京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > レビュー >

サブメニュー

検索


月別の過去記事


2006年01月20日(Fri)

輪廻 ☆☆☆★★★

Text by BABA

 ようこそ、前世へ。ババーン! 『THE JUON 呪怨』、日本人監督として初めて、興行収入全米1位を記録する快挙をなした清水崇監督の新作、Jホラーシリーズ『予言』と『感染』さっぱりワヤだったので一瞬の危惧がよぎりましたが、『女優霊』あたりから始まる和製モダンホラー、最良の一本となりました。

 清水監督としても『THE JUON 呪怨』を米資本で製作、ヒットさせたことが自負・自信につながったのか、一気に巨匠的な悠揚せまらざるタッチ、これは素晴らしい! と一人ごちました。

『呪怨』シリーズは、エピソードの細切れ状態、ホラーな気分を盛り上げては落とし、落としては盛り上げ、の繰り返し、だんだんとホラー演出に慣れが生じて、後半は少々、つい、プッと吹き出すのが私の常、しかるにこの『輪廻』、冒頭は思わせぶりなホラーシーン細切れに示しつつ、一ヶのクライマックスに向かってすべてがなだれこんでいく、これこれ、ホラーはこうじゃなくっちゃ! 

 私の考える、ありうべきホラーとは、はじめチョロチョロ、なかパッパ、というか、少しずつホラー気分をちょろちょろ小出し、クライマックスはホラー乱れ打ち状態、観客が「もうたまらん!」とのたうち回って大笑いするまで盛り上げるべき、『エクソシスト』『シャイニング』『悪魔のはらわた』などが優れたホラー、その点この『輪廻』、なかなかにすぐれたホラーである。うむ。

 1970年群馬県のホテルで起こった、11人連続殺人事件の実録映画のメイキングを中心に、その事件、そして、ホテル廃墟に迷い込んだ優香が事件を追体験する…という筋立てが面白く、ちょっとしたどんでん返しもあって、良くできた脚本でございます。

 また『呪怨』シリーズ同様、ゆっくりとしたカメラの視点の移動でホラーな気分を盛り上げる演出に磨きがかかった感じ。ホテル廊下を優香が、何者かに脅えながら、足下をふらつかせながら移動していく、それをカメラが追いかけていく……一連の動作がたいへん気色よいのですが、それが、あるときは撮影のリハーサルのホテルのセットで、あるときは迷い込んだ過去のホテルで、あるときは異次元のホテルの廃墟で反復されます。

 ゆっくりとしたカメラの移動の気色よさ、ホテルが舞台、ということで『シャイニング』を参照しておりますが、フリッツ・ラング『死刑執行人もまた死す』も思い出したりしました。

 さらに、群馬県ホテルの和室の安っぽさ、ホテル周辺の町並みの中途半端にローカルな雰囲気が素晴らしく、それは『呪怨』シリーズの一戸建て住宅の微妙な感じと同じ。清水崇監督のオリジナルな美意識が感じられます。田舎の商店街を、ゾンビが徘徊するシーンなど実に美しいです。

 と、清水崇監督、一気に格が上がった、と思うのですが、残念なところもないではなく、まず、「輪廻」という超常現象の存在を前提にしたお話なのがひっかかります。黒沢清監督が大学教授に扮し、「この世には輪廻などという不思議なことは何もないのだよ」と講釈されますが、懐疑的な態度はそこだけ。『エクソシスト』『シャイニング』『悪魔のはらわた』に見られるように、徹底的なリアリズムの果てに真のホラーがある…と、私は思います。

 チャッキー風のお人形さんも、もっと可愛い顔の方がホラーかも? と思ったりもして、でもそんなことはどうでもよくてともかく! 優香が素晴らしい好演、ことに、最初の叫び声には心胆寒からしめられました。あんまり怖くないのでホラー苦手な方にもバチグンのオススメ。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

公式サイト
http://www.j-horror.com/rinne/

Comments

コメントしてください





※迷惑コメント防止のため、日本語全角の句読点(、。)、ひらがなを加えてください。お手数をおかけします。


※投稿ボタンの二度押しにご注意ください(少し、時間がかかります)。



ページトップ