クロユリ団地 []
Text by Kentaro
世の中には恐がりの人たちが居ます。かくいう私(元店主)もそうでして・・・。故に、恐怖マンガとか絶対に読まない!ホラー映画なんてトンデモナイ!そんなものとは一生無縁だー!と、小さい頃から決めて生きてきたのですが、世の中は不思議なものでして、そんな連中が何人か集まり、「そんなに言うなら(誰が?)、敢て恐い映画を観てやろうじゃないの!」と、「あへてこはい映画を観る会(通称・あへこは)」が結成されたのが、もう10年以上前。当初は100人を超えた会員も(多少の誇張あり)、時が経つにつれて、ひとり減り、ふたり減り・・・いつの間にか消滅してしまいました。やっぱ生活に支障が出る(夜にトイレ行けない、とか)のがネックだったな。
ところが、なんと!その「あへこは」が10年の時を超えて甦る!会員はオリジナルメンバーである私とヤマネくん。課題映画は、「リング」「仄暗い水の底から」で日本中を恐怖のどん底にたたき落とした中田秀夫監督の新作、「クロユリ団地」だ!
- ヤマネ
- 思ったほど恐くなくて、ホッとしましたね!
- 元店主
- うん、意外とあっさり終わった。あの後、絶対にもう一回くると思って、最後まで身構えてたからな、私は
- ヤマネ
- ボクもそう思ってましたよ!あれ?これで終わり・・・と、ちょっと残念・・・てか、終わってよかったー、とホッとしたりして。
- 元店主
- そこらは複雑だな、我々としては。もっと回復不能の恐怖を与えて欲しかった、というか、そんなことされちゃかなわん!というか・・・
- ヤマネ
- そんな事されたらたまんないですよ!ボクは前半だけで十分恐かったですから!
- 元店主
- ・・・うん、恐かったね。あの、前田敦子が隣の住人の部屋に勝手に入って行くシーンとか。
- ヤマネ
- ケイタイの光だけで入っていくんですよね、怪しい部屋へ。ありえないでしょう!ボクなら絶対に入りません!
- 元店主
- 私も絶対に、絶対に、ありえないよ!なーんでお前はそんな所に一人で入って行くんだ!とスクリーンに向かって叫んでたよ、心の中でだけど。・・・でも、あれ筋が通ってるんだよね。あとまで観ると、なんであんな無謀な事をしたのか分かる。その他の伏線もうまく貼ってあるし、よく出来た話だったね。映画としては、いいんじゃない
- ヤマネ
- そうですね!『仄暗い・・・』同様、またしてもいい話でしたね。というか、今回は悲しい話でしたね・・・。ボクは『シックスセンス』とか思い浮かべました
- 元店主
- あ、わかる。どんでん返しはないけどね。・・・なんていうか、意外だったんだけど、けっこうリアルな話だったよねー。別に霊とか持ち出さなくても、説明がつく感じ。むしろ、人の心の闇を描いてる。現代の不幸、とか
- ヤマネ
- それにしても、なんであんなに古い団地って恐いんですか!もう、反則でしょう、古い団地と子供って。蛍光灯が消えかかってチラチラしてるのとか、黒ずんだ壁とか、夜になっても電気がついてない部屋が多いとか。なんか無機質な、時間の止まってる感じ、建物の息吹が全く感じられない所がイヤなんですよ。・・・あー、ゾクゾクする!
