サウンド・オブ・サンダー [☆★★]
私が、ピーター・ハイアムズの凄みに気づいたのが、『ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど』。この映画、宣伝だけみれば安いメロドラマ、しかし物語中盤から、安いB級戦争アクションに突如変貌して大いにのけぞったものです。ピーター・ハイアムズにとって映画とは、脱出のスリルとサスペンスに他ならず、演出のベースには、そこはかとなく西部劇があります。ショーン・コネリー主演『アウトランド』、そして『2001年宇宙の旅』の続編『2010年』、SFですがウェスタンの味わいあり。
かつてクリント・イーストウッドは「アメリカが生んだすぐれた芸術形式(Art Form)は二つある。ジャズと西部劇だ」とおっしゃいましたが、どんなお膳立てであろうと西部劇調スリル & サスペンスにしてしまうピーター・ハイアムズこそ、もっともアメリカ映画らしい映画を撮る監督なのだ。
そんなことはどうでもよくて、今回『サウンド・オブ・サンダー』、無理矢理な設定、「次の、時間の波が来る前に、歴史を元に戻さなきゃ!」と、あっち行ったりこっち行ったりマンドリルのお化けに襲われたり、安心して眺めていられる熟練の演出が展開、やっぱりピーター・ハイアムズは、結局こんな話になっちゃうなー、と茫然と眠気をもよおしたのでした。
驚いたことに初日レイトショー、観客席ほぼ満員! ついにピーター・ハイアムズの時代がやってきたか…! …と、感慨深いものがあります。ヴァン・ダム主演『タイムコップ』『サドンデス』を、5〜6名の観客数で見たのも、今となってはよい思い出ですね。
そんなどうでもいい感慨に浸っている場合ではなくて。「へぇー!」と感心されることウケアイトリヴィアを紹介しましょう。
2055年、「タイムトラヴェル+恐竜狩り」は、セレブ御用達レジャーになっております。タイム・サファリ社の社長ベン・キングスレーは、セレブどもに対し美辞麗句を並べたてたのであった。
「あなた方の時間旅行は、コロンブスのアメリカ発見、アームストロングの月旅行に匹敵する大冒険でした!」
字幕ではこんな感じ、でも翻訳されていないことをしゃべっておる。このセリフは2回繰り返されたので、聞き耳を立てるとどうやら「ブルベイカーの火星探索」みたいなことを言うとります。
「ブルベイカーの火星探検」とは? そう! ピーター・ハイアムズ出世作『カプリコン1』は人類初火星着陸のお話、その火星探査船長が“ブルベイカー”だったのであーる。へぇー! へぇー! へぇー! へぇー! へぇー! …自ら感心してみました。
そんなトリヴィアはどうでもよくて、予告編などでは「ハードSF」っぽい売り方、しかしそこはさすがのピーター・ハイアムズ、いまどき珍しいB級アメリカ映画なんで、日本未公開のままレンタルヴィデオに直行してもおかしくない作品、そういうのが好きな人にはバチグンのオススメです。
☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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