魔界転生
山田風太郎の原作を、再び映画化。1981 年の深作欣二版は封切りで見たのですけど、その頃私は、深作欣二監督とは、『宇宙からのメッセージ』『柳生一族の陰謀』『復活の日』と、割とどうでもいい、大味な大作を撮る監督として認識しており、81 年版『魔界転生』もほとんど憶えておりません。ってか、その後『いつかギラギラする日』で「深作監督って、なんか凄いかも!」と蒙を啓かれ、そうなりますと 81 年版を思い返せば、
- 天草四郎=沢田研二
- 柳生十兵衛=千葉真一
- 宝蔵院胤舜=室田日出男
- 宮本武蔵=緒形拳
- 柳生但馬守=若山富三郎
…と、ワクワクのキャスティングで、充分面白く見ることができるのではないか? 特に 2003 年版を見てしまった今となっては、と思うのであります。
山田風太郎の原作は読んでおりませんが、天草四郎の妖術によって歴史上の剣豪が甦り、幕府転覆を企む、迎え撃つは柳生十兵衛! ババーン! って、素直に普通に撮れば面白くなる題材であり、ポイントは、剣豪をいかにキッチリ剣豪として描くか? という点にあると思うのですよ。
ところが、今回の再映画化では、
- 天草四郎=窪塚洋介
- 柳生十兵衛=佐藤浩市
- 宝蔵院胤舜=古田新太
- 宮本武蔵=長塚京三
- 柳生但馬守=中村嘉葎雄
- 荒木又右衛門=加藤雅也
…って、なんかみんなもの凄く弱そうなんですよね。剣豪が普通のお侍さんにしか見えないしー、ってか、侍にすら見えない。主役・佐藤浩市は、やっぱりリゲイン飲んでるサラリーマンのイメージが強い。ネタバレですけど、徳川家康も登場するのですが、全然、家康に見えない。転生した瞬間、観客に「ああ、このヨボヨボのお爺さんは家康なんだな」と卒然と納得させるために、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」と一句ひねってみせる、など、サービス精神が必要だと思うのですよ。歴史上の剣豪を、現代人が共感できるキャラとして描く、ということなのかも知れませんが、それなら『魔界転生』でなくてもいいのでは? むしろ、剣豪の剣豪ぶりを誇張気味に描いた方がよい。一瞬、ワイヤーアクションが登場し、おお、これは! と思ったのですが、一瞬でした。
監督は、『愛を乞う人』の平山秀幸(こっそり応援しております)で、何か、徳川幕藩体制が確立されつつある流れに逆らう者たちの生き様を見よ、みたいな描き方で、いや別にそれでいいのですけど、『グリーン・デスティニー』みたいな活劇が見たかったです、とか。
そんなことはどうでもよく、オープニングの島原の乱を始め、映像はなかなかカッコいいし、音楽も壮大な雰囲気でグー。麻生久美子は、『ラストシーン』に続きバチグンの好演、なのでオススメです。
☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)
BABA Original: 2003-May-16;- 関連記事
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「魔界転生」