「007 慰めの報酬」 [☆☆☆★★★]
Text by Matsuyama
- 父
- マサユキ、今回の007も傑作だったな。
ーさぁ今回も核心に触れていこうかー
- 子
- うん、面白かった。
でも評判悪いよ、ボンドが硬すぎるとかボーン・シリーズみたいだとかって。
- 父
- それはね、007シリーズは初代ボンドがスタンダードになってしまってて、007なんてほとんど観たことがない人まで「やっぱりショーン・コネリーがいちばん良かったよね」なんて言うもんだから、もう誰がやっても初代には勝てなかったんだよ。
でもダニエル・クレイグの登場によって新しい基準ができたと思うんだ。
それでも前作はまだそれまでの影響を少し引きずっていたけど新作ではもうほとんど過去を切り離したと言ってもいいだろうな。
ダニエル・クレイグはもともとシリアスなキャラクターだし、監督のマーク・フォースターはどちらかというと社会派監督だ。
この組合わせが今の時代にはちょうどいいと思うんだよ。
- 子
- でも、ダニエル・クレイグはいいとしても、お色気の要素も少なくなったし、ハイテクマシンも出てこないのは寂しいよね。
- 父
- マサユキにお色気はまだ早いだろぅ。
ハイテクマシンや小道具がなくなったのはスッキリして良かったじゃないか。
あれはアナログの時代だから良かったんであって、今はCGとか、それこそハイテク技術でなんでも簡単に映像に出来ちゃうから逆にシラケるんだよ。
近未来を特撮の限界ギリギリで作ることが面白いんだ。
わかるか?
- 子
- そうだね、ダニエル・クレイグも出来る限りアクションシーンも自分でやっているっていうからね。
ブロスナンのときはスタントマンだったり、合成映像だったもんね。
- 父
- そうなんだよ。
そして今回はより現実的なテーマだから、なおさらニヤけている場合ではないんだ。
- 子
- 現実的って?
- 父
- ボリビアの水戦争っていって、2000年に民衆が蜂起して今もまだ解決していない問題なんだよ。
- 子
- やっぱりまたアメリカ絡みの話?
- 父
- その通りだ。
アメリカが何処かの国の売国奴に郵政事業などの公共事業の民営化を押付けたみたいに、アメリカ政府と結託したボリビアの傀儡政権(ゲバラを処刑した)もほとんどの公共事業を民営化させて最後には市営の水道局まで民営化したんだ。
それで水道料金は低所得層の月収の2割まで跳ね上がって、払えない世帯は容赦なく供給を止められたんだよ。
水道利権を得ていたのは、サウジアラビアのオイルマネーも手にしていたベクテル社っていうアメリカで最大の複合企業だ。
世界の発電施設やダム建設で有名なロックフェラー系の企業なんだけど、とにかく途上国の資源で利権を漁ったり核兵器を作る恐ろしい企業なんだよ。
「アイアンマン」や「ウォーリー」でもあの企業がモデルだったと思うんだ。
- 子
- それじゃぁ悪役のドミニク・グリーン(マチュー・アマルリック「潜水服は蝶の夢を見る」)の自然保護を勧めながら裏で土地を買収していた怪しい慈善団体“グリーン・プラネット”がベクテル社ってことなの?
- 父
- まぁ何もかもが現実と被っているとは限らないが、そうかもしれないし、グリーン・プラネットは使いっパシリの子会社かもしれない。
背後に“クォンタム”という黒幕が存在しているということだから、それがベクテル、もしくはロックフェラーということなのかもしれないね。
でもマチュー・アマルリックは「潜水服〜」のままのイメージで観たから、どう見たって非力なのに眼力だけがすごいパワーを放ってたよなぁ。
- 子
- そうだね。
動いている姿を見て安心したよ。
でも最後にボンドが苦戦してたのはかなりウソっぽかったね。
- 父
- 確かにあいつは武闘派じゃないから変だったな。
でもまぁ映画の世界だ優しい目で見ようじゃないか。
- 子
- なんだか話が進んでいないような気がするけど。
- 父
- 今回はこんな感じでいいだろぅ。
政治的な部分はゲバラの話と根っこはいっしょだから、あの2部作の間に見るにはちょうどいい。
それにべクテル社の話はあまりにも恐過ぎて触れられないこともあるんだよ。
- 子
- その話は知ってるけど、父さんが恐がってるのはみんなからトンデモだと思われることでしょ。
- 父
- まぁそんなところだ。
消極的に陰謀論を考える
9.11がヤラセだったのではないか、という疑惑は都市伝説、陰謀説を越えてもはや一般的な陰謀論になりつつあるが、それでも、例えそう思っていてもいなくても、そのような話題はなかなか口には出せない人も多いのではないかと思う。それはグランド・ゼロ周辺の住民や犠牲者の遺族やその関係者、またはニューヨーク市民さらにはアメリカの国民である。特に犠牲者が身近にいる場合は軽々しく口に出来ることではないだろう。 例えば、長く関西に住む日本人である私は阪神・淡路大震災に関して軽口を叩くことはできない。あの大災害の裏に何らかの陰謀があるという噂はインターネット場には腐るほどあるが、私はネット情報程度のスピーカーにはならない。ただ、最近読んだ本の中に1995年の1月に実際にあった大災害と翌2月にその影響を強く受けた海外での大事件のことが書かれていた。その本は陰謀を暴くような類のものではないのだが、後からその三角形、または台形の一辺(あえて抽象的に書きますが)にべクテル社が絡んでいると知ったとき、私の中のその三角形ないしは台形が蜘蛛の巣のように大きく広がっていったのであります。
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