秘密
90 年代を代表する傑作(と思っているはボクだけ?)『シャ乱 Q 演歌の花道』の滝田洋二郎監督、斉藤洋脚本。
若干ネタを紹介させていただくと、バス転落事故で岸本加世子扮する母親の魂が、広末凉子扮する娘にのり移る。旦那は小林薫。身体は娘なんだけど心は妻、という広末凉子との奇妙な夫婦生活を描く。家庭内では夫婦、対外的には親子、ということで「あの父娘、なーんか、あるのよね」ってことだ。
さすがは滝田+斉藤コンビで、クライマックスまで哄笑することしきり。後ろの方で、最初はベチャクチャ文句をたれていたアヴェックも、中盤からはギャハギャハ笑い出したからコメディとしては成功の部類かな。
心は 40 歳の高校生を演じる広末凉子が良い。『20 世紀ノスタルジア』はなんともボンクラなお話ではあるが散歩しながら歌う広末凉子が実に気持ち良く、密かに高峰秀子の再来か? と思っていたのだが、この映画でも良い。ガンガン映画に出ていただきたいものである。小林薫もひょうひょうとした感じで実に笑かしてくれます。
滝田洋二郎という監督は、笑いがアナーキーなものであるのにいくつかの作品では結論が愛だの人生のいきがいだのつまらないところでまとめられる傾向がある。最後までアナーキーさをつらぬいた『コミック雑誌なんかいらない』『シャ乱 Q 演歌の花道』は傑作となりえたが、『お受験』『病院へ行こう 1・2』なんかは少し物足りないところがある。といってもボクにとっては新作が最も楽しみな監督であるし、昨今の日本映画界にあってコンスタントに新作を作っているのは滝田洋二郎と金子修介だけ、だと思うのだが、映画を連続して作り続けることによって得られるグルーヴ感というものがあるのだ。
この作品はどうかというと前半は、もう、永久にこの映画が続いてほしいって気持ちでいっぱいのおもしろさなんだが、クライマックスで決定的に美意識が欠如したワンカットがあり、もうガクっ! てなもんです。結局は夫婦愛、家族愛のようなところで話をまとめてしまい、「惜しい」ってところか。また、魂の憑依という現象に関する説明で、「心は40歳の妻だけど、脳は高校生だから…」ウンヌンというセリフがあるが、これって余りにもバカっぽくないか?
しかしながら広末凉子と小林薫の夫婦が素晴らしいし、結構盛り上がるシーンもあるから、オススメである。同じキャスト、スタッフで、今度はぜひ「奥様は 18 歳」のリメイクを作ってください。お願いします。
BABA Original: 1999-Jan-04;