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2011年01月27日(Thu)

「スプライス」 []

Text by Matsuyama

ヴィンチェンゾ・ナタリ(以下ナタリ)といえば「CUBE」で当てた1発屋のようにみられているけれど、その1発はあまりにも大きすぎたと筆者は思っている。「CUBE」がなければ、一連の「SAW」シリーズはなかったはずだが、後者はどちらかといえばテレビ的で映画レベルではない。「CUBE」の衝撃を求めるならば、ぜひとも、同じくナタリ監督の「NOTHING」を、「CUBE」以上の大きな期待をもって観ていただきたい。

主人公は科学者カップル、エルザ(サラ・ポーリー)とクライブ(エイドリアン・ブロディ)。エルザはクライブの反対を押し切って、倫理的、または法的禁忌を破ってしまう。人間と他の生物の遺伝子を掛け合わせた生命体を創り出す。
そういう研究欲のような部分では、リアルな科学者像を描いていると思うが、そこに妙な味付けがされる。エルザと亡き母との確執だ。その母娘関係に管理教育もしくは虐待を想像させ、家系がもたらす因縁も匂わすが、はっきりと語られることはない。これは観客に想像力を求めるというよりは、脚本or編集が杜撰なだけなのか?
それとも…死んでいると思わされていた母親が生きているかもしれないと感じたシーンがラスト。それは単なる雇い主(上司?)だと思っていた女性だ。だとしたら母親の呪縛がこれからも続くということか?。

想像はいくらでも膨らむ。
エルザたちが創りだした新種の生物(ちなみに雌)ドレン(と命名)を人目から避けるために選んだ飼育(?)場所がエルザと母親が暮していたという農場だ。けっきょくエルザと母親に何があったのか具体的に語られていないのではなく、農場でのエルザとドレンの生活ぶりこそが、エルザが体験した母親との生活であり、とすれば、存在のはっきりしない父親とは何があったのか…もしかして?!

「接合」の意味をもつ「スプライス」というタイトルの意味を難しく捉えるのはよそう、と思ったのは… <超ネタバレ> ココ↓

クライブとドレンの接合!ナタリ万歳!

クライブのTシャツはシーン毎に取っ替え引っ替えで、最初の方は胸に「NOTHING」のプリント。そして白衣の襟に着けた大きな星のバッジは「オレの視点で見てくれよ」のサインかとも思える。
ということで、この映画はクライブが迷い込んだ世界。それはエルザ、母、ドレンが作り出すキューブなのであり、クライブの視点で観れば、この作品はまさしくナタリの世界そのものなのである。

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