読書・文学
ダーク
桐野夏生著『ダーク』を読む。これはいはゆる「村野ミロ」もののひとつで、主人公は勿論村野ミロである。しかし、いやはや、噂には聞いてゐたものの、なかなかに凄い。今までの『顔に降りかかる雨』『天使に見捨てられた夜』『ローズガーデン』『水の眠り 灰の夢』などの作品に出てきた人々がゾロゾロと出てくるのだが、これらの人々がみな恐ろしくダークに、ネガティブに、反転して描かれてゐるのである。
ウェブ進化論
話題になつてゐる『ウェブ進化論』梅田望夫(ちくま新書)を読む。著者は、日本人にはオプティミズム(楽天主義)と果敢な行動主義が足りない、とし、自らオプティミスティックにこの本を書いた、と述べてゐるが、確かにあまりに楽天的。といふか、そのあまりに初心で底の浅い世界理解を見てゐると、オプティミズムとは思考停止の事ではないのか、と文句のひとつも言ひたくなつてくる。かなり問題のある書だと思はれるので、僭越・非力ながら批判しておきたいと思ひます。
こぐこぐ自転車
朝から雨。それも激しい雨。今日はオパールに出勤する前にジムへ行く予定だつたのだけれど、あまりの雨の激しさに断念。「風が吹いたら遅刻して、雨が降つたらお休みで〜」とカメカメハの歌を口ずさんで自分の気持ちを納得させる。
代はりに、ババさんから借りた本『こぐこぐ自転車』を読む。この本の著者は伊藤礼。伊藤整の息子だといふ。と、言つても、もう大学教授を退職したお爺さんである。その伊藤礼が、古希を目前にしていきなり自転車に目覚めてしまひ、自転車をこぐこぐ。その様、その自転車体験から得た様々な感慨・知見を記したのがこの本である。そもそも私は、老人が老境に至つてからも何かを始める(無限成長!)、といふのが好きなので、最初から興味津々でこの本に取りかかつた。そしたら案の定、凄く面白かつた。といふ次第だ。
本の読み方
テルビスk来店。西村京太郎・赤川次郎・宗田理のトライアングルから抜け出すために、前回は何冊かの本を示した訳だが、なんとテルビスkはそれらを全て読んだといふ。結構偉いな、テルビスk。で、何が一番面白かつた?
急がば疑え!
日垣隆著『急がば疑え!』(日本実業出版社)を読む。これは週刊誌「エコノミスト」に連載してゐる「敢闘言」の単行本化作品である。
個人的発見
POWERくん来店。「この間、個人的な大発見をしたんですよ!」と興奮気味に言ふ。
ほう、それは、何?
「いやー、あんまり個人的なことなんで、他の人には面白くないと思ふんですけど」
いいからさ、何?
読書家テルビスK
ウメドン & テルビスK来店。おおッと! テルビスK、久しぶりだな。もう、来ないかと思つてゐたよ。いや、何にせよ、来てくれて嬉しい。いらッしやいませ。
「あ、どうもー…、お金も時間もなくてなかなか来られませんでしたー」
さうなのか。でも週休二日だらう? 週末は何をしてゐるんだ?
嫌オタク流
『嫌オタク流』中原昌也・高橋ヨシキ・海猫沢めろん・更科修一郎(大田出版)を読む。これは鼎談形式でオタクについてのアレコレを軽〜く流した本なのだが、とにかく面白い! ッて、いふか、中原昌也おもしろすぎ! 秋葉原のメイド喫茶を廻つて以来、オタクのあれこれについて暇をみつけては考へてきた私だが、いまひとつモヤモヤが晴れなかつた。それを見事に一散してくれる書。様々な事が一気に分かつてしまつた!!!
