最凶女装計画 [☆☆☆★★]
『最終絶叫計画』がなかなかどうして面白かったウェイアンズ兄弟新作は、全米大ヒットなれど日本では劇場未公開。レンタルDVDが出ましたので、とるものもとりあえず見てみました! ババーン!
と、いうのも今年2005年の米国アカデミー授賞式(その節はお世話になりました)、毒舌で知られるクリス・ロックが司会、「ハリウッドはアメリカの中で浮いてる存在と言われているけど、実際のところどうなのかな?」みたいなコーナーがありまして、「ではハーレムのマジック・ジョンソン・シアター(シネコン)で一般人にインタビューしてみました!」と、
CR(クリス・ロック)「『ミリオンダラー・ベイビー』見た?」
一般人「No!」
CR「『アビエイター』見た?」
一般人「No!」
CR「『ネバーランド』見た?」
一般人「ウソはつけないYO! No!」
アカデミー賞ノミネート作品に対して、一般人みなさん一様に「見たことない!」、しかし、
CR「『ホワイト・チックス』見た?」
一般人「Yes! オフ・コース!」
CR「『ホワイト・チックス』見た?」
一般人「Yes! 大好き!」
ある白人男性は、
CR「『ミリオンダラー・ベイビー』見た?」
白人男性「Yes」
CR「『アビエイター』見た?」
白人男性「Yes」
CR「『ホワイト・チックス』は?」
白人男性「Yes! 今年のベスト・ムーヴィーだ! 賞を取るべきだ!!」
…どうやら『ホワイト・チックス』という映画は、一般庶民に圧倒的にウケている様子、『ホワイト・チックス』見てみたいなぁ……と一人ごちていたところ、『最凶女装計画』というタイトルでめでたくDVD+ヴィデオ発売となったのであった。
ショーンとマーロンのウェイアンズ兄弟(黒人。脚本にも参加)扮するは、ドジでマヌケなFBI捜査官、今回の任務はセレブリティのウィルソン姉妹(白人です)の護衛だ! ババーン! ところが姉妹のお顔にキズをつけてしまって大ピンチ! こうなったらドーフスマン博士(誰?)を呼ぶしかない! と、博士ひきいる強力メイキャップチームによって姉妹ソックリに変身! セレブが大集合するパーティに潜入するのであった…、と、黒人がセレブ白人女性に変装・女装するという一発ギャグ的めちゃめちゃアホなアイデアが秀逸です。
なんでも当初、『ミルトン姉妹(The Miltons)』というタイトルだったそうで、でもあんまり「ヒルトン」と似ているのもどうか? と改題されたとのこと。ヒルトン姉妹を象徴とする米国セレブリティ社会の俗物ぶりを暴いて痛快です。
セレブ姉妹の中の人が黒人…って、どっから見ても怪し過ぎますが、姉妹のご友人は、「あら、ちょっと変わったわね……ひょっとしてコラーゲン効果!?」とか、身長がバスケ選手並に伸びてても「ヒザの手術で伸びたのよ!」といえば「まぁ素敵!」と納得してしまう脳たりんぶり。女装があやしければあやしいほど、セレブどもの阿呆さが強調されるのであった。このへんの、セレブリティというかブルジョアジーの俗物ぶり批判は、ちょっと昔のヨーロッパ映画っぽいかも? フェリーニ、パゾリーニ、ブニュエルあたりを彷彿とさせます。か?
「白人女をこましてやるぜ!」との情欲にとらわれた、筋肉ムキムキ黒人バスケ選手(テリー・クルーズ)が、ショーン・ウェイアンズをしつこく追いかけまくるのは『お熱いのがお好き』風ですが、全体に映画のパロディは少なめ、監督キーナン・アイヴォリー・ウェイアンズ+ウェイアンズ兄弟は新境地を開いたのではないでしょうか? ってよく知りません。
ギャグの数々は、アメリカ文化/黒人文化に詳しくない私にはよくわからないネタも多そうで、クライマックスのドタバタ後、「ジェリー・スプリンガー・ショウ?」なんてセリフも日本人・私にはいまいちピンとこなかったりしますが、セレブのダンス対決で女装ウェイアンズ兄弟が「YO! YO! こっちはオールドスクールだぜ!」とブレイクダンスで大ウケする…なんてシーンは素晴らしく面白かったです。
ファレリー兄弟ほどギャグの切れ味鋭くないと思いますけど、きっとハーレムで黒人観客に混じって観れば、大盛り上がりでめちゃくちゃ面白いはず! って感じでオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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