がんばれ! ベアーズ/ニューシーズン [☆☆☆★★]
ルール無用な、落ちこぼれチームがやってきた! ババーン! アメリカ映画史に残る名作にして「ダメチームが、トンチや卑怯な手を使って決勝進出する」黄金パターンの完成形『がんばれ! ベアーズ』(1976年/マイケル・リッチー監督)の忠実なるリメイク。
ストーリーやら何やらオリジナルとほぼ同じ、少々ネタバレですが野球場からカメラがグイーンと引いて星条旗が映し出されるラストカットまで同じなのにはビックリたまげましたが、これすなわちリメイク版作者がオリジナルに多大なる敬意を払った証拠…ですけど、わざわざリメイク版を作る意味は…? しかしこれはなかなかに意義深いリメイクなのでありました。
まず主演のコーチ、バターメイカーさん(オリジナルはウォルター・マッソー)はビリー・ボブ・ソーントン、芸風は『バッド・サンタ』と同じ、冬にはきっとバッド・サンタになっているに違いない! って感じで、『バッド・サンタ』好きの私には嬉しい悲鳴です。おまけに脚本グレン・フィカーラとジョン・レクアは『バッド・サンタ』の脚本家チームだ!
この主演+脚本家チームで『Bad Santa』『Bad News Bears』(←英語題)に続き、もう一本『Bad Boys 2 Bad』あたりをリメイクして「バッド三部作」にしてほしいくらいです。
さらにさらに監督は傑作『スクール・オブ・ロック』のリチャード・リンクレイター! うっひょー、てなもんでございます。
オリジナルの枠組みをひきつぎ、ディテイルにこそ神が宿るとばかりに細かな差異でオリジナルを超えんとする作者の意気込みやよし、また、同じ話を何度も映画化するのは、シェークスピアや忠臣蔵のごとき古典を新たに生成する試み、『がんばれベアーズ』は30年に一本といわず、5年に一回くらいその時々の「負け組を演じさせたら天下一品」俳優さんでリメイクしていただきたいな、そんな気持ちになりました。
1976年よりも「負け組/勝ち組」の区別がハッキリしている現代アメリカ、それは日本も同様、今回のリメイクで描かれるベアーズの「負け組」っぷりはずいぶん陰影の濃いものになっていてそのへんに世相の反映がうかがえます…って、オリジナルは大昔に見たきりであまりおぼえていないので適当ですが、「何がダメとされ、誰が負け組とされるのか?」は時代によってうつり変わるわけで、新旧のベアーズメンバーを比べてみるとそのへんが見えて面白いかもしれませんね。
っていうか、負け組にあまんじるのも面白くなく、勝ち組の鼻をあかしてやろうとしたのだけれど、勝ちにこだわりすぎてもダメ! 勝ち組の人たちは勝ちにこだわりすぎて、大切なものをなくしてやしませんか? みたいなメッセージは、今日においてなお輝きを増しているのであった。
そんなことはどうでもいいのですが、オリジナルのテイタム・オニールやジャッキー・アール・ヘイリー(どこへ消えた? …って消えてなくて『ネメシス』に出てたみたい)のように、ズぬけた子役はおりませんが、アルメニア人の息子とか、ボケーッとしまくってる子とか、やたらけんかっ早い子とか、それぞれによい感じ。ビリー・ボブ・ソーントンも『バッド・サンタ』に続き、子供相手に毒づきながらも徐々に情が移っていく役柄がすっかり板についてきました。オリジナルを見たことある人もない人もお楽しみいただけるのではないでしょうか? バチグンのオススメ。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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