リンダリンダリンダ [☆☆☆★★]
女子高生がブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学生!! ババーン! 何だか『スイング・ガールズ』みたいな映画? と予想したところ肌合いまるで違ってまして、『スイング・ガールズ』的明るく楽しい東宝映画イメージに対し、『リンダリンダリンダ』は随分地味、だらっと倦怠感ただよう淡々としたタッチは相米慎二とかエドワード・ヤンみたいな印象、明朗快活コメディを期待すると肩すかしを食らうはず。
そんなことはどうでもよいのですが、まずバンドメンバー4人の演技のアンサンブル、キャスティングがお見事、『ローレライ』香椎唯(G)、『復讐者に憐れみを』ペ・ドゥナ(Vo)、『バトル・ロワイアル』前田亜季(Dr)、Base Ball Bearっつうバンド(よく知りません)本職ミュージシャン根史織(B)、キャラも作りすぎず自然体でリアルでございます。
高校生最後の文化祭、練習重ねてきたギャルバンのギタリスト指を骨折、中心メンバーのケイとリンコが大げんか、しかし、ケイは「バンドやる!」と残りのメンバーでバンド急造、ヴォーカルは、たまたま通りかかったソンさん、文化祭最終日の軽音コンサートに向け、4日間徹夜で練習しまくるのであった…というお話。
監督は『ばかのハコ船』『リアリズムの宿』『くりぃむレモン』(いずれも未見。残念!)山下敦弘、なかなかクールなタッチ、「文化祭最終日に向けバンドが猛練習」となると熱くて臭い物語が展開しそうなところ抑えに抑えて淡々と描いて気色よく、なぜにそこまでクール? かといえば、元メンバーのリンコから「そんなバンドで出ても意味ないよ」といわれてケイ「わかってるよ」とクールに答える、そういう己の行為の無意味さに自覚があるからでありましょう。か? メンバー間でもバンドの意味をめぐって議論がたたかわされることもなく、ただそこには「バンドをやりたい」という純粋な欲望が存在しているのであった。
「高校生がブルーハーツ」についても、「何やんの?」と問われてケイひとこと「ブルーハーツ」、問うた者は「いいじゃん」、たったそれだけ、「なぜブルーハーツなのか?」は問題にされず、なんでもいいんだけどとりあえずブルーハーツ? みたいな? その意味は観客のみなさんが勝手に考え与えてください、という感じ、思い入れ希薄なところもよろしいです。
そしてソンさん「バンドに誘ってくれてありがとう」、ケイ「バンドに加わってくれてありがとう」、お互い母国語で語りあってなぜかコミュニケーションが成立してしまう、それが奇跡とは気づかれない奇跡の瞬間がおとずれます。今回のプロジェクトの目的は無意味ですが、こういう瞬間・瞬間に、大きな意味=幸福があるのですなぁ、と私は茫然と感銘を受けたのでした。
ひょっとしたら、一生懸命練習したのがすべて水の泡となってお約束を裏切るか? と思わせつつクライマックス、禍福はあざなえる縄のごとし、すべてが良い方にころんでリンダリンダーッ! と大盛り上がり、いやー、バンド映画ってよいもんですね。思いつくところ列挙すれば『ザ・コミットメンツ』『すべてをあなたに』『バンドワゴン』『青春デンデケデケデケ』『スクール・オブ・ロック』『ハードロック・ハイジャック』など、そもそもバンド映画に傑作多し、この『リンダリンダリンダ』もまたバンド映画の傑作なのでありました。
ラスト、ほほえみあってうなずきあう、4人に言葉は要らない! 演奏のバックに閑散とした学校の風景が重ねられてわびしさ寂しさただよい、私は、嗚呼、この瞬間が永遠に続けばよいのに…と深く感動いたしました。バンド映画好きにバチグンのオススメです。
☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
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