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2009年09月19日(Sat)

「グッド・バッド・ウィアード」 ☆☆☆☆☆

Text by Matsuyama

オレはコレに迷うことなく満点!。今でも思い出すと鳥肌が立つくらいカッコいい映画だった。確かにマカロニウエスタン(イタリア製西部劇)って言うのは、B級、C級でもいいし、コメディでもいい、話が矛盾だらけでもいい。でも何よりもカッコよくなかったら話になんない。カッコよければなんでもアリだ。

この映画の元ネタといえば巨匠(といっても一般的に知られているのは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」だけ?の)セルジオ・レオーネの1966年作「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」だ。原題は「THE GOOD, THE BAD AND THE UGLY」でUGLYとWEIRD=イヤなヤツ、ヘンなヤツって意味でまあ似たようなもの。卑劣漢っていうのがどちらもピッタリかもね。

で、今作は、いいヤツだけど、善良というわけではないGOOD=パク・ドウォンをチョン・ウソン、悪いヤツ(でも…?)のBAD=パク・チャンイをイ・ビョンホン、そして卑劣漢WEIRD=ユン・テグがソン・ガンホと、無国籍地帯満州国を舞台にした朝鮮人のガンマン3人がこの上なく豪華だ。
ちなみに監督はイ・ビョンホンのPVかと思うほどカッコよすぎる作品「甘い人生(2005年)」のキム・ジウンで、「甘い人生」ってのも「LA DOLCE VITA」って「甘い生活(フェリーニ)」が原題だったから、よっぽどイタリア映画が好きなのかどうかは知らないが、今作は決してまるごと「続・夕陽の〜」のリメイクとかパクリとかではない。

おそらくキム・ジウンさんは相当のマカロニウエスタン好きなんだろう。たくさんのマカロニ作品からマニアックなネタをもらっているようだ。オレも自称マカロニウエスタン・マニアとして、その全部を列挙したいが、それは自慢でしかないからヤメておく、というより言うほどマ ニアではなかったのネ、自称だから。

とりあえずチャンイ役のイ・ビョンホンが相変わらずメチャクチャカッコいいから、チャンイの元ネタをオススメしておく。大雨のなかの黒いロングコート姿は紛れもなく「続・荒野の用心棒(1966年、原題ジャンゴ)」のフランコ・ネロで、チャンイが終盤、戦いに倒れた手下に向かっていう言葉「途中でやめるんじゃない」は「怒りの荒野(1967年)」で悪役タルビー(リー・ヴァン・クリーフ)が主人公で弟子のスコット・マリー(ジュリアーノ・ジェンマ)に教える“ガンマンの心得10ヶ条”のひとつだ。その師弟対決でガンベルトを腰に着け向かい合う弟子に教える10番目の心得が「皆殺しにするまでやめるな」だ。「始めたことはやり遂げろ」ってことで、オレはこの10ヶ条を自分の人生にも応用している。オレが好きなのは「相手に傷を負わせたら必ず殺せ、でなければいつか復讐される」だ。これは男女の恋愛問題にも言えることで、一方的にフる場合、中途半端な情をかければ後々ロクなことにはならないことは説明不要だ。
「危険なときほどよく狙え」っていうのもある。仕事が忙しいとき、時間がズレ込んで予約のお客さんが重なってしまうようなときにオレはコレを思い出す。焦っているとき、忙しいときほど落着いて仕事をすれば意外とはかどるものだ。ちなみに「怒りの荒野」のタルビー役のリー・ヴァン・クリーフってのが、「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」の“BAD”をやっている。で、それがイ・ビョンホンのパク・チャンイだ。ちょっとややこしくてゴメン。

さて、また話が逸れていきそうなので内容に触れてみよう。途中、ドウォンの住処 or 宿? にいる少女のキャラが個性的でありながら何の説明もなく一瞬でシーンが終わってしまう。パンフではドウォンに惚れている娘と書いているんだが編集で削ったんだろうか? テグが助けた子供たちが途中で消えてるけどこれも編集で? なんて疑問の箇所が多々あるし、歴史考証もあてにならないし、繋ぎも荒っぽいが、そこがマカロニウエスタンなのさ。そのいいかげんがイイんだ。

とりあえずは終盤のクライマックスが圧巻だ。あんなのは日本映画界には絶対に作れないし、今のハリウッドにもタランティーノにも絶対に無理だ。非常に個人的だが、そ〜んのぐらいスゴい!