シュミラークル
大方の予想通り、我が家のiBook G4は未だにインターネットに接続されてゐない。やはり、どう考へてもISDNに対応してゐないんだよねー、と、いふ話を先日オイシンにしたら、「そんなの当たり前ですよ! 大体、未だにISDNを使つてゐる人間がゐる、といふのが驚きです!」と言はれてしまつた。ううむ、完全に切り捨て側の人間の発言だな、オイシン。仕方のない奴だ。ところでオイシン、『萌える男』が面白かつたのは分かつたけど、『動物化するポストモダン』東浩紀著(講談社現代新書)の方はどうだつたんだ?
数式の美しさ
小説『博士の愛した数式』を読んだので、猛烈に数学の本が読みたくなつた。これぐらゐの効用は、この小説にはあるといふ事だ。で、私は部屋の隅に無造作に積まれてゐる数学本の中から一冊抜き出して、読むことにした。『数学の不思議』カルヴィン・C・クロースン(青土社)。5、6年前に買つた本かな。この機会を逃すと、また10年ぐらゐ積まれッぱなしになる怖れがあるからな。気分の乗つてゐるうちに、気合ひをいれてページを捲つた。
小説『博士の愛した数式』
小説『博士の愛した数式』小川洋子著を読む。いや、ま、なかなか面白かった。もの凄く面白い訳ではないが、ほんわかじんわりとくる感じ。映画を先に観てゐるので、それとの異同を較べるといふ楽しみもあるし。たとへば、映画版と違つて博士は実際の野球を観たことがない、つまり打率や防御率などの数字からのみ野球を楽しんでゐた、とか、オイラーの公式の使ひ方とか(小説の方が劇的で面白い)、9月11日といふ日付の運命的な扱ひとか。
“萌える男”続き
昨日の続き。この本を読んでゐて、まづ気になるのが、その歴史認識・現状認識のあまりに観念的なところだ。“恋愛資本主義”とは、ネーミングはなかなか面白いけれど、それほど内実があるものとは思へない。
萌える男
本田透著『萌える男』(ちくま新書)を読む。これは自身もオタクで“萌える男”である著者が、“萌え”とはどういふ事か、といふのを説明しやうと試みた本である。先日読んだ東浩紀「動物化するポストモダン」と、“萌え”に関する定義がまるで正反対で、さういつた事もなかなかに興味深かつた。が、最初に私の結論を述べると、この『萌える男』の立論は全く納得できない。歴史・現状認識が非常に観念的で、故に議論が恣意的になり、過剰な自己正当化と手前味噌な結論に満ちてゐると思ふ。ま、それがオタク的、と言へばその通りなのだけれど。
WB2
雑誌「早稲田文学」がフリーペーパーと化した「WB」の2号が出た。別に宣伝を頼まれてゐる訳ではないが、今回から可能涼介の連載が始まつたので、ま、竹馬の友としてはチョイと触れておくか、といつた次第。
杉浦日向子
ワリイシさん来店。「これ面白かつたから、もし読んでゐなかつたら是非。どぜうの話も出てきますよ」と言つて、『大江戸美味草紙』杉浦日向子著(新潮文庫)を貸してくれる。
容疑者Xの献身
東野圭吾著『容疑者Xの献身』(文藝春秋)を読む。これは昨年のミステリー界の話題を独占した作品。なんと「このミス」と「週刊文春」のミステリーベスト10でどちらも1位に選ばれたのである。他にも、私はよく知らない有名なベスト10で1位をとつたやうで、三冠王! と騒がれてゐる。ふむ、そんなんなら一度読んでみたいなー、と考へてゐたら、テラリーが持つてゐたので借りて読んだのであつた。
告白
町田康著『告白』を読了。各所で絶賛されてゐる模様のこの小説。もちろん、といふか、私も非常に面白く読みました。
日記の公開
可能涼介来店。「先日さァ、NHKで山風(ヤマフウ)の特集番組をやつてゐたんだよ」と言ふ。
