切り離せないと思います
マツヤマさんも言っているようにビーズルはテッドを意識したスケッチであることは間違いないでしょう。
私は映画館でビーズルを見て「元店主さんとトモコさんは不快に感じるだろうな」と思いました。
それは二人がテッドに愛着(それ以上?)を持っているからです。
で、鼎談を読んでいて疑問に感じだしたのが、ビーズルがもしテッドと切り離されたスケッチだったらどうだったのか?ということです。あくまで、もしですよ。
鼎談を読む限りでは元店主さん、ヤマネさんはビーズルと飼い主に対して、テッドとは関係なく不快感を覚えているように感じます。テッドと切り離しても不快だということは分かりますが、そこまで不快に感じるのだろうか?
私は面白いと思いませんでしたが、こういう笑いがあるのは分かりますし、特別不快にも感じませんでした。
「このスケッチに対する不快感とテッドに対する愛着は切り離せないと思います」と書きましたが、どうなんだろうとモヤッとした感じは今もあります。
このやり取りをしながら、笑いのツボでその人がある程度わかる、というのに今更うなずいています。
投稿者 元店主 : 2013年09月14日 01:42
ウノプへ
私はビーズルを観ながら全くテッドの事は頭に浮かばなかったし、ウノプが鼎談を読んで感じたように、正にテッドとは何の関係もなく、純粋にあのスケッチのみで不快だった。だからもしテッドと切り離されたスケッチだったら・・・というウノプの疑問にはこう答えるね。ぜんぜん一緒だよ!
なぜあのスケッチがそこまで不快なのか。説明しよう。私が一番腹立つのが、ビーズルの飼い主の男ね。ヤマネくんも言ってる様に、犯罪的に鈍感。自分が騒動の原因なのに、全くその事に気づいていない。なのに自分は誠実で優しくていい人間だと信じてる。こういった人間が、私は大嫌いなんだ。
私が考えるに、悪い意味で「大衆」とか言う時、こんなタイプの人間をいうのだと思う。
で、ラストのシーン。ビーズルを殴ってた女性に、それを観ていた人々が「ネコを虐待してる!ネコちゃん可哀相!許せん!」とか言って襲いかかるよね。あの襲いかかってた連中が、正に悪い意味での「大衆」だ。だいたい深い事情なんて分からないじゃない。それを、相手の言い分に耳を貸そうともせず、自分たちの浅い考えと偏見を元にした勝手な解釈をして、襲いかかる。許せんね。歴史上、何度も繰り返されてきた、大衆によるマイノリティに対するリンチの原型がここにある。
このスケッチは、その事に対して鈍感すぎる。そこが、不快。
もし、ちゃんとその事を意識してるなら・・・、ラストでビーズルが嫌がる男性を縛ってレイプしまくり、それを観て止めようとした連中(女性をリンチした連中ね)を邪魔するなとばかり皆殺し!・・・とか、そんなオチをつけると思う。
たぶん制作者側は、むしろ大衆の愚かさを描きたかったんだ!と言うと思うけど、このままでは逆に、大衆の愚かしく残虐な心性を肯定してる事になると思う。
屋上屋を重ねると、例えば「ホームスクール」。あれも親による子供の虐待ものだけど、全然不快じゃないのは、ナオミ・ワッツ夫妻(虐待夫婦)の話をきいて、ドン引きする夫婦の存在があるから。あれによって、この虐待夫婦が完全にキチガイだと示してる。故に、あのスケッチ自体は虐待を肯定してる訳ではない事になるし、むしろそういった事実に対する風刺になってる訳。この差は大きいと思うよ。
投稿者 uno : 2013年09月15日 17:31
元店主さん
私が鼎談から感じたように元店主さんはビーズルのスケッチのみで不快でしたか。明確な説明で私の感じていたモヤモヤの一部がすっきりしました。
「ホームスクール」に出てくる隣人夫妻の怪訝な顔に観客は同意をする。
そういう視点がビーズルに無いのは大きいですね。
>大衆の愚かしく残虐な心性を肯定してる事になると思う。
曲解せずにスケッチそのものが描いている事実は元店主さんの言っていることで間違いないと思います。
しかしビーズル、飼い主、近所の子供は皆バカ丸出しで描かれてたじゃないですか。
観客はスケッチを見て「自分は奴らとは違う」という見方があるんじゃないでしょうか?
この辺りの感覚が、マツヤマさんが言った笑いのツボの微妙な問題なのでしょうね。
投稿者 元店主 : 2013年09月16日 02:41
ウノプへ
>しかしビーズル、飼い主、近所の子供は皆バカ丸出しで描かれてたじゃないですか。
観客はスケッチを見て「自分は奴らとは違う」という見方があるんじゃないでしょうか?
う〜ん、大衆の愚かしくも残虐な心性を肯定する、というのは、別に大衆(飼い主の男性や近所の人々)を賢く、かっこよく描く、という事じゃないよ。たとえ、彼らをバカ丸出しで描いても、彼らを肯定する事はできる。そして、このスケッチでは、彼らの愚かしさ・残虐さを肯定してしまっている、というのが私の判断だ。何故なら、相対化の視点がないから。
むろん、制作者側は相対化の視点は入れてるつもりだと思う。それは、ウノプの言った通りの、飼い主の男性や近所の人たちをバカ丸出しで描く、という事だろう。しかし、ある人物をバカ丸出しで・・・という表現はウノプに合わしてるんだけど、私なりの言い方でいうと、ある人物をバカっぽく描けば、それでその人物の事を相対化できると思ったら大間違いだ。それは単に、愚かで残虐な上に見掛けがバカっぽい、といったマイナス要因が加わるだけ、という結果をもたらす事もある。そして、このスケッチが正にそれ。不快感が増すだけだ。
あと、ウノプはまるで、観客が「自分は奴らと違う」という見方ができるのがいいみたいな書き方をしてるけど、これは一寸違うと思う。優れたブラックジョークは、観客が「うわ、自分は奴らと一緒やん!」と思えるもの。「ホームスクール」はそれで、ナオミ・ワッツ夫妻はガイキチで酷い存在として描かれているけど、でも観客は「うーん、自分も彼らと同じとこあるかも」と思わせる様に撮られている。それが彼らが魅力的な一因。もし、ドン引きする近所の夫婦の方に感情移入して見る人がいたら(そんな人はブラックジョークを楽しむ能力がない人だけど)、その人にとって「ホームスクール」は面白くないでしょう。ドン引きするか、むしろ不快に感じるんじゃないかな。
この「ビーズル」では、どうやっても「奴ら」と自分が同じと思えない。むしろ敵だ。敵の事をバカっぽく描いてそれを笑う、というのは、私は低レベルな笑いだと思うよ。
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