京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 99 > 0910
Movie Review 1999・9月10日(FRI.)

ムーンライト・ドライブ

 …とはよくわからない題名であるが原題は「Clay Pegeons」。とはなんぞや。射撃の的となる粘土で出来た鳩のことらしい。なるほど。よくわからないって? 見ればわかる。自分の目で確かめてほしい。

 タランティーノ、ウォシャウスキ兄弟、かのキューブリックなど監督デヴューがフィルム・ノワール、というものが多いが、これもその一つ。舞台が限定され、俳優も少人数で済む、ということで予算をあまりかけずに作ることができるが、才能がないとどうしようもない、ということで重宝されるジャンルであろう。今回は、あるモノがネタをバラしていることをバラしているのでご注意(…って、何のことかわからんな)

 ホアキン・フェニックス演じるアメリカは中西部の田舎モンが悪夢のようなシチュエーションに巻き込まれて…というお話で…ちょ、ちょっと待ちたまえ、この映画の宣伝コピーはネタを思いっきりバラしているぢゃあないか! アホか。ひるがえって英語版のコピーは「レスター・ロングは友だちを忘れない」ってだけで、これは意味深でよろしい。

 近頃は予告編、テレヴィ・スポットなどでバンバンおいしいネタをバラしまくるという悪夢のような状況で「作り手が仕掛けたサプライズの秘密は死んでも守る」という美徳が完全に失われたようだが、宣伝コピーでバラすとはええ度胸してるやんけ。予告編の時は耳をふさいで眼をつぶり、テレヴィは見ない、ラジオも聴かない、雑誌も見ない、この上にポスター・チラシすら見ることができないとは。不条理。

「広告は私たちに微笑みかける死体」――とっくにその機能を失っていることに気づかず、エヘラエヘラと媚びを売るモノ――とはベネトンの広告ディレクターの至言であるが、この映画の広告は、まことに気色の悪いもので、まさしく、という感じ。

 しかも『8 mm』でもいい味出してたホアキンの堂々の主演作で、なかなか笑かしてくれているのに、物語においては『第三の男』のオーソン・ウェルズ的脇役のヴィンス・ヴォーンを前面に押し出した宣伝の仕方は余りにもホアキンが可哀想だし、この映画の性格を歪めて伝えるものだ。アホか。パンフも川勝正幸、滝本誠という超豪華執筆陣で、この映画は結構おもしろかったのに、むちゃくちゃつまらん映画に思えてくるぢゃあないか、と独りごちた。ひどいわ。シネマライズのパンフは毎回、映画にちなんだ(?)料理のレシピを載せてくれているのだが、こんなもん誰が喜ぶのだ。嫌がらせか? 配給はプレノンアッシュ。

 話を元に戻そう。とか言ってホントは宣伝戦略が死ぬほどタコだっちゅうことが言いたかったんだけどね。フィルム・ノワールなれど音楽がジョン・ルーリーでとぼけた味わいが漂い、たいそうよろしい。あ、『ロミーとミッシェルの場合』でちょっとパンクな女の子を演じたジャニーヌ・ギャロファロが FBI 捜査官を演じてます。映画館に見に行く場合は、座席に座り映画が始まるまで何も見てはいけません。

BABA Original: 1999-Sep-10;

レビュー目次

Amazon.co.jp アソシエイト