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2009年02月17日(Tue)

「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 ☆☆☆☆☆

Text by Matsuyama
お、お父さん…。
うわっ、でたっ!言うと思ったよそれ。確かに年齢差で言えばこのくらいかもしれないけど、ボクは一昨年の12月に生まれた“リアル・ベイビー”だよ!
そうだったな、単にオッサンくさいだけか。
それは写真うつりの問題だよ。ところでハリケーン・カトリーナはHAARPっていう地震・災害兵器の仕業らしいよ。
マ、マサユキ!ベンジャミンはベンジャミンでも、それを言ってるのはベンジャミン・フルフォードだ。

失礼しました。さて、私はこの映画を観る前に最近出版されたばかりの“ある小説”を読んでいました。私は「ベンジャミン・バトン」が発するメッセージを、その映画とはおよそ関係のないその小説の端々に見つけながら観ることができたのでした。けっきょく私がレビューを書くとすれば、その小説のアレンジになるだけなので、ここに一部を転載することに決めました。私はこういうことだと思ったのです。そして、そうやって観ていたことがおよそ偶然ではなかったことを観賞後に知ることとなったのでした。

これより転載文です

「僕は必然の中で生きたいんです〜何かを選び取り自分の力で作り上げていく人生が虚構だと分かった以上、僕は人生の場面場面で自分にとって不必要なものを切り捨てていく生き方を選択するしかない、未来にある理想の自己を目指して歩むのではなく、自己という現在状態をできるかぎり保存し、継続していく人生を歩んでいかなくてはならない。足し算ではなく引き算の人生です。必然の中で生きるというのはそういうことなんです。もうこれ以上自分に何かを上積みするのではなくて、余分な荷物をどんどん捨て去って、自分の本体ともいうべき核心部分だけを持ち続けていく〜」

「そんなに主体的に生きたり、新しい目標を定めて生きたりする必要はないんじゃないですか。人間はその場その場で自分にとって楽しかったり価値があると思うことを選んで生きていけばいいんだと思いますよ。たしかにカワバタさんのようにお若くてガンになるのはお気の毒ですし、大変だろう思います。でも、誰にしても死は恐ろしく、決して逃げることのできないものです。そうであるならば、いっそ死のことなど何も考えずに生きるべきを生き、いざ死ぬとなった最後の瞬間に思い切り嘆き悲しめばいいんじゃないでしょうか。いずれ飢え死にする身だとしても、毎日お茶漬けばかり食べているよりは飢餓状態に陥る直前までご馳走食べ放題の人生の方が幸福だと私は思います。どうせ最後はドブの中で死ぬとしても、ドブに足をつけるまでは大きくて立派な家で寝起きした方がいいでしょう。カワバタさんはそんなふうに思いませんか?」

「まったく思いませんね。そういう考え方は完全に間違っているし、いま世界中の人間が悩み苦しんでいるのはまさにそうした考え方のせいだと思います。僕は飢え死にもしたくないしドブの中でも死にたくないんです。せめてもう少しマシな死に方がしたい。そのためにはご馳走だらけの人生や豪壮な邸宅で暮すことを夢見て、人間同士が不毛な競争をしつづけることそれ自体を直ちにやめないと。先生の言うように自分自身の喜びばかりを追求する人間がはびこる世界は地獄ですよ。そして、この世界はどんどんそうなっています。誰もが豊かになることは不可能です。世界中の人たちが自動車に乗るようになればたちどころに石油資源が枯渇してしまう。そういう世界なんです。この世界を本当に平和で穏やかなものにしようとするならば、誰もが豊かになるのではなく誰もが貧しくなる以外に手はないのです。人の幸福の追求は、全体の幸福にまったく結びつきません。誰かが幸福になれば、その倍の人間が不幸になるのがこの世界のルールなんです。僕は、三度三度の食事をきちんととることができ、それなりの住居と生活用具とを確保した者たちは、さらに高い生活水準を望むのではなく全員が自分より貧しい人、困っている人のために私財をなげうつべきなのだろうと思います。たったそれだけのことでも、世界の悲惨さの半分は一瞬にして消滅するんじゃないですか。先生は知らず知らずのうちに自分が、どこか遠い国の見知らぬ貧しい人たちを踏みにじりながら生きているんじゃないかという恐怖をお持ちではないのですか? 現実はその通りなんですよ。僕ら先進国の人間たちが豊かになればなるほど貧しい者たちはより貧しくなっていく。僕は、ガン患者となった僕の人生において、そういうことはもはや必然ではないと考えているんです。だからといっていまの僕には一体何をどうすればいいか分からない。いや、ある程度は分かっているけれど確信が持てない。ただ、現在の仕事や生活、妻や娘との関係をそのまま続行していくことが必然ではないということだけは確かだと思っているんです」

以上「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」<上・下> (白石一文(著)/講談社/2009年1月26日発行)より転載

私は観賞後にパンフレットを購入して、そこに白石一文がレビューを寄せていることに驚いたのでした。パンフレット自体はどうってことないのですが、相変わらず。

Comments

投稿者 matsuo : 2009年02月19日 12:32

昨日ミタトコでございます。
転載の文章が、すごく気になるので、
また読みます。
ありがとございます!

投稿者 マツヤマ : 2009年02月21日 19:21

matsuo様

コメントありがとうございます。
映画は予告編通りのストーリーでしたが、その分ひじょうに深さを感じました。白石さんの小説とは関係ないと思いますが、シンクロする部分あると思いますよ。思い込みかな?

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