トッポ・ジージョのボタン戦争
イタリア生まれの永遠のアイドル・キャラクター、トッポ・ジージョ主演の名作が今、よみがえる!!! ババーン!
往年の人気キャラ、トッポ・ジージョ堂々の主演作品、監督が名匠・市川崑という珍品、唐突にリヴァイヴァル上映です。市川崑『黒い十人の女』をひっぱりだして公開したら儲かった、『チェブラーシカ』を発掘して公開したら儲かった、昔の人形キャラ+市川崑なら断然儲かるはず! との目論見かも知れませんね。よくわかりません。
ともかく市川崑1967年初公開の旧作が、スクリーンで見られるのは喜ばしいことですし、市川崑作品の中でも滅多に見られないようですし、フィルモグラフィにおいては『東京オリンピック』(1965年)総監督の重責を果たした次の作品で脂がのりにのり切った絶頂期にサクッと肩の力をぬいて作った小品っぽい印象ですし、市川崑らしいグラフィック・デザイン感覚が全編に炸裂した作品ですし。
ほとんど真っ暗な画面に、コントラスト高めでスポットライトあてられたトッポ・ジージョの活躍が浮かび上がる映像スタイル、映画の「余白」=黒みの大胆な使い方、構図のカッコよさはさすが市川崑である。うむ。と一人ごちました。
では面白いかというと、スタイリッシュかつモダンな映像スタイルを茫然とながめる分にはよろしいけれども、トッポ・ジージョの可愛い呆けたしぐさと、スタイリッシュなスタイルがミスマッチな感じで、どうにもこうにも。『雪之丞変化』(1963年)などは、「時代劇」+モダンデザインのミスマッチ感が今見ても新鮮なのに対し、『トッポ・ジージョ』の場合は作家性が突出してしまっている印象です。
そういう作家性の突出、「ボタン戦争」という題材の暗さは1967年頃の時代精神なのでしょう。この頃はお子様むけの作品でも、夢も希望もない暗い作品が多かったと思います。『空飛ぶゆうれい船』(1969年)、『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)、あるいは『ウルトラマン』『怪奇大作戦』『ウルトラセブン』などのテレヴィ番組を幼少期に見せられた、1960年代生まれの世代である私の性格が歪んでいるのはそういう背景があるのでしょうね。
って、そんなことはどうでもいいのですが、話とスタイルのアンバランスはなはだしく、ギャグも何が面白いのかさっぱりわからず、珍作好きの私は大満足でした。さらに今回見たのが、なんとビデオ上映だったのです。わざわざ映画館で見る意味ないしー。黒みが多い画面がどうにも見づらくて眠い感じで、カッコつけた映像スタイルが逆効果じゃん? という感じです。
ビデオでなく、フィルムでリヴァイヴァル上映されているところもあるのでしょうか? 何が何でもフィルムじゃなきゃヤダ! という方にはオススメしません。最初からヴィデオで見る分にはお楽しみいただけるかと存じます。マンマ・ミーア。
☆(☆= 20 点・★= 5 点)