イノセント・ガーデン []
「JSA」、復讐3部作、「渇き」・・・と、撮る作品撮る作品全てが素晴らしくて、私のフェイバリット監督の筆頭にあがるパク・チャヌクが、とうとうハリウッド進出!もう観たい気持ちが大き過ぎて、おかげで5月はほとんど他の映画を観る気力が沸かなかった・・・。で、5月31日公開。さっそく、観に行って参りましたー。
さすがにハリウッド作品なので、いつもの残虐描写は控えめ。脚本もアメリカの俳優さん(ウェントワース・ミラー)によるものらしく、いったいどこいくねーん!という、いつもの過剰・過激な展開もありません。が、アメリカ南部で、ハリウッドの俳優陣を使って撮ったとはいえ、パク・チャヌクの美学が見事なまでに隅々まで貫徹され、とてもクラシカルで耽美な、こんな映画が観たかった、でも今のハリウッドでは無理だろー、という非常に美味な作品に仕上がっておりました。
オープニングからして素晴らしいのです。草原に立つミア・ワシコウスカの髪と衣服を官能的に風が嬲る、そこに重なるミアのモノローグ。「私は聴覚が異常に鋭い、目もどんなものも見逃さない・・・(←よく覚えてないけどこんな感じ)」そしてところどころでぱっと画面が静止して、風による愛撫が凝固された所でMIA WASIKOWSKAとか文字が現れて、でも一瞬でパアッと散っていく・・・。か、かっこよすぎる!
お話は完全にヒッチコック・・・なんだけど、私にとっては少女映画です。ミア・ワシコウスカがすごくいい。乙女の様なフェロモン系の色気ではなく、少女の、人形の様な、タナトスから発する冷たいエロスがたまりません。私、彼女を初めて観たのですが、一発でやられてしまいました。
彼女のお母さん役のニコール・キッドマンもむろんいいのですが、謎の叔父チャーリーを演じるマシュー・グードがまたいいのです。アンソニー・パーキンスみたいで、はっきり言って、かなりキモい!いやー、設定ではハンサムという事みたいですが(実際、映画の中で女の子たちにキャーキャー言われている)、私には全く理解できません。どうみたって異常者にしかみえない!
で、彼とミアによるピアノの連弾シーンがまた、なんつーかエロチックで・・・。曲もいい。なにこの曲?と思ったら、フィリップ・グラス。さもありなん。素敵だわー。
この映画では風が印象的です。ざわざわと騒ぐ草木、それが何かが起こる、その予兆の様なものを常に暗示している。水も、雨やシャワー、など効果的に使われています。そして土。アメリカ南部ゆえ、至る所に土っぽさがあります(ミアの泥に汚れた足がシャワーで洗われていくシーンは美しいです)。となれば、火は?と思う人も居るでしょう。確かに、この映画には火がない。風・水・土、とくれば当然、火。タルコフスキーなら、必ず何かを燃やしたはずです。それが、ない。ないが故に、少女の固いエロスが強調されている、とも言えます。が、他の解釈がない訳ではない。
それは、ミア自身が火だ、というものです。彼女は無口で挙動も静か、常に冷静で冷淡で、あまり火っぽくないかもしれません。が、思い出せば、ミアがからんでくる男子生徒を撃退したのは、とがらした鉛筆を使ってでした。火は、タロットの小アルカナでは棒を表します。彼女は火であり、棒なのです。故にラストシーンで彼女が手に持つものは・・・。
パク・チャヌク作品としては小品・佳作ながらも、あまりに美味な作品でした。
- 追記 2013年 6月 13日
- 本日トモコがこの映画を観てきたのですが、「思いっきり、火、あったわよ」との指摘。それで、あっと思い出しました。確かに、お父さんの遺品を盛大に燃やすシーン、あったわー!・・・あまりに典型的な火の使い方。まぁ、そらそうだよな、火、使うよな。とは思ったものの、自分の記憶力の不確かさに悄然としたのでした・・・。
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