「子供の情景」 [☆☆☆★★★]
2001年3月、アフガニスタンの中央部に位置するバーミヤンの巨大な古代石仏が、当時政権を掌握していたタリバンによって破壊され、その映像が世界中に配信された。同時に偶像崇拝や全ての娯楽を禁じるイスラム原理主義という“悪”の存在が世界中にに知られるきっかけともなった。そして同年の9月11日、ニューヨークの同時多発テロの首謀者である(とされる)アルカーイダの指導者ウサマ・ビン=ラーディンを匿っているのもタリバンであると世界中に伝えられ、そこからアメリカ軍によるアフガニスタン侵攻〜イラク戦争へと発展した。
私はこれらの事件は世界を舞台としたCIAプロデュースによる茶番劇だと思っているのです。
しかし、そういった事件の真相を知ることも重要ですが、私たちが本当に知るべきなのは、常に入れ代わってきた支配者に翻弄される貧しい国の庶民の暮らしの真実なのです。それもマスコミ報道から伝えられるように、アメリカ軍によるアフガニスタン侵攻のおかげで庶民は音楽を聴くこと、髭を剃ることが許されたとか、女性が顔を出せるようになったというような妙に明るく演出された一面ではなく、本当は何も変わっていない貧しい庶民の暮らしです。
撮影時は19歳だったというイラン人監督のハナ・マフマルバフ(バス・ガスバクハツみたいな名前ですが、父親は「カンダハール」のモフセン・マフマルバフ)はアフガニスタンの庶民の暮らしそのままを撮ったと言います。アフガニスタンの庶民の暮らしを知らない私にとっては、物語がどう展開するかまったく予想がつかなかったのは非常に情けないことでした。
可愛らしい主人公の女の子バクタイが戦争ごっこ(タリバンごっこ)をしている複数の少年たちから、初めて学校に行くために苦労して手に入れた大切なノートを奪われ、破られ、地面に深く掘られた穴に肩までスッポリと入れられます。この“遊び”がどこまで発展するのかが私には予測できなかったのです。少年たちは頭大の石を持ってバクタイを取り囲み「罪人め!石投げの刑(イスラム伝統の石打ち刑)だ」と言って顔を歪めながら構えます。バクタイは青鼻を垂らしながら(本当に!)泣いているのですが「まさかそれ以上はしないだろう」なんて安心して観ていられなくって何とも恐ろしい思いをしていた私でした。
破られてページが残り少なくなったノートを持って、やっと学校に辿り着くのですが、バクタイの勝手な初登校だったので当然教室には彼女の席がありません。それでもなんとか無理矢理、隙間に割り込もうと、またもや青鼻半泣き(これは演技なのか?)になるのですが、他の子たちも絶対に入れまいと必死です。
戦争ごっこや教室での出来事の行方は別として、子供たちが持つ残忍性や、いつの間にか身に付いてしまった過酷な生存競争の意識は誰が与えたものなのか。20年後、30年後、50年後、この子たちにとっての未来のアフガニスタンはやはり決して明るいものではないような気がするのです。
私がこの世に生まれてからごく最近までもベトナム戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン〜イラク戦争があり、小さな報道の戦争も加えたら相当な数に及ぶと思われます。それを動物的な本能だとか、人類にとっての必要悪だとか言うおかしな人もいますが、ならば行きたくもないのに徴兵されたり、首謀者が最前線に立たないのは実におかしなことです。戦争反対!
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