- 元店主
- やっぱそれも、現代日本の取り残され、抑圧された部分だからじゃない。普段はあまり世間の表面に出て来ない負の側面、孤独とか、喪失感とか、負い目とか、不幸とか・・・そういったものが象徴されてるからだと思う。だから、心にそういった闇を抱えている人間がそこに引き寄せられる、と。霊能者役の手塚理美も言ってたじゃない、霊は場所に憑くんじゃない、心に憑くんだって
- ヤマネ
- そうですね。最近では、心の負の側面を描くにしても、すぐ癒し系にもっていくじゃないですか。でも、そうそう癒される闇ばっかりじゃないぞ、と。不幸が簡単に癒されると思ったら大間違いだぞ!って、言ってるみたいでよかったですね!・・・あと、霊が部屋に入れないじゃないですか、自力で。扉を開けてもらってやっと入る事ができる。あれ、なんでですか?床とか突き抜ける力持ってるくせに
- 元店主
- うん、私もあそこは引っ掛かったんだよ。理由が分からないよねぇ。で、色々調べてみたんだけど、どうも監督は『ぼくエリ』と『牡丹灯籠』をモチーフにしてるみたいなんだ。でも『牡丹灯籠』はお札を貼ってたから入れなかったでしょう?対して『ぼくエリ』は観てないけど、そのリメイク作『モールス』を観ると、確かに部屋に入れない。部屋の主に許可を貰わないと。でもこちらはヨーロッパの話だし、多分、自分の部屋が自分の心に類比されてると思うんだ。個人主義の文化だね。だけど、それを日本でやると・・・ちょっと無理がある様な
- ヤマネ
- 日本も個人主義の文化が根付いて来た、って事じゃないんですか
- 元店主
- いや、とてもそんな風には思えない。だって未だに日本って、先進国の中ではダントツにテレビを信じる率が高いんだよ。あり得ないでしょう、個人主義が根付いてる国では。日本ではテレビは世間なんだよ。で、世間の意見が圧倒的なの。付和雷同。同調圧力。そんな国で、あの設定は・・・やっぱ無理があると思う。あそこはお札を貼るべきだったよ、ドアに
- ヤマネ
- でも、あの部屋を尋ねて来る、ってのが恐いんですよね!
- 元店主
- そうそう!あの、手塚理美の『あなた、入れたのね』というセリフ!メッチャ恐かったー!・・・やっぱ入れちゃダメなのー!って叫びそうになったよ
- ヤマネ
- それから、家に帰ったら家族が居ない!って、やつ。あれも、た、たまらーん!
- 元店主
- あそこらへんの展開は上手いよね。もう、ゾクゾクー!とする
- ヤマネ
- ところで前田敦子はどうでした?ケンタロウさんは初めて観たんじゃないですか
- 元店主
- うん。はじめて動いてるとこ観た。正確には『苦役列車』の宣伝映像でチラッと観た事はあったんだけど・・・ちゃんと観たのは初めて。なんというか、ちょっとビックリしたんだけど・・・けっこうモサめじゃない?
- ヤマネ
- AKBは、クラスで5〜6番目くらいの女の子、というコンセプトで集められているんですよ。だからみんなそんなに可愛くないんです。それが、かえって親しみやすい、とか、そんな感じでしょう
- 元店主
- そうだったのか・・・。いや、頑張ってたし、そんな悪い印象は持たなかったよ。でも・・・私の様なホラー嫌いの人間が言うのもどうかと思うけど、やっぱホラーのヒロインは美少女の方がいいような気がする。それもちょっとクセのある美少女。『モールス』でも、映画自体はどって事なかったけど、やっぱクロエ・グレース・モレッツが良かったしねー。今度は『キャリー』のリメイクもやるみたいだし
- ヤマネ
- 観に行きますか!
- 元店主
- いや、あれ心臓に悪いからな・・・
- ヤマネ
- ああ、あれね!どこまで忠実にリメイクしてるんでしょうね!てか、『あへこは』ってこれからもやるんですか?
- 元店主
- え?い、いやー、それはどっちでも・・・まぁ、ヤマネくんがそんなにやりたいと言うのなら・・・
- ヤマネ
- そんなこと言ってませんよ!ボクはねぇ、ホントーに嫌なんですよ!生活に支障が出るじゃないですか。ボクも今や一家の大黒柱なんですよ。子供が二人も居るんですよ。なんでそこまでして、恐い思いをしないといけないんですか!なんでホラーはすぐに子供を使うんですか!ヤダ、ヤダ、恐い映画反対です!
- 元店主
- う〜ん、ヤマネくんにそこまで嫌がられると・・・是非とも継続しなくちゃならん様な気になってきた
- ヤマネ
- なんでー!どこまで性格悪いんですか!!
- 元店主
- まぁ、とりあえず今回は久々の『あへこは』成功という事で・・・また次回!
- ヤマネ
- そんなものはありませーん!
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