2009年 映画鼎談 その1 [ベストテン]
私(オガケン、元店主)は昨晩から苦しんでいた。
吐き気はするわ、関節は痛いわ、寒気はするわ、頭はズキズキするわ、お腹はシクシクするわ、で・・・・・・これは、もしかして、豚インフルエンザ・・・と書けば怒られるらしいので、正確に記すと、Pandemic(H1N1)2009ではないか!と、危惧ったのだが、今日は恒例の映画鼎談の日。休む訳にはいかない。私は這う様にして、会場 に向かったのであった。
- オガケン
- ああ、ヤマネくん、お待たせ。
- ヤマネ
- ・・・・・・
- オガケン
- あれ?どうしたの?
- ヤマネ
- ・・・声が、出ないんです・・・
- オガケン
- もしかして、ヤマネくんも、Pandemic(H1N1)2009!!!
- ヤマネ
- なんですか、それ?
- オガケン
- あ、いや、新型インフルエンザの事なんだけど・・・、実は私も風邪らしくて。
- ヤマネ
- ええー!うつさないで下さいよー、うちは子どもが居るんですから!シッシッ!
- オガケン
- な、なにおー!こっちこそ、声が出なくなったら商売できないんだよ、シッシッ!
- トモコ
- はい、はい。二人とも、他の人の迷惑になるから、他所に行ってね。はい、はい。
- ヤマネ&オガケン
- わー
と、そんな訳で、我々は他所にやられたのであった。
- ヤマネ
- ここ、どこですか?
- オガケン
- うーん、隔離室、だろうなぁ。・・・ううむ、「ドゥームズデイ」を思い出すなぁ。観た?
- ヤマネ
- 観てないです。
- オガケン
- 結構良かったよ。B級映画の粋って感じで。ローナ・ミトラも凄くカッコ良かったし。
- ヤマネ
- そういえば、今日は映画鼎談じゃないですか。マツヤマさんはまだ来てないですけど、早速始めません?早く終えて帰りたいし・・・。てな訳で、ボクのベスト10はこれです!
ヤマネ選出ベスト10
- ベンジャミン・バトン 数奇な人生
- THIS IS IT
- ザ・バンク 堕ちた巨像
- グラン・トリノ
- スタートレック
- チェンジリング
- マイマイ新子と千年の魔法
- 3時10分決断の時
- 96時間
- ウォッチメン
- オガケン
- なるほど。では、私のはこれ。
オガケン選出ベスト3
- グラン・トリノ
- THIS IS IT
- イングロリアス・バスターズ
- ヤマネ
- あれ、なんでベスト3なんですか?
- オガケン
- だって、今年10本しか観てないんだもの・・・。
- ヤマネ
- それならぎりぎりベスト10できるじゃないですか。まぁ、ボクも20本ほどしか観てないですけどね。やっぱダメですねー、子ども出来ると。年間150本とか、どうやって観てたんだろ、とか思う。今も仕事は暇なんですけどね。
- オガケン
- 正直言って、今年はお金もきつかったんだな。オパールも新しい場所に移って、まだまだ軌道には乗ってないし。景気の悪さは絶好調だし。今年は歌舞伎もほとんど観られなかった。
- ヤマネ
- こうなってくると、下らない映画を観る権利、が奪われますよね。なんか最近は、(自分的に)絶対に面白そうな映画=安全パイだけを選んで観に行ってる気がするんですよ。そ んなのつまらなーい!!
- オガケン
- 私もそう思って、先日は“下らない映画を観る権利”を行使したんだよ。「パブリック・エネミーズ」、ババーン!
- ヤマネ
- マイケル・マンですね!観てないですけど。どうでした?ワクワク。
- オガケン
- うん。予想通り、つまらなかった。で、ま、それはいいんだけど、するとねぇ・・・すごーく、腹がたってくるんだよ!別につまらないのは分かってたはずなのに、くっそー!私の貴重なお金と時間をかえせー!!!と、ね。そういうのって、 よくないよね。
- ヤマネ
- 世知辛いですねー。
- マツヤマ
- よぉ、二人とも、待った?
- ヤマネ
- あ、マツヤ・・・・・
- マツヤマ
- あれ?二人ともどうしたの?それに、ここ、どこ?
- オガケン
- ここは隔離室ですよ。我々が風邪なんで、ここに隔離されたんです。
- マツヤマ
- え〜っ、二人とも大丈夫?