宝の地図(って幼稚だけど重要な存在)を手にしてサイドカーで逃げる“卑怯だけど憎めないヤツ”テグ(ガンホ)。それを追うチャンイ(ビョンホン)率いる朝鮮人馬賊(バゾクってギャングみたいな)と、モンゴル、中国、ロシアなどの多国籍馬賊。これら馬やらバイクやらの大群が砂漠を駆け、撃ち合い、脱落してゆくというCGなしの長時間に渡るシーンだ。さらに、その大群の背後から大勢の大日本“帝国”軍がドッカンドッカン爆撃しながらジープでテグの持つ地図を狙い追っってゆくのを、崖の上からドウォン(ウソン)がウインチェスターライフルで狙い撃つ。
朝鮮人が日本人をバンバン撃ち殺すあたりはネットウヨクみたいなオタク新人類にはNGかもしれないが、それ以外の大多数はたとえ日本人であっても観ていて気持ちがイイ。
「続・夕陽の〜」では主役のはずのGOOD(イーストウッド)がここでは出番が控えめだ。ベテランのガンホ&ビョンホン(J S A では恋人同士)の引き立て役に撤してるのがまたイイ。でもチョン・ウソンのGOODも相当カッコいいぜ!

さてさてラストは重量級のドンデン返し2段オチで、これも贅沢。
1番目のオチはテグとチャンイの因縁の過去。“傷を負わせても殺さなかった”報いか?
2番目は“お宝の真実”で、これによって、登場するウィアード、朝鮮人軍、多国籍軍、帝国軍の構図が今の世界情勢にピッタリと当てはまる。 今回は野暮だから政治の話はやめておく。そんなことを考える隙間などない129分。
ああもう一度観たい!

Comments

投稿者 マツヤマ : 2009年10月12日 01:13

コメント全部、同人物もしくは同人種かもしれませんが、とりあえず最初のコメントには答えておきます。
スミマセンが他のは削除してもらえますか、管理人さんご苦労かけます。

>自分と同じ日本人を殺されていやな気分にならないほうが  よっぽどオタク新人類だと思います

無記名さんご苦労様。字間スペース長いね(ってどうでもいいけど)、本来は無視されるようなコメントでも、私は少し頭が弱いせいか、ついつい答えてしまうのです。

無記名さん、私は日本人ですが、少なくともあなたとは同じ日本人ではないようです。

様々な民族が同じように生きていて、日本人だけが不当に殺されるならば私は怒ることでしょう。それが朝鮮人であっても、中国人、欧米人であっても、日本人の私は怒ります。不当な殺害に“なに人”であるとか関係なく、人間としてあたりまえにそう思うだけです。

映画(フィクション)の中で、無差別に殺しをしているのが大勢の日本人で、殺されている側の朝鮮人の一人が、その日本人をバンバン撃ち殺すのを見て全く嫌な気持ちにはなりません。
この映画を観ましたか? あなたたちはとにかく外に出て他人と触れ合うことが大切です。

投稿者 Anonymous : 2009年10月12日 14:59

>歴史考証もあてにならないし、繋ぎも荒っぽいが、そこがマカロニウエスタンなのさ。

この映画の元ネタのマカロニウェスタン「続夕陽のガンマン」は歴史も武器の考証もちゃんと考えられた名作ですよ
歴史考証も繋ぎも荒っぽいのがマカロニウェスタンという訳ではないです



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