ランダウン
ロッキング・ザ・アマゾン
タフでなければ生き残れない!! ババババーン! アメリカ WWE プロレス大スター、ザ・ロック(=ロック様)、『スコーピオン・キング』に続く主演第 2 作、満を持して現代劇初挑戦です。
さてアメリカ映画は、マーケティング偏重、CG 使いすぎ、MTV 出身新人監督の起用などで、ずんずんつまらなくなっておりますが、この『ランダウン』の場合、「プロレス大スターでいかに儲けるか?」と徹底的に市場調査した感じ、CG もそこそこ使われ、監督ピーター・バーグ(前作は『ベリー・バッド・ウェディング』、私は未見)は MTV 出身ではないものの、パッと見カッコいい過剰な演出、と、面白くなさそうな雰囲気ぷんぷん、ところがあにはからんや、意外な拾いものの傑作でございました。
まず、ロック様のキャラクター設定が素晴らしいです。扮するは L.A. の借金取り立て人。若い頃ワルもやったが、そろそろ足を洗いたくイタリア料理勉強中、レストラン開業資金を貯めている、という設定。ラジオで「ポルチーニ茸」レシピが紹介されれば、せっせとメモを取る几帳面さ・貧乏くささと、強面をあわせもつ見事なキャラ立ち、ファーストシーンからダーン! とキャラが立って、筋肉アクションはキャラ命! って感じですね。
少しネタバレですが、冒頭、某筋肉系スターがカメオ出演、ロック様に「Have a fun !(楽しんでこいよ!)」と声をかけるのは、筋肉系スターの系譜にロック様を位置づけようとの、製作者の強烈な意思の表明でありましょう。
また、筋肉系スターというと、無意味に裸になったり、馬鹿でかいマシンガンをバリバリぶっ放したりと、馬鹿力を誇示しがちですが(そういうのも面白いのですが)、ロック様の場合は、借金取り立ては穏便に済ませたい、銃は絶対使いたくない謙虚なところが素晴らしいです。もちろん、クライマックスは怒髪天を突いて馬鹿力を爆発させますが、それまで我慢に我慢を重ねるあたりは、イーストウッドや高倉健らが連綿と演じてきた、「ヒーローの原型」に忠実と言えましょう。
さらに、アクションがカッコいい! アクション監督アンディー・チェンは、ジャッキー・チェンのスタントマンとして活躍された方だそうです。例えば、丸腰ロック様が、銃武装の悪漢どもに囲まれた窮地をいかに脱するか? そのへんにジャッキー作品テイストが感じられてゴキゲンでございます。筋肉アクションスター作品は、つい主人公が無敵すぎて面白くなくなりがちなところ、「窮地」が「窮地」として巧く機能しております。力持ちなだけでは生き残れないジャングルという舞台設定も、製作者のクレヴァーさがうかがえます。
アクションのカット割りがめまぐるしいのはいただけませんが、ダーン! とスローモーションになるのはサム・ペキンパー風で最高に気色よいです。また、ブン! とターンテーブルを投げる、あるいは、スチャッと落ちてきたライフルをキャッチする、などキメのアクションがバッチリ決まって、ロック様、最高! でございますね。
おまけにユーモアのセンスもすぐれております。オープニング、フットボール選手の借金取り立てシーン、「フットボール選手たちがどんなに凄い選手か?」がスタイリッシュに、大げさに、えんえん紹介されますが、彼らフットボール選手が登場するのは初めだけじゃん! …って感じ、無意味に大げさなのがおかしいです。悪役クリストファー・ウォーケン経営するアマゾン金鉱の紹介シーンとか、『ロード・オブ・ザ・リング』大群衆シーンもビックリな大スケールなのも、馬鹿馬鹿しくって最高でした。
共演は、『アメリカン・パイ』シリーズのステッフラーことショーン・ウィリアム・スコット。『バレット・モンク』でもチョウ・ユンファと共演、カンフー馬鹿なところを見せ、今回も好演。ロック様との「バディ・ムーヴィー」的掛け合いもお楽しみいただけるのではないでしょうか。ぜひ、ロック様+ショーン・ウィリアム・スコット、悪役クリストファー・ウォーケン、同じキャストでシリーズ化していただきたい、この線で、ロック様主演作をがんがん作っていただきたいな、と一人ごちましたとさ。
バチグンにオススメしても、誰も見に行ってくれないと思いますけど、バチグンのオススメです!
☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)