「アウトロー」 []
真昼のピッツバーグ郊外で無差別狙撃事件が発生。6発の銃声で5人の命が奪われた。事件後1時間という早さで容疑者として元狙撃手の復員兵士ジェームズ・バーが拘束される。この顔はどう見たって犯人とは別人だ。取り調べで黙秘していたジェームズが、死刑か終身刑かは自白次第だと署名を求められた紙に書いたのは「ジャック・リーチャーを呼べ」だった。
ジャック・リーチャーって・・・、ダ~レ~ヤ~ネ~ン! 元軍人という以外、顔も住所も連絡方法もなにも知らない担当刑事のエマーソンと検察官のアレックス・ロディンは途方に暮れる。そんなとき「ジャック・リーチャーと名乗る男が会いにきました」って、コントかコレは!
トム・クルーズはオレにとってのナンバーワン俳優。しかし今回はなんだか肌質悪そうだし、髪型もヘン。オッサン臭い。カッコ悪い。50歳からスタートしたという新シリーズは、やはり中高年世代に差し掛かり、今後の肉体の衰えなども視野に入れているのか? とは言ってもこのクリストファー・マッカーリー監督は「M : I - 5」の監督もするとか・・・。トムはまだやるの?
事件発生からジャック・リーチャー登場までの流れはけっこう引き込まれるが、あとは酷くテンポが悪い。あまりオカネかかってない作りじゃん。カーチェイスの一部のシーンを除いては、かなりの低予算だと思う(とは言っても「ルーパー」の2倍か・・)。しかもそのカーチェイスでさえ、ハラハラしないし、やはりテンポが悪く、非常に見辛い。クライマックスの対決の場所は採石場なんて、今どき東宝系のヒーローものでもやらないだろう。
それはさておき、けっきょくこの事件の背後には、とある大手建設会社が関連しているようだ。単に建設会社といっても、この映画から伝わってくるニュアンスでは、巨大な多国籍企業、軍産複合体のようなものではないだろうか。しかしこの映画、ほぼ全体的に説明不足なのである。この陰謀めいた事件の実行グループのボスのような存在のゼックもまた、ダ~レ~ヤ~ネ~ン!的なタイミングで登場するが、どんなご縁で出演したのか、この人・ヴェルナー・ヘルツォーク監督。ボスというよりは地獄の使者のような佇まいなのだが、聞かれてもいないのにシベリアでの苦労話を自慢するのが玉に瑕。採石場でジャックに手下を全員殺されて、ひとり追いつめられたゼックが名乗ったのは「私の名は『囚人人間』だ」???。証拠・証人となる手下たちがみんな死んだのをいいことに「ワシはミジメな老人ですから捕まっても老人ホームに送られるだけでさぁ」みたいな、かなり古いパターンの命乞い。こんなときこそ「なにをトチ狂ってんねんジジイ」と言うべきである。
ここでジャックは社会正義と個人的な正義のどっちの道を選ぶのか?これがこのシリーズ最大のテーマなのである。
この映画のトム・クルーズは誰が見たってカッコよくない。背が低くズングリしていて、ほんまダサい。原作のジャック・リーチャー像とも大きく違うようだ。しかし、あえて自分よりもスラッと背が高いチンピラとの喧嘩シーンがあったり、不潔っぽくて、色気がなくて、女にも興味がないトム・クルーズはなんだか新しい。
クリント・イーストウッドにも「アウトロー」という作品がある。
射撃場のオヤジや個人的な正義を認める女性弁護士に支えられたジャック・リーチャーは正にリバタリアンだ。そして「やっぱりカッコいい」とオレの考えも修正しておく。この新シリーズと、リバタリ的思想をさらに炸裂させるであろうトム・クルーズの今後に期待する。
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