サーティーン あの頃欲しかった愛のこと [☆☆☆★★]
アメリカ西海岸、シングルマザー(『ピアノ・レッスン』のホリー・ハンター)に育てられる13歳中学生トレイシー、年相応、芋なお嬢ちゃん、しかし! うかうかしてはおられません。あまたのアメリカンハイスクール映画で描かれたように、アメリカ人は高校段階でクイーン、キング、ルーザー(負け犬)、ナード(オタク)、ブレイン(ガリ勉)といった階級にふりわけられてしまうのであった。ババーン!
キングまたはクイーンになりたかったら、中学生からふんばらねば! …と思ったのかどうかは知りませんが、トレイシーは男子生徒の憧れの的セクスィー中学生イーヴィと仲良くなりたい! と、ジェイ・ロー風ファッションをバッチリ決めて、イーヴィに声をかけると、イーヴィ「あらあら、ナイスなファッションね、電話番号教えるわ。今度いっしょに買い物しましょ」との反応をひきだし、トレイシー「イエス! イエス! イエーッス!」と舞い上がったが運の尽き、セックス、ドラッグ & ヒップホップの転落人生が始まるのであった…。
トレイシーは、母ホリー・ハンターとは姉妹のような仲良しさんだったのが一転、イーヴィの影響を受け、どぎついメイク、ヘソ出しファッション、ヘソピアスに舌ピアスと豹変を遂げ、母親と大げんかをくり広げる日々、やがて元凶イーヴィが居候する始末、家庭崩壊、おお! これは思春期・娘が理解不能な変貌を遂げる『エクソシスト』と同じ話、これぞリアル『エクソシスト』! …と思っていたら町山智弘氏も「『サーティーン』を観ると『エクソシスト』がよくわかる。」と指摘されておりましたので詳しくはそちらをどうぞ。
閑話休題。映画は13歳・少女ニッキー・リードの転落人生実話にもとづいているそうで、監督のキャサリン・ハードウィックは少女ニッキーとともにこの映画の脚本を練り、その過程で少女ニッキーは更正、この映画では主演をつとめているのであった。しかもニッキーが演じるのは、主人公トレイシーではなく、悪の道にひきずりこむ天然悪女イーヴィの方、というヒネリがなかなか素晴らしいですね。原作者自身が、悪魔キャラを演じるキレっぷり、相対化が、この作品を傑作にしているなぁ、と一人ごちました。
原作者が演じるイーヴィの悪魔キャラが最高、ナチュラル・ボーン・ビッチという感じ、大人どもを手玉に取って痛快でございます。
手玉に取られる大人はホリー・ハンター、デボラ・アンガー(『クラッシュ』とか)、わりかし豪華なキャスティング、おかげでティーンズものにありがちな安物の雰囲気まぬがれた感あり。演出・編集もテンポよろしく、西海岸ティーンズ風俗描写もおもしろく、手持ちカメラをぶいんぶいん振り回して色調めまぐるしく変わるのは疲れますけどオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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