京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal：Home

　ジャッキー扮するは、始皇帝の近衛隊大将、モンイー将軍。朝鮮から迎える新たな妃＝ユシュウ姫のお出迎え。ところがお姫さま奪還くわだてる朝鮮の軍勢が急襲！　…と、いきなり無理矢理猛烈アクションでツカミはバッチリ、ジャッキーとユシュウ姫、やがて二人の間には禁断の愛が…というお約束の展開だけで猛烈におもしろかったはず、しかし、そこはサービス精神旺盛／過剰なジャッキーですから、話はとんでもない展開を見せるのでした。それは見てのお楽しみ。以上。

　…ぜひとも予備知識なしでご覧いただきたいのですが、少し見どころをかいつまんでお話ししましょう。監督はジャッキー中期名作『ポリス・ストーリー3』のスタンリー・トン、スタントマン出身、ジャッキーアクションの魅力をよくわかっている！　

　先般ジャッキーはアメリカ映画で、せっかくのスタントを台無しにされる不遇の時代が続いており、「おいこらアメリカの人！　お前ら、何にもわかってない！」と地団駄踏むことが多かったのですが、中国に復帰し『香港国際警察』、そしてこの『THE MYTH／神話』、「これこれ、こうでなくっちゃ！」と諸手を上げて熱烈歓迎。

　ジャッキーアクションの神髄は、繁華街での追っかけにあり！　とばかり無理矢理に追っかけにもっていくところとか最高です。一方で深刻な顔つきで将軍を演じ、他方で楽団に混じってピーヒャラピーヒャラ楽しそうに笛を吹くジャッキー、最高！　

　さらに、特殊なアクションのためだけに、意味なく特殊なセットを作り出してしまうのもジャッキー映画の特質。みなさんも『プロジェクト・イーグル』巨大送風機、『レッド・ブロンクス』ベニア感満点の邸宅、『香港国際警察』のレゴ展示場など、即座に想起されたことでしょう。

　この『THE MYTH／神話』では、「ネズミ取り工場」でのアクションがそれ、なんでいきなり「ネズミ取り工場」なのかサッパリわからず、そんな工場あらへんで！　とツッコミたいところ、涙が出るほど素晴らしい！　ジャッキー・チェンこそチャップリンの正統な後継者である…と思うわけです。って、なんでそんなパンツはいてんねん！　

　と、お話は迷走に迷走を重ね、いったいどう収拾をつけるのか途方に暮れていたところ、すべてのピースがカチリとはまる、とんでもない展開を見せます。こういう無茶苦茶さも中国なら全然あり？

　朝鮮のお姫さまを演じるのはキム・ソヒンさん、韓国の美人スターの方だそうで、スタンリー・トン監督曰く、「一国だけではアメリカに太刀打ちできないから、中国、韓国、アジアの国々は一緒に映画を作らなきゃ」…とのこと、『PROMISE 無極』『SPIRIT（スピリット）』などなど、東アジアが大同団結して娯楽大作をバンバン生み出す流れはやがて大河となるであろう。誠によろこばしいことである。

　映画は国境を軽々と越えていくものであり、ジャッキー・チェンこそもっとも精力的に国境を越え続けてきた男。今回、時空をも越えてしまって怖いもの知らず、ジャッキー・チェンの快進撃は、しばらく続くことでしょう。現代最高の映画作家ジャッキー・チェン新時代の傑作を見逃すなかれ。バチグンのオススメです。

☆☆☆☆★（☆＝ 20 点・★＝ 5 点）

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