オールド・ボーイ
お前は誰だ!? なぜ俺を×××(ネタバレ自粛)!? 日本のマンガを換骨奪胎した見事な脚本、近年まれに見るバチグンに面白いストーリー、二転三転、ノンストップ、予断を許さぬ展開が素晴らしいので、事前の予備知識まったくなしでの鑑賞を強くおすすめします。
以下、ネタバレ含みます。
原作:土屋ガロン/作画:嶺岸信明のマンガをもとにしており、…土屋ガロン? よく知らないなぁと思っておりましたら、『ボーダー』『ア・ホーマンス』の狩撫麻礼の新しいペンネームだそうです。ふむふむ。
監督・脚本は、ちょっと面白かった『JSA』のパク・チャヌク。なんでも、原作マンガをパク・チャヌクに紹介したのは、名作『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督だそうです。ふむふむ。
日本でもあまり知られていない(ですよね?)マンガが、韓国で映画化されたというのが、なんかすごい! と思うのですけど、ちかごろ活気づいているように見える韓国映画、実はホントに活気に満ちていて、貪欲に映画の題材を探していることのひとつのあらわれでありましょうか。逆に、日本映画界の企画力の貧困さ、アンテナの感度の悪さを露呈していると言える。というか、日本のマンガは、日本人・私が思っている以上にアジア各国でよく読まれているということでもある。
仮に日本で映画化したとしても、これほど面白く仕上がったかどうか? と思わせるほど、パク・チャヌク監督の語り口がバチグンに鮮やかです。以下ネタバレくれぐれもご注意ですが、主人公オ・デス、酔っぱらって管を巻いていたと思ったら、いきなり拉致監禁され、なんとか脱獄するため一生懸命、壁に穴を掘っていたら、突如…と、とんとんととーんと小気味よく、常に観客・私の予想を上回っていく展開が最高です。なぜ、監禁されたのか? その謎を追って主人公オ・デスは突き進み、私は、グイグイ物語にひきずりこまれる快感を味わったのでした。
まあ、こういう滑り出し快調な映画は、後半ダレたりするものですが、いや実際、前へ前へ進んでいた主人公が、過去へひきかえしていくのでスピーディさは少し削がれるのですが、後半は後半で、これまた見事などんでん返しが用意されており、どんでん返しといっても、最近のアメリカ映画のような、観客を置いてけぼりにするようなもんじゃございませんよ。この映画はてっきり「復讐の物語」だと思っていたのに、実は「復讐の物語」だった! ガーン! という、驚くべきどんでん返しなのでした。ってよくわかりませんね。
「なぜ、監禁されたのか?」という謎を追って主人公オ・デスは行動します。しかし、「なぜ、監禁されたのか?」より「なぜ、解放されたのか?」が重要だった! と、ちょっと論理ゲーム風のトンチが効いたどんでん返しで、しかし、物語はゲーム的な娯楽に収束するかと思いきや、なかなかにえげつない結末、議論を呼ぶと思われるテーマが提示され、パク・チャヌク凄い! とうなりました。「復讐」というのは、マカロニ・ウェスタンの基本テーマであることに見られるように、キリスト教的な主題だと思うのですが、ここでは儒教的な方法で行われ、結局「逆恨み」以外の何ものでもなかった、というアジア的なオチになるところとか。ってよくわかりません。
そうそう、パク・チャヌク監督の語り口が鮮やかという話であった。例えば、40歳代の主人公オ・デスが、回想場面に入り込み、10代のオ・デスの後をついていく…みたいな、オーソドックスではありますが、近頃ではなかなかお目にかかれない見事な回想シーンや、主人公オ・デスがカナヅチひとつで、ヤクザ数十名をコテンパンにのしていく横移動シーン、など、映画的な演出の面白さが随所にあふれている、と一人ごちました。
9.11以降、『キル・ビル』、『CASSHERN』、『ミスティック・リバー』『パニッシャー』など、「復讐」をテーマにした映画が色々ありましたが、「復讐すること」と「復讐されること」が同値であることを示すこの『オールド・ボーイ』は、その決定版ではないでしょうか。前半の面白さは群を抜いてますのでバチグンのオススメです。
☆☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)