京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 04 > 0602
 Movie Review 2004・6月2日(Wed.)

トロイ

公式サイト: http://www2.troy.jp/

 それは史上最大の「愛」のための戦い――。ババーン! 監督はヴォルフガング・ペーターゼン、かつて『U-ボート』『ネバーエンディング・ストーリー』『第 5 惑星』『アウトブレイク』『シークレット・サービス』など傑作を連発して新作が楽しみだったものの、近年『エアフォース・ワン』『パーフェクト・ストーム』と少々底抜け気味大作が続き、やっぱり新作が楽しみなのですが、今回は、ホメロスの『イリアッド』を壮大なスケールで描きます。

 さてブラッド・ピット扮する主人公アキレスは、「オレは王様のために戦うのではない、歴史に名を残すために戦うのだ!」とおっしゃる血に飢えたムキムキ戦闘マシーンです。歴史どころか、身体の部位「アキレス腱」にその名を残してめでたしめでたし、また、描かれるのはトロイ戦争、「トロイの木馬」も、コンピュータ・ウィルスにその名を残して、めでたしめでたし。

 というわけで、「アキレス腱」「トロイの木馬」の語源に興味を持つ方は、必見の作品なのですが、さらに、この『トロイ』は、トロイ戦争が残した言葉はそれだけではない! 「にぶい。愚かだ。間が抜けている」様子を形容する言葉「トロい」を残したのだ! ババーン! …と新説を唱えるのであった。って、唱えてませんが、映画にみなぎる“トロさ”は、まさしく『トロイ』の名に恥じないものでした。そういえば『ビッグ・ファット・ウェディング』のオヤジさんも、「すべての言葉はギリシャ語に起源を持つ」と言ってたしなぁ、と、私は目からウロコを落とされた気分でいっぱいです。

 実際、『トロイ』の、もの凄い人数の兵士たちが入り乱れる一大戦闘シーンや、もの凄いスケールの市街戦スペクタクルなど、目をみはるほどに「何を今さら……」という印象です。悲しいかな『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』『王の帰還』のド迫力には遠く及ばず、巨大象やドラゴンも出てこないしー、変化に乏しく、『トロイ』は公開時期を思いっきりはずした感じで、その“トロさ”に開いた口がふさがりませんでした。

 公開時期を 2 年ぱかしはずしたのを差し引いても、『トロイ』には“トロさ”が充ち満ちています。ペーターゼン率いる美術スタッフによると、「ギリシャ軍が木馬を作るには、材料は船の廃材しかなかったはずだ!」との推論にもとづいてつくられた木馬は……怪し過ぎ! いや、カッコいいんですけど、こんな怪しい木馬、普通、城壁内に入れんやろ? とツッコまざるを得ません。どう見ても、中に兵隊が隠れている雰囲気プンプン、怪しい木馬を作る方もトロいし、城壁内に入れる方もトロ過ぎです。

 そんな話のトロさを差し引いても、ブラッド・ピット、エリック・バナ、オーランド・ブルーム、ブライアン・コックス、ピーター・オトゥールなど、ウホッ! と喜ぶ男優多数が出演、それぞれカッコいいんですけど、いまいちキャラ立ちが弱いのであった。

 唯一、オーランド・ブルーム、ヘナチョコな色男キャラで登場したのが、クライマックス戦闘シーンでは一転、「そうそう、忘れていたけどボクは弓が得意なのだった!」と、びゅんびゅん弓矢を撃ちまくるのは、あたかも自分が『ロード・オブ・ザ・リング』のレゴラスだったのを思い出したかのような、妙なキャラの立ち方で興味深い。

 ともかく、みなさんも、映画史上に残る“トロい”映画『トロイ』に酔いしれてください。上映時間も 2 時間 40 分と随分トロく、とはいえ、筋肉ムキムキのブラッド・ピットの全裸シーンありですので、そういうのがお好きな方は我慢してご覧くださいませ。やっぱり、ヴォルフガング・ペーターゼンからは目が離せませんね! 次回作も超楽しみな私なのでした。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-jun-2