ノロイ [☆☆☆☆]
すべては 本当に あったこと み ん な 死 ん だ。ババーン! ブラッド・ピット主演『トロイ』続編が早くも登場!! …ではなくて、『リング』『仄暗い水の底から』『呪怨』と、傑作日本ホラー映画数々プロデューサー・一瀬隆重が送る、これまたバチグンに画期的な傑作ホラーでございます。
私、ホラー映画は大好きなのですが、いかんせんホラーな感受性がすっかり鈍磨しており、最近は何を見てもさっぱり怖くないんで、ホラー映画の重要な価値基準「怖いかどうか?」を問われてもお答えしかねるのです。というか、この『ノロイ』、「ホラーな感覚」という点では、『リング』『震える舌』に劣ると思いますが、すこぶる面白い映画であることは確か、ぜひ予備知識なしでご鑑賞いただきたくオススメいたす所存であります。
さてネタバレですが、『コリン・マッケシジー もうひとりのグリフィス』(ピーター・ジャクソン監督)、『[FOCUS]』のような疑似ドキュメンタリー形式をとってまして、「怪奇実話作家・小林雅文が、失踪直前に完成させた実録ヴィデオ『ノロイ』(未発売)を検証する」という内容になっております。
ホラー映画で、超常現象にリアリティを持たせるには、「誰がそれを目撃しているか?」「カメラは誰の視点なのか?」をきっちり設定した方がよい、というのが私の適当な持論なのですが、というのも、幽霊や超能力は存在しないと私は確信するものですが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というか「イワシの頭も信心から」というか、人間の脳は錯誤しやすく、記憶も捏造(でつぞう)されがちなので、幽霊や超能力やUFOを目撃することは、普通にあると思う。ですので、人間の目やカメラを通せば、どんな不思議な現象もリアリティを持ち得る。
そんなわけですから、『ノロイ』の疑似ドキュメンタリー形式は、誰の視点なのか? 誰がカメラをかまえているのか? が常にハッキリしており、真実らしさを保ちつつ事実をねじまげるのにピッタリ。幽霊、超能力などのトンデモ現象を映画にするには最適の形式と申せましょう。
しかも、『ブレアウィッチ・プロジェクト』の例からもわかるように、安い製作費で大ヒットを飛ばせる、コストパフォーマンスにすぐれた形式、こういう「ホラー・ドキュメンタリー映画」、これからもドシドシ二番煎じ・三番煎じを製作していただきたい! というか、「小林雅文の怪奇実話シリーズ」を続々製作していただきたい! と、一人ごちたのでした。
まあ、『ブレアウィッチ・プロジェクト』の場合、私はさっぱり面白くなかったのですけど、この『ノロイ』は、「隣の家から、赤ん坊の泣き声(数名分)が聞こえる」「すさまじい透視能力を持つ少女」「テレヴィの取材で、女性タレントが錯乱」など無関係だったトンデモ現象を小林雅文が追っていくと、徐々に徐々に関連が見えてきて、ダム湖に沈んだ村の秘密につながっていく…あたりが、ちょっと諸星大二郎『妖怪ハンター』とか星野宣之『宗像教授伝奇考』とか岩明均『七夕の国』みたいな伝奇ロマンの雰囲気あり、なぜか、こういう話に強烈に惹かれてしまう私なのでした。
監督は、白石晃士監督(よく知りません)、いきなりドバーッ! ギャーッ!! グサーッ!! みたいなこけおどし演出は排され、ジワジワッと気色悪さがにじみ出る感じが素晴らしいです。また、「史上最強の霊能力者」の電波ぶりや、いきなり玄関から「なんでそんな言い方できるんだ!!」と飛びだしてくるオバハンはめちゃくちゃ怖くて、実際その場にいたら失禁確実、このへんの、予想を上まわっていく演出力は素晴らしい! と思いました。
実録ルポヴィデオ、テレヴィのロケ、テレヴィの特番、素人さんが撮ったヴィデオ、ホームヴィデオ、昔の16mmフィルム、…などなど、色んな素材が使われてそれぞれ、いかにもそれ風に仕上がっており、並々ならぬ才能を感じた私なのでした。
しかしまあなんというか、Jホラーの快進撃はとどまることを知らず。バチグンのオススメです。
☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)
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