ソウ
ショックの限界を超えるソリッド・シチュエーション・スリラー。ババーン! ふと目がさめると、××××という異常なシチュエーションにおかれており、(ある意味で)驚愕の展開が用意されておりますので、事前の予備知識いっさいなしでのご鑑賞をオススメします。
『CUBE』+『セブン』『ゲーム』、さらに『スクリーム』、ブライアン・シンガー監督某作品に似た肌合い、そういうのがお好きな方にオススメです。私の場合、『CUBE』はまあまあ、『セブン』『ゲーム』『スクリーム』はちょっとダメ、ブライアン・シンガー監督某映画は全然ダメ、まあ、そんな感じです。
以下、ネタバレ含みます。
さて、その異常なシチュエーションを若干、説明しますと、
- 目覚めたら老朽化したバスルームにいた
- 足首は鋼鉄の鎖で部屋の隅につながれている
- 対角線上にもう一人男がいて、同様に鎖につながれている
- ