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2011年02月21日(Mon)

「ウォール・ストリート」 []

Text by Matsuyama

今回の作品で、ワイプと分割画面を多用した古典的手法に賛否が分かれているようだ。それ以上に、あの古典的なエンディング(キスシーン)を見て、筆者が似ていると思ったのが「華麗なる賭け(1968)」だ。その主人公トーマス・クラウン(スティーブ・マックイーン)は金持ちの実業家で天才的泥棒という二つの顔。

FRBの黒幕ブレトン(ジョシュ・フローリン)とトーマス・クラウンを重ね合わせるにはかなり無理(マックイーンの方がカッコよすぎるから)があるが、FRBそのもの、またはリーマンショック前のアメリカという国家自体には「金持ちで泥棒」というフレーズがピッタリだ。
前作「ブッシュ」はシャレのつもりのモノマネ劇が滑りまくってたけど、スカル&ボーンズの不気味な内部を描き、今作では、やはり不気味なFRBの内部。どちらも中心にはブッシュ&ブレトン役のジョシュ・フローリン。あまり映画では描かれなかったアメリカの暗部を描いてくれたことはちょっと嬉しいかな。

主人公ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)が所属する投資銀行が突然の破綻する。CEOのルイス・ゼイベル(フランク・ランジェラ)は真面目な人物として描かれているが、見た目も含めてダブるのがリーマン・ブラザーズのCEOリチャード・ファルド氏だ。しかし少なくともアメリカと日本の大手メディアは、リチャード・ファルド氏をアメリカに金融危機を招いた張本人と報道して大批判を浴びせ、彼にその責任をすべて押付けた。
もちろんルイス・ゼイベルが善人として描かれているわけではないし、リチャード・ファルド氏が悪人かどうかも筆者には分からないのではあるが、いわゆる「暴き系」映画監督オリバー・ストーンは、FRB内部にうごめく魑魅魍魎(ちみもうりょう)を描くことによって、一個人が悪人、生け贄、戦犯にされる図式を描いている。それは前作「ブッシュ」に描いたホワイトハウス内部も同じだ。

「ブッシュ」に比べたら今作は雲泥の差で面白かったと思うのだが、バカでかい携帯電話でゴードン・ゲッコー逮捕時の時代性を物語ったり、イーライ・ウォラックが出演したからといって、あの着メロ(続・夕陽のガンマン)をつかうのはちょっと安直すぎるかな。そこらへんのダサさは承知ずくだったけど、分割画面等の映像表現は筆者にとっては許容の範囲内、というよりむしろカッコイイと思ってしまった。
それよりもなによりも、これからまだまだ一波乱も二波乱もありそうなアメリカの経済だけど、あの国は相当しぶとそうで、まだまだ覇権が続きそうな気がしてきた。

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