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 Movie Review 2005年3月4日(Fri.)

THE JUON 呪怨

公式サイト: http://www.thejuon.com/

 死んでも逃げられない。ガーン! オパール店主氏は[恐い映画]が苦手のようですが、感情移入能力が不足気味の私は、割と得意、というか、「映画を見て、恐い思いをする」のが大好き! しかし映画は、私をなかなか怖がらせてくれない!

 日本版『呪怨』はビデオ版1・2、映画版1・2と計4本、最初に見た映画版『1』には、結構な恐怖を催しましたが、同趣向の怖がらせ方を4本見てしまうとすっかり免疫ができてしまい、今回もとりあえず見ておくか! くらいの軽い気持ちで鑑賞に臨んだところ、なんと! アメリカ版リメイクなのに基本設定・舞台設定は日本版と同じ、異なるのは、[呪いの家]に住まうのがアメリカ人というところ、そのおかげで日本版と別種の面白さが生まれていて、いたく感動したのでした。

 なんでもアメリカでは日本人監督初、2週連続1位の大ヒットを飛ばしたそうで、この、[アメリカで大ヒットした]というところにまず面白さ・痛快さを感じるのでございます。

 さて、「呪怨」とは、ジュディ・オングの中国語名…ではなくて、お話は、ネタバレですけど、陰惨な過去のある貸家に近づいた者は、みな呪われてしまう…というもの。

 この貸家、『呪怨』という映画・ヴィデオのネタになってしまったものですから、日本人はさすがに誰も住みたがらず、一計を案じた不動産屋さん、なんとなんと! アメリカ人に貸してしまうのであった!

 …うーむ、なんちゅうひどい不動産屋か! と義憤にかられつつも、世界の大迷惑者ナンバーワンのアメリカ、引っ越してきたアメリカ人一家に罪はないとはいえ、おなじみわれらの俊夫くん+伽椰子さんが、アメリカ人どもをビビらしまくってすこぶる痛快! 溜飲を下げたのでした。

 この映画、きっと、米軍占領下イラクで公開してもヒットを飛ばすのではないでしょうか。イラン、リビア、フランスなど反米感情旺盛な国ならどこでもヒットするでしょうし、こりゃアメリカにとどまらず、全世界規模での超特大ヒット、場外大ホームランになる可能性を秘めております。

 アラブの人々は、俊夫くん+伽椰子さんに「ゴー! ゴー! トシオ! ゴー! ゴー! カヤコ! ヤンキーを怖がらせまくれ! インシャラー」と拍手喝采を送るはずです。

 そんな妄想はどうでもよくて閑話休題。アメリカでもヒットしたというのが味噌、この頃『ラスト・サムライ』『ロスト・イン・トランスレーション』など、「アメリカ人は日本とどうつきあうべきか?」みたいな映画が続々作られております。

『ラスト・サムライ』は「郷に入れば郷に従え」、『ロスト・イン・トランスレーション』は「郷に入って郷に従えないなら、ホテルに閉じこもってなさい」、そしてこの『THE JUON 呪怨』、「郷に入ったら、どいつもこいつも呪ってやる!」という教訓を描いており、俊夫くん+伽椰子さんは、「極東の、まじないが支配する蛮族の島」=日本を代表する日本人として、アメリカ人に不条理・理不尽な恐怖を執拗に与え続けるのであった。

 この映画がアメリカでヒットしたのは、西洋合理主義+グローバリズムで「世界中どこでもコントロールできる」と自負するアメリカ人の胸中に、「ひょっとしたら、そうでもないかも…?」との疑念が芽生えたことの証でしょう。アメリカ人は俊夫くん+伽椰子さんに、何度たたきつぶしても、よみがえってくる日本経済の不気味さを見ているのかも知れない…。

 それはともかく、なんでも英語でリメイクしてしまうグローバリズムを逆手に取って、アンチ・グローバリズム映画を作り上げた清水崇、偉い! …のかもしれません。清水崇に、最大限好きなように撮らせた製作サム・ライミも偉い!

 同じタッチの似たような作品を飽きずに作り続ける清水崇監督は、[21世紀の小津安二郎]と言ってもよいかもしれませんね。…どちらも[家族]の物語ですし。この調子で続々、同趣向の作品を作り続けていただきたいものです。これまで『呪怨』シリーズ見たことない人には、素晴らしく恐い映画でしょうし、『呪怨』シリーズをずっと見てきた人は、違った趣向をお楽しみいただけるかと存じますのでオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2005-Mar-3;