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一瞬の相思相愛。ババーン! マイケル・ウィンターボトム最新作は、近未来を舞台にし、ティム・ロビンス+サマンサ・モートン主演で送るラヴストーリー。
さて。世界は快適に管理された裕福な大都会と、ほったらかしの周辺地域に分かれており、大都会への入境は「パペル」というビザとパスポートを兼ねたような紙切れで厳密に管理されております。調査員ティム・ロビンスは、不法パペルが発見された上海に犯人探しにやってきます。パペル製造工場から、不法にパペルを持ち出した下手人はサマンサ・モートン。ティム・ロビンスは妻子ある身ながら、彼女に出会って一瞬にして恋に落ち…というお話。
ゴダール『アルファビル』、ヴィンチェンゾ・ナタリ『カンパニー・マン』のような、現実・実在の都市・建築を未来に見立ててロケ撮影しており、「そのまんま近未来都市」=上海の都市空間がなかなか気色よいです。オパール店主夫妻も宿泊されたグランドハイアット上海に、ティム・ロビンスが宿泊するのが見どころでしょうか。
『24アワー・パーティ・ピープル』『イン・ディス・ワールド』同様の、HDカメラで撮影されたとおぼしき即興的な映像、即興的な編集はウィンターボトムの持ち味になってきておりますが、今回はだいぶんがちゃがちゃうるさい印象、もうちょっとじっくりティム・ロビンス+サマンサ・モートンの演技を見たいし、上海、そして後半ドバイに移る都市の風景をゆっくりながめていたい感じです。
『24アワー・パーティ・ピープル』『イン・ディス・ワールド』は、粗い映像、即興的な編集がジャーナリスティックなリアリティを感じさせましたが、近未来SFでそれをやるのはいかがなものか? SFなど、舞台設定が突拍子のないものなら、タッチは極力オーソドックスな方がよいのかも? …と、一人ごちました。
また、ナレーションがやたらと説明的なのが気になります。即興的な演出、即興的な編集で仕上げたら話がわかりにくいと文句を言われて、わかりにくいところは全部ナレーションで説明しました! みたいな感じで、例えば、少しネタバレですが、いったん相思相愛になったティム・ロビンスとサマンサ・モートン、再会してみると彼女がまるで初めて出会ったかのようにふるまう…というのは不条理で面白いシチュエーションですが、ことの顛末をあっさりナレーションで説明されてもねぇ、とも一人ごちました。
と、少々文句は申しましたが、クライマックス、二人が何者かに追われてクルマで逃亡するシーンなど、これがアメリカ映画なら、意味なくスリルとサスペンスを盛り上げて眠くなってしまうところ、サクサクッとあっさり語られ、「ベタな観客サービスしたり、こつこつ完成度を上げるヒマがあったら、さっさと次の映画を作る」みたいな、前のめりな意志を感じてしまう、生き急いでいる感じがウィンターボトムのよいところでございますね。よくわかりませんが。
そんなことはどうでもよくて、ウィンターボトムが提示してみせる未来社会像がなかなか面白いですし、IMDbのトリヴィアによると、上海のカラオケパブで『Should I Stay or Should I Go?』を唄っているのは、ミック・ジョーンズ(元ザ・クラッシュ)だそうですし、『イン・ディス・ワールド』のような衝撃はないですけど、オススメです。
☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)