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 Movie Review 2005年3月17日(Thu.)

アレキサンダー

 2300年の時を経て、今明かされる史上最大のミステリー。ババーン!

 さて、いったい何が明かされたかと申しますと、いきなりネタバレ恐縮ですが、なんと! アレキサンダー大王は[金髪]だった! さらに驚きのつるべうち、開いた口がふさがらないのは、なんとなんとなんと! ア大王は[英語]をしゃべっていた! びっくら仰天です。

 オリヴァー監督は子供の頃よりア大王にあこがれ、その生涯を映画化するのが長年の夢、90年代より準備を進め、古代史の権威にも考証してもらったそうで、今回提示される「ア大王は金髪で英語をしゃべっていた」説も、綿密なリサーチの結果であることは疑いようがなく、まったくもって斬新奇抜な珍説、私は劇場の椅子からずり落ちそうになる衝撃を味わったのでした。

 ア大王を演じるコリン・ファレルは黒髪を脱色するという、身体改造してまでの見事な役作りです。髪は金髪なのに、眉やヒゲが黒っぽい異様さ、これは上田馬ノ助をモデルにしたと思われますが、なんだかよくわからないことになっております。史上最大のミステリー。

 と、いうか、物語が進むにつれ、なぜ、ア大王が金髪で英語スピーカーなのか? が卒然と了解できます。

 ア大王は恐いお母さん(アンジェリーナ・ジョリー)から、逃れるように東邦へ大遠征、「自由を広めるため」「民族解放のため」などとおっしゃられる。部下たちは長引く遠征に嫌気がさしておりますが、ア大王ただ一人、「いやいや、まだまだ先に進むのだ!」と無理矢理、戦闘に明けくれます。

 つまりオリヴァー監督、「ア大王を描く」と言っておきながら、結局は[現在のアメリカ]を描いてしまっているわけで、なるほど[金髪]で[英語スピーカー]でなければならないはずでございますね。

 ア大王は象さん軍団と戦って瀕死の重傷を負い、さすがに弱気になって故郷へ帰還。すると部下たちは、よってたかってア大王を謀殺してしまう…。これは、『JFK』で描かれた[ケネディ大統領暗殺の真相]と同じでございます。

 つまり、もしブッシュ大統領が撤退しようとすれば、ケネディのように暗殺・謀殺されてしまうであろう…と、いうわけですね。うーむ、さすがオリヴァー、面白い!

 …のですが、ア大王の話を期待したのに、(予想できるとはいえ)現在のアメリカを見せられるお客さんもたまったものではありません。200億円超の製作費、上映時間173分、大スペクタクルの戦闘シーンも、『エニィ・ギブン・サンデー』ばりの、やたら細かいカット割りと、やたらうるさい効果音で何が何だかさっぱりわからない感じで眠気を誘われることはなはだしいのでした。

 きっと映画製作の現場は、スタッフみんな帰りたがっているのに、オリヴァー・ストーンただ一人、大張り切りだったのでは…って感じでオススメです。

☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Mar-16;