国境越え(その2) [生活]
円高の進行と同時に、ガソリンの価格も急落しています。少し前には為替レートが1ユーロ=160円で、ガソリンの値段が1.5ユーロ/lでしたので、円に直せば\240/lとまあ、泣く子も黙るような高さでした。しかし今やガソリンの価格は\140/lです。こんなに急激な変化について行けるのか! 自分は! と、食事をしながら自問自答している日々です。ズッキーニ入りカレーはバチウマですね。
南仏とイタリアを結ぶ高速道路のイタリア側に設けられたチケット発行ゲートにて。交通もまばらで寂しい、夜の11時です。キキーっと車を駐めて通行券を取り、ゲートが静かに開いた途端、目の前に止まれの棒を持った警察官Aが。その背後には数人の警察官B~Eがたむろしているのを確認。
警察官A 「はい停まって」
私 「こんばんわ」
警察官A 「免許証を見せて」
なかなか厳しそうな感じです。
私 「はい、どうぞ」
落ち着いて国際免許証を提示しました。これだけで行かせてくれたら楽なのですが。
警察官A 「じゃあ、車を少し動かしてあそこに停車させて」
ああ、残念。本格的に検査するというのでしょうか。助手席に座っていた私の友人に目を遣ると、心なしか不安そうでした。
警察官A 「何してるの?」
私 「旅行ですけど」
警察官A 「どこから来たの?」
私 「ニースです」
と、そこに警察官Bが参加。私たちがアジア人であることを見て取ったのか「パスポート・プリーズ」 と英語で話しかけて来ました。私がパスポートを差し出しながらイタリア語で返事をすると、「なんだイタリア語が話せるのか!」 と言いました。
他方、警察官Aはパスポートを捲りながら、
「ビザビザビザ…」と、査証が貼り付けてある頁を探し、日付を確認。
警察官A「ん? これ、切れてるじゃない」
ビザが切れているということは、イタリアに入れないということに他ならないのですが、この場合は私が悪いのではなく、イタリアの役所が正常に機能していないために滞在許可証がいつまで経ってももらえないから、という事情によるのです。
私 「切れてるけど、滞在許可証が到着するのを待ってるんです」
警察官A 「あ、そう」
どうやら事情が分かっている警察官のようです。いいぞ、警察官Aちゃん。
警察官A 「車検証は?」
私 「はい、どうぞ」
警察官A 「後ろの彼女は?」
私 「僕の奥さんですけど」
警察官A 「隣の人は?」
私 「彼は日本から来た友達です。一緒に南仏旅行と洒落込んだんです」
警察官A 「彼の身分証は?」
私は友人に、警察官がパスポートを確認したいそうだと言いました。彼は探し始めたのですが、なかなか見つかりません。トランクを開けて旅行鞄を開けてゴソゴソやっているのですが、それでも出てきません。なんだかとても焦っているみたいです。そりゃ、夜中の11時に高速道路で警察官に止められたら誰だって緊張します。「やっぱりこっちの鞄かな」と彼はトランクから助手席まで走って来て、必死に探しています。
警察官B 「落ち着いて落ち着いて!」
ようやく見つかったようです。どうぞ、とそれを手渡すと、
警察官A 「彼、ビザは持っているだろうね」
私 「何の? 彼は旅行者ですよ?」
日本人であれば、90日以内の観光であればビザが不要なのですが、警察官Aは知らないみたいです。
警察官A 「えーと何だったっけ。そう、旅行ビザだよ、旅行ビザ。旅行するなら旅行ビザが必要に決まってるじゃないか」
ぶつぶつ言いながら彼は他の警察官B~Eのところに歩いていきました。KKちゃんの書類は全く要求せず。宜しいのでしょうか。
30秒後。警察官A~Eがゾロゾロと車に向かってやってきました。
警察官C 「日本人ですか」
私 「そうです」
警察官D 「いいね! 日本!」
警察官E 「で、KONBANWA、ってどういう意味?」
私 「Buona sera(こんばんわ)、という意味です」
警察官B 「そうだ! KONBANWAはBuona seraという意味だ!」
警察官A 「じゃ、Arrivederci(さようなら)は日本語でどう言う?」
私 「それはSAYONARAって言うんですよ」
警察官D 「SAYONARA!」
警察官A 「SAYONARA!」
警察官C 「じゃ、KONNICHIWA、って何?」
私 「それはBuon giornoとかCiao(こんにちは)です」
警察官A、B、C、D、E 「KONNICHIWA!」
警察官C 「ところで日本のどこから来たの?」
私 「京都ですけど」
警察官D 「KIOTO! いいねえ!」
警察官C 「僕の友達に大阪出身の日本人の女の子がいてね。イタリア人と結婚してこの辺に住んでるんだよ!」
私 「この近くに?」
警察官C 「そう、ここからすぐそこなんだ!」
警察官A 「じゃ、書類を返します。免許証とパスポートと車検証と。それから彼のパスポートも。これで全部だね」
KKちゃんのチェックはないのかいな。っと思った瞬間、後部座席に座っていた彼女がやおら窓を開けました。ウイーン。
KKちゃん 「Buon Lavoro!(お仕事がんばってね!)」
警察官A、B、C、D、E 「Grazie!」
イタリアの国境は優秀な警察官により、堅固に守られています。ご安心下さい。
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