さういへば、最近可能は山田風太郎の全冊読み直し、といふのをやつてゐたのであつた。90冊に満たないくらゐ、かな。それを2、3ヶ月で読み直す、といふ。その前は松本清張の全冊読み直し、といふのもやつてゐて、こちらは200冊に満たないくらゐだと言つてゐたから大変だ。にしても、よーやるよ、そんな事。
WB
可能涼介来店。「これ、置いて下さいよ」と言ひながらドサッと渡されたのが「WB」といふ名のフリーペーパーの束。あ、これが前に言つてゐた「早稲田文学」のフリーペーパー化したやつだな。なるほど、「早稲田文学」だから「WB」か。
東京奇譚集
村上春樹著『東京奇譚集』(新潮社)を読む。『海辺のカフカ』以来、私の中では村上春樹の評価が上がり続けてゐるが、まァ、そこそこ面白かつた『アフターダーク』を経ての最新短編集であるこの作品。これがまた! とてつもなく面白い作品集であつた。特に冒頭の『偶然の旅人』と次の『ハナレイ・ベイ』、この2作品が凄い。最近日本で書かれた短編の中では最高峰ではないか、などと、他の作品などろくに読んでゐないのを棚にあげて考へたりするほどだ。
沖縄論
小林よしのり著『沖縄論』(小学館)を読む。最近は一寸、小林よしのりを読んでゐなかつたのだけれど(まァ、何て言ふか、もう分かつたやうな気になつてね、言ひたい事とかさ)、この本はババさんが「面白いので是非読んで下さい! 瀬長亀次郎最高!!」と言つて貸してくれたので、読んでみたのである。そして、大いに感銘を受けた。やつぱ、小林よしのりッて、偉いわー。
「秘密結社」と陰謀論
越智道雄著『秘密結社』(ビジネス社)を読了。考へた事を記す。越智道雄はアメリカ文化について多くの著作を書いてをり、特に陰謀論や原理主義運動、人種・階層間の文化摩擦などについての論考が多く、昔から好きでよく読んでゐた。が、薄々と“この著者と私は拠つて立つ所が違ふな”と前から感じてもゐたのだが、それがこの本でハッキリした。越智道雄はエリート層・体制知識人側に立つ人間であり、私はその逆、なのである。この事を説明しやう。
野球=ノボル?
私は2003年6月9日の日記で、“野球”といふ訳語を作つたのは正岡子規、それも自分の本名のノボルをあてて“野(ノ)球(ボール)”とした、などと得々と記してゐるが、これはどうやら間違ひであつたやうだ。“野球”といふ訳語を作つたのは、本当は第一高等中学校野球部部員の中馬庚といふ人らしい。実際、中馬庚は、訳語を作つた功績により、1970年の野球殿堂入りを果たしてゐるさうだ。うーむ、さうだつたのか。ちなみに、正岡子規が野球と関はりが深かつたのは事実らしく、彼も2002年に野球殿堂入りしてゐる。「ノボル=野球」といふのも根拠のない話でもなく、実は彼は俳号のひとつとして“野球”と名乗つてゐたらしいのだ。私の俳号“煙草(えんさう)”に似てゐる、かな? とにかく、子規は野球大好きで、もちろん野球に関する俳句も多く詠んでゐる。「草茂みベースボールの道白し」など。当時はまだ一般的でなかつた野球の普及に大いに貢献した、といふのが殿堂入りの理由らしい。なるほど、ねー。
海辺のカフカ
村上春樹著『海辺のカフカ』を読了した。何で今頃? と思はれる方もをられるかもしれませんが、ほら、文庫本が出たんですよ、この春に。私はあまり村上春樹が好きぢやないので、出版と同時に飛びつく、といふ事がなかつたのです。当時、周りでは大騒ぎになつてゐましたけどね。ババさんが思はずレビューを書いてしまつたり、しばらく来なかつたリカさんが来店して「『海辺のカフカ』の世界に引きずり込まれて、ここ最近は現実世界から逸脱してゐました」と告白したり。で、よし、それなら文庫本が出たら私も買つて読まうー、とその時に決心し、律儀にそれを実行に移した、といふ訳です。うむ。そして、驚いた。こ、これは大傑作ではないかァ!!!
平岡篤頼氏逝去
可能涼介来店。塚本邦雄も倉橋由美子も死んでしまつたなー、といふ話をしてゐると、