Book Review 1999・8月5日(THU.)
ニッポンの舞台裏」
吉田 司(洋泉社)
常にタブーに挑戦するルポを続ける著者の新刊。色々な雑誌に書いた短めのルポを集めたものなので全体的に軽め。が、安室奈美恵を沖縄に根強く残る混血差別から読み解いたりと、刺激的なルポはあいかわらずだ。
私が共感したのは吉田の日本に対する現状認識である。それを私なりの言葉も交えつつ説明するとこうだ。日本は今、第二の敗戦のただなかにいる。第一の敗戦は 1945 年 8 月に経験した。敗戦後、日本は変わったかというとさにあらず。戦争中に作られた戦時統制経済制度はそのまま残り、軍事力を奪われた日本は挙国一致の総動員体制で経済戦争に突入した。人々はみな会社=国家のために身を犠牲にして働き、カミカゼ特攻を繰り返し、過労死を重ねながらも、ついに 80 年代には念願の大東亜共栄圏=アジア円高共栄圏を作り上げた。かにみえたのだが、ヘッジファンドという原爆を抱えたアメリカを筆頭とする連合軍にみごと逆襲され、アジア経済は壊滅、日本も長期の不況に苦しまされながらも毎年金をむしり獲られ続けている。つまり日本は軍事にひき続き経済の戦争にも負けたのだ。
いや、まだまだだ。これから日本経済の逆襲が始まる、というのが副島の主張だが、どちらにせよ今現在は敗戦状態だという点では一致している。石原のように感情的な反米右翼にならず、まずは冷静にこの苦い現状認識をかみしめること。そこから全ては始まるだろう。
オガケン Original: 1999-Aug-05;