- ヤマネ
- まぁとりあえずは大丈夫だと思いますよ。声は聞こえづらいかもしれませんが。
- オガケン
- 私も今のところは座ってられるから・・・
- マツヤマ
- イヤイヤイヤ、そういう意味じゃなくって、オレにうつらないか大丈夫か?って言ってんだよ。もういいよ離れて座るから、二人ともこっちを向いてしゃべんないでね!で、オレのはこれだから・・・
マツヤマ選出ベストリスト
- グッド・バッド・ウィアード
- レイチェルの結婚
- ベンジャミン・バトン 数奇な人生
- A群
-
- コッポラの胡蝶の夢
- 母なる証明
- レボリューショナリーロード 燃え尽きるまで
- B群
-
- ダウト 〜あるカトリック学校で〜
- イエスマン “イエス”は人生のパスワード
- ザ・バンク 堕ちた巨像
- ノウイング
- 消されたヘッドライン
- チェ 28歳の革命
- オガケン
- あれれ、これはまた、変わったリストですねぇ。このA群とかB群とかいうのは・・・
- ヤマネ
- もう!二人とも、勝手に“ベスト10”の概念を変えてしまって!困りますよ、プンプン!
- マツヤマ
- ナニ言ってんだよ。10本とか20本しか観てないのにベスト10はないでしょ。そんなことを今まで60年以上もやっていたけど、オパールは去年新しくなったんだから、こういうことも変えていかないとダメでしょ。革命が起こったんですよ革命が。
- ヤマネ
- そんなこと言うなら、ボクもベスト10チェンジしまーす。1位は「母なる証明」!観てないけど、観てたら多分1位だったから!!!
- オガケン
- まぁまぁ、二人とも。オパールは確かに場所が変わったし店主の座も私からトモコに政権交代したけど、60年以上もやってる訳じゃないし、ヤマネクンも観てない映画をベスト10に入れるのはなしにしようよ。それじゃー、別にオパールとしての総合ベスト10を決めるのはやめて、それぞれ今年印象に残った作品について、ゆるゆる語っていきましょうー、か。
で、マツヤマさん、なんなんですか、このA群B群っていうのは?
- マツヤマ
- ちなみにオレは今年45本くらい劇場で観たけどベスト10って選ぶの難しくってね。今までもここでベスト10書いてきたけど、4位以下はけっこう適当だったんだよ。だからベスト3以外はけっこう良かったA群とまぁまぁ良かったB群を選んでみたんだよ。
- ヤマネ
- マツヤマさん、「母なる証明」A群ですか?ベスト3じゃないの?アリエナイよ!
- マツヤマ
- だ・か・ら、観てないんでしょ!観てない思い入れなんて初めて聞いたよ。
- ヤマネ
- 観てないベスト10だって選べます!2位は観てないけど、「空気人形」。観てないけど、素晴らしかった。是枝監督は苦手だけど、これはいいですね。3位は「ポー川のひかり」。これもいいっ。
- オガケン
- 観てないベスト10か。なかなか良さそうな企画だね。来年はそれでいくか・・・。ところで今回はみんな観た本数が少ないせいか、というか安全パイを押さえたせいで、割と被ってて話し易そう。でも、マツヤマさんは「グラントリノ」観たのに選ばなかったんですねぇ。ダメでしたか?
- マツヤマ
- そんなことあるはずないでしょ!メチャメチャ強かったよ。でもね、ありゃ箱根駅伝で走ってるアフリカ人の留学生みたいで、あたりまえのように強いから勝手にハンデつけたら外れちゃったのサ。はは。
- ヤマネ
- ふーん。確かに、「グラン・トリノ」は各所で大絶賛でしたよね!イーストウッドって、こんなに評価されてたって?という感じ。
- オガケン
- そうそう。私やヤマネくんは、オパールが始まった頃から「イーストウッド、イーストウッド!」って騒いでたけど、その頃は蓮見重彦一派ぐらゐしか評価してなかったんじゃないかな〜?それがここ数年、ちょっと凄いよね。なんか不思議。
- ヤマネ
- 他のアメリカ映画がダメに成り過ぎたからじゃないですか。・・・でも、今年は結構良かったと思うんですよね、アメリカ映画。不況のおかげかな?
- オガケン
- じゃあ、「グラン・トリノ」は他所に任せて、その“結構良かった”アメリカ映画について語りましょう。まずは・・・「ザ・バンク 堕ちた巨像」。
- ヤマネ
- ボクはメッチャ良かったです。サスペンスの面白さでぐいぐい引き込まれてしまって。本当はもっと政治的な映画で、巨大な銀行の世界支配に対する批判が根っこにあるんだろうけど、映画(虚構)ならではのアクションや俳優の魅力などで全部吹き飛んでます。
- オガケン
- それはいいことなの?
- ヤマネ
- 全くかまわないですボク的には。噂では、ラッシュを観て強い内部批判が起きて、慌ててトム・ディクバがアクションシーンを増やしたらしいですよ。
- マツヤマ
- 最後がいいよね、単純な終わり方ではなくて。ギリギリの線まで追いつめていくんだけど(ように見えるんだけど)、けっきょくは最後まで到達できないのがリアル。オレたちに深読みの余地を与えてる、ていうか。
- ヤマネ
- まあ、その絶望感の中、クライブ・オーウェンの顔アップのラスト!!!最高ですね!!!
