『THE JUON』の続き
昨日の続き。私とヤマネくんのふたりは、とにかく恐怖の衝撃を弱めやうと、居酒屋「天狗」に行き、『THE JUON』を徹底的に分析しつくす事にした。恐怖を消すには、それを分析するに如くはない。
「やはりねー、外人が日本にやつて来て怖い目に会ふ、といふ設定が秀逸だつたと思ふんです。なんか怖い目に会つても、うまく言葉が通じない、助けを呼べない、といふ恐怖。読めない字、異質な習慣を持つ人々に囲まれる、日常的な恐怖、といふかストレス。かういふのが、うまく恐怖の効果をあげてゐたと思ひますね。」
さうだね。呪怨の原因がDVと幼児虐待にある、といふのも効いてゐたんだらうな。やはり恐怖といふのは、その時代の持つ無意識と通底するものだし。あ、あとストーカーか。DVと幼児虐待とストーカーは、現代の(日米における)病だな。どれもこれも、近代・個人主義の行き詰まり故の病、といふことだ、うむ。
「あれはどうなんです? ほら、ケンタロウさんお得意の政治分析。やつて下さいよ。この映画はグローバリズムの観点からはどうなんですか?」
ううーむそれは……わ、分からん!
しかし、それは不可能な事ではなかつた。オパールに行き、来店してゐたババさんに『THE JUON』の事を話すと、見事な政治分析を披露してくれたのである。
「あれはアメリカ人が未開の地、この場合は日本にやつて来て酷い目に会ふ、といふのが肝なんです。つまり立派なアンチグローバリズム映画です。ヤンキー、ゴーホーム! アメリカ人は他国にやつて来てゴチャゴチャするんぢやなく、自国の事だけやつとけ! さうしないと、怖い目に会ふよー、といふ映画なんです。ボクはもう、アメリカ人が酷い目に会ふのが面白くて仕方がなかつたですけどね。あの幽霊の親子をメッチャ応援してしまひましたよ。いやー、痛快、痛快!」
なるほど。この映画を見せれば、外資の侵略も止むかもしれませんねー。
「日本ももつと上手に映画を使ふべきです。いつまでもハリウッドの世界戦略にやられてゐてはいけません」
確かに。清水崇監督、立派な愛国者なのかもしれません。
小川顕太郎 Original: 2005-Feb-28;