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2008年12月04日(Thu)

「トロピック・サンダー」 ☆☆☆★★★

Text by Matsuyama
父さんわかってた?
イジワルなプロデューサーの役が××××××だって。
コ、コラ、マサユキ、ダメダメ、もう言うな、それをネタバレって言うんだぞ。
でもストーリーに触れてないし……
この作品に関してはストーリーに触れるかどうかなんてネタバレにはならないんだよ。
××××××みたいな、公式には明かされていなかったおよそ10人のカメオ出演俳優の名前をバラすことがネタバレっていうんだよ。
知ってて観るより知らずに観た方が、わかったときの喜びが違うからな。
でも、もう他のネットのレビュアーは書いてるよ。
それはデリカシーがないな。
そもそもこういったコメディ作品の観方がわかっていないんじゃないか。
面白かったかどうかの評価基準がギャグやジョークを日本のお笑いレベルでしか観ていないんだったら、それは間違いだぞ。
でも日本で上映しているんだから日本人の基準で笑いを追求してもいいんじゃないの。
確かにそうだ。
でも父さんの言っていることはそういうことじゃないんだ。
アメリカン・ジョークが“しょうもない”っていうのはテレビでの“ダウンタウン”と比べているからで、じゃぁどっちが高度なお笑いかって言ったらアメリカン・ジョークなんだ。
それは笑いというのは“風刺”だということを昔から踏襲(とうしゅう)してきたからなんだ。
言葉や動きだけで笑わせるんじゃなくて、言葉の裏を読ませることで笑いに繋がる。
だから観る方も笑うまでの早さが試されるんだ。
ダウンタウンの松本はそれをテレビでは出来ないから「大日本人」でやったのサ。
もう一歩!
というところだったけど、それでも風刺というのが世界(先進国)共通だからカンヌでもやれたんだ。
それじゃぁ、この映画はどこで笑えばよかったの?
そんなエラそうなこと、父さんなんかに言われる筋合いはないだろぅ。
どこで笑おうが人間に許された自由だ。
なんて言ったって、実は父さんはオナラで笑ったんだ。
お前らガキといっしょで、オナラとかチンポとかは物心付いてから老いて死ぬまで笑えるテッパンだと思うよ。
ただし使い方によるがな。
で、笑いということだけど、なにも声にだしてワッハと笑うことが笑いではなくて、こういう風刺の場合はクスッと笑うくらいで上出来なんだ。
作り手はわざと抑えているからそうなるんだ。
どうして?
ハリウッドのチェック機関やエキセントリックな市民からのクレームから逃れるためだ。
だから賢くないと出来ないのサ。
なるほどね、で、父さんはどこでクスッとしたの。
そうだな、まず、この作品は制作者で主演のベン・スティラーが言っている通りハリウッドを茶化した映画だ。
ハリウッドとは政府の出先機関でもあって、それを踏まえて見ると××××××の態度だ。
アジアを自分の所有物みたいに見ているのが、アメリカの帝国主義、植民地主義と重なっていることだ。
容姿と中身にもモデルがいるような気がするよ。
そしてこのプロデューサーが所有する自家用ジェット“G5”。
もはや7でも8でもない、5だ。
主要国首脳会議でアメリカを除いて目障りなのはイギリス、ロシアといったところだろうか?
わかりません。
日本は違うの、アメリカから嫌われているんじゃないの?
うん、日本は今のところ敵ではない。
大切なお財布のようなものだ。
さて、次はオスカーを手に出来る条件だ。
ここからラストまで「ラスベガスをぶっつぶせ」のストーリーとまんま重なってくるんだけど、たとえ完璧に知恵おくれをリアルに演じることはできても、何か長けた才能を持った知恵おくれを演じなければ年に一人のオスカー俳優にはなれない、ということだ。
「ラスベガス〜」では大勢の中から毎年ひとりだけに与えられる奨学金は並の天才ではなく、感嘆に値する何らかを持っていなければならない。
去年は車いすの留学生に与えられた。
すなわち障害者、外国人ということだ。
そして主人公は感嘆に値する体験をして奨学金が得られた、ということでした。
なっ、同じだろ。
ここでの奨学金とは「トロピック〜」でのオスカーのことだ。
カジノの監視室にハリウッドの裏側を描いている。
アナログからデジタルへの移り変わりで、つまらなくなってゆくハリウッドの映画界を描いているんだ。
つまり「ハリウッドをぶっつぶせ」なのサ。
ホントだ、ストーリーもよく似てるね。
でも、知恵おくれと笑いを結びつけるなんてタブーだと思うんだけど。
それが風刺なのサ。
例えばMr.ビーンやボラットは、ある意味知的障害を演じて笑いをとっているように見えるけど。
ここでの主役はそれら本人ではなくて、周囲の人々なんだ。
「ボラット〜栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」を観ても、ボラットに関わるアメリカの一般市民たちの性格が手に取るようにわかるだろぅ。
アレを観て爆笑するのと同時に、ボラットの周囲の反応を見て自分と重ね合わせた観客は改めて他人との接し方、社会人としてのありかたを考え直すことにもなるのサ。
でも、ハリウッドでは知恵おくれに更なる付加価値をつけて感動を押し付けていることをベン・スティラーはハッキリと皮肉っているのサ。
それと同時に知恵おくれを演じるのはよくても、白人が黒人を演じることがタブーであることも描いているんじゃないかな。
“やり過ぎ”の基準がどこにあるのかわからないってネ。
父さんが観るとなんでも難しくなるんだネ。
やっぱりボクはまだガキだからジャック・ブラックでウケまくったよ。
J.B 大好き。
父さんも大好きだ。
あの存在はありがたいよな。
もう素直に爆笑できる。
あれも世界共通だ。
でもね、ボク、予告編観たときに監督役の人がオーウェン・ウィルソンだと勘違いしていたんだ。
違ったから残念だったよ。
あぁ、父さんも予告で何度も思い出したよ。
映画俳優って演じる姿だけ見ても、その人の本音なんてわからないんだなぁ、なんてあたりまえだけど。
でも繊細なんだなぁって思ったよ。
この作品ではベンのマネージャー役が元々オーウェンの役だったらしいんだけど、代役もまたカメオだ。
でもこのカメオにもオーウェンの魂が宿っていたように見えたよ。
早く戻って来て欲しいねぇ。
ボクも“応援”してるよ。
あっ言おうと思ったのに。

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