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ヘルボーイ

 魔界の使者を倒せるのは、地獄から来た“奴”しかいない! ババーン! 監督は、メキシコ出身ギレルモ・デル・トロ、メキシコ製『クロノス』で注目され、アメリカ映画デヴューは巨大ゴキブリが人を襲う『ミミック』、その後大作『ブレイド 2』をそつなくヒットさせ、ついにというか何というか、この『ヘルボーイ』、「自分が大好きな題材を、好きなように撮った」感じで、とにかく特撮・映像のヴィジュアルに凝りまくっており、素晴らしくカッコいい傑作となっております。

 なんでも快作『BLOOD THE LAST VAMPIRE』のキャラデザインや、「シンメトリー倶楽部」で写真家としても(?)おなじみの寺田克也氏や、韮沢靖氏、弐瓶勉氏ら(実はよく知りません)日本人コミックアーティストもヴィジュアル作りに参加しているそうで、『GOD*DIVA ゴッド・ディーバ』同様、コミック魂がこめられてあの辺の(?)コミックがそのまんま実写で再現されているのが実に美しく、気色悪く、気持ちいいのであった。やはり、コミックやアニメを映画化して成功するには、コミックやアニメに対する圧倒的な愛が必要なのですね、と一人ごちました。余談ですが『CASSHERN』はコミック愛が希薄でしたね。そうそう、和製『ヘルボーイ』こと『デビルマン』(というか『デビルマン』が本家か)ももうすぐ公開ですが、果たしていかなることになっておりますやら、実になかなか楽しみです。

 閑話休題。この『ヘルボーイ』、CG ばやりの昨今にあっても何でもかんでも CG で処理するでなく、基本はミニチュア・着ぐるみで撮って、部分部分に CG で手を加えているとお見受けしたところ、パンフのプロダクション・ノートによると「実写 8 割、CG 2 割」、CG 導入で失われつつある「特撮映画の快楽」が見事に復権、例えば着ぐるみ半漁人エイブに CG で加えられたとおぼしき奇妙な目の動きなんか、うーん、こんな生き物いるかも? どうやって撮影したんやろ? って感じで気色よいです。ちなみに、特撮には『スターシップ・トルーパーズ』などのフィル・ティペットスタジオ、スペシャルメイク界の人間国宝リック・ベイカーのスタジオという、特撮マインドを持ち続ける現代最高峰の SFX スタジオが加わっており、いい仕事しております。

 また、ニューヨークが舞台という設定なのにニューヨークらしからぬゴスな風景…って、プラハにロケしたそうで、随所に見られるこだわりヴィジュアルに感嘆の声を上げるのみならず、原作(未読)のエッセンスをうまくまとめた、と思われる脚本もよくできております。

 ヘルボーイ誕生秘話をまず描き、ヘルボーイやら半漁人やらはいかにして MIB ならぬ「BPRD (超常現象調査防衛局)」の局員になりしか? というところはバッサリ割愛しつつ、新米局員の視点で、BPRD +ヘルボーイの現在を手際よく紹介し、宿敵ラスプーチンとの対決になだれこんでいく…という感じ、2 時間 10 分と少々長いですが、ヘルボーイとファイアスターター=リズ・シャーマンのロマンスも悠々たるタッチで進行、最近のアメコミ映画につきものの、ガチャガチャ大急ぎな感じと違っててよろしいんじゃないでしょうか。

 ヘルボーイが恋慕うファイアスターターことリズ・シャーマンをデートに連れ出した新米 BPRD 所員、二人してベンチに座るを監視するヘルボーイと通りすがりの少女、少女曰く「あらら、あの男の人、退屈しているのね」、と見ると新米所員「ふわわーーー」と伸びをしながら大あくび、それを見たヘルボーイ、「ふふん! よくある手口だぜ!」……とか、って映画を見た人にしかわからないと思いますけど、ラブコメ風の気の利いたセリフも笑わしてくれます。

 って、ヘルボーイは第二次大戦中の生まれですが、何せ地獄少年なもんで精神・肉体年齢は 20 歳前後という設定、地獄で生まれ、半ば幽閉状態という最悪な環境で育ったやさぐれ青年が、自我を確立する青春映画という面もあって、「人の性格は、生まれによって決まるのか? 育ちによって決まるのか?」という問いがビシッとつらぬかれ、「育ちでもなく、生まれでもない、『何を選択するか』で決まるのだ!!」と、生まれも育ちもよくなくて犯罪に走るかもしれない青少年に向けたまっとうなメッセージ、感動的だったりします。って原作もそうなんでしょうか? 原作日本語版『ヘルボーイ 魔神覚醒』 『ヘルボーイ 破滅の種子』 を Amazon.co.jp でポチりたいのですけど、2004 年 10 月 8 日現在なぜか在庫切れ。うーむ。

 それはともかく、異形のヘルボーイ、半漁人エイブ、ファイアスターター・リズら主要キャストは言うに及ばず、悪役、脇役までキャラが立っててグー。憎まれ役 BPRD 上司が最後の最後に「葉巻を吸うときはマッチを使うんだ!」とヘルボーイに助言して、一瞬心を通わせるシーンは、ちょっとヨーロッパ映画っぽかったり、とか。

 筆頭悪役であるはずのラスプーチンの悪さがいまいちかな? と思わないではないですが、超カッコいいヴィジュアルの連続、脇役が多いロン・パールマンの堂々たる主役っぷりも泣ける感じ、どこの誰が見ても面白いってワケではないでしょうけど、お好きな方(誰?)にはバチグンのオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Oct-08
Amazon.co.jp
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