- マツヤマ
- 関係ないけどクライヴ・オーウェンって役所広司みたいじゃない?
- ヤマネ
- そういえばマツヤマさん役所広司に似てますよね。
- マツヤマ
- ワァッ、恥し!でも実はそう言われたの今週で2回目なんだよ。後にも先にもその2回だけだと思うけど。
- ヤマネ
- マツヤマさんの方が相当メタボですけどね。まぁいいじゃないですか、クライヴ・オーウェンにも似てるってことになるしね。
- マツヤマ
- クライヴ・オーウェンに似てるって言われて嬉しくはないけどな。
- ヤマネ
- えー、いいじゃないですか。ボクなんか最高に褒められた時で、ジョージ・クルーニーと眉毛が似てるね、ですよ。
- オガケン
- とりあえずはDVD借りて観るほどでもないかな・・・ ちなみに「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」は私もベスト10なら確実に入ってますよ。
- ヤマネ
- どの映画もベスト10に入ってるんだから当たり前でしょ。
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
- ヤマネ
- ということで、今年は「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」がマイベストなんですが。フィンチャーの良いところが詰まった傑作でしたね。
- オガケン
- 確かにいい映画だった。デヴィット・フィンチャーを見直したな。
- ヤマネ
- まさに。ボクも「パニックルーム」で駄目だ終わってるなと思って。「ゾディアック」もダメ。いいのは「エイリアン3」かな。「ファイトクラブ」もそれほど乗れなかったし。そんなわけで期待してなかったんですが、「ベンジャミン」すごく面白くてびっくり。
- マツヤマ
- オレも予想外に深いと思ったし、予告編そのまんまだが、単純じゃなくて感心したなあ。レビューにも書いたんだけどね。ヤマネ君はどんなところが良かった?
- ヤマネ
- フィンチャーといえば映像と言われますが、むしろ脚本が爽やかで前向きなのが、気持ちよかったですわね。ボクねー、「フォレスト・ガンプ」大好きなんですが、いわゆるフォレスト・ガンプでしょう、これ。
- オガケン
- 「フォレスト・ガンプ」観てないなあ。でも似てる気がする。
- マツヤマ
- 同じく観てない。けど、似てるね、この二本。
- ヤマネ
- こらー!二人とも観てない映画で語らないで下さい! ってボクもだったか。ビシッ!! フォレスト・ガンプといえば、えび船長。・・・なんだけど、そうじゃなくて、アメリカのある時代と個人史を重ね合わせるようにして、語る手法が一緒。で主人公が特殊な人。なんで日本人のボクが感動せなあかんねん、と腹がたつ映画たちです。くそぅ。
- オガケン
- 逆回転する時計の意味とか、少しわかりにくいかったんだけど。カトリーナによるニューオーリンズの被害とか。ま、それらも、映像がかっこいいからいいか。時計って、映像ばえするしね。
- ヤマネ
- それに、実際には、ベンジャミン・バトンの人生を描いているというよりは、相手役の女性デイジーの人生がいかにベンジャミン・バトンによって数奇なものとなり、楽しかったか、という物語でしょう。単にベンジャミン・バトンは淡々と人生を歩んだに過ぎない。男前だけど。
- マツヤマ
- いや、むしろベンジャミン・バトンだけが普通の人で、周囲の人間がみんな数奇な人生を生きた人たちだよね。雷に7回打たれても死ななかったおじさんとか、ロシアのスパイで高齢なのに大西洋を泳いで渡った女性とか、特殊な人ばっかり。「ベンジャミン・バトン 以外みな数奇な人生」だな。
- オガケン
- 生きるということを深く考えたのは、ベンジャミンに接した周囲の人たちなんですよね。もちろん本人も色々考えただろうけど、映画では結構さらりと流されている。それも当然で、ベンジャミンバトンに接した周囲の人で最大のものは、っていえば、この映画の観客だもんねー。・・・そういえばヤマネ君の周囲でも、雷に打たれた人がいたり、ミラノで怪しい取引をしている人とか、ピアニストだったけど、今はスパイ、とか色々いるよね。
- ヤマネ
- 誰のことですか、それ。 ・・・つまり、ボクが何も考えていない凡人でも周りが変人なら映画が一本取れる、と。「ヤマネ 数奇な仲間の人生」みたいな。観終わったあとに、みんなに前向きな気持ちになってもらえればいいですね。監督は誰ですか?
- マツヤマ
- もういいよ、その話。
Comments
投稿者 オイシン : 2010年01月14日 20:33
明けましておめでとうございます。
今年も映画鼎談が読めてうれしいです!
僕は年明け早々新型インフルやってしまいました。
風邪っぽいなーと思っていたらいきなり発熱したので
皆さんもご注意ください。
今年は2001年宇宙の旅をTOHO二条でやるのが楽しみです!
http://asa10.eiga.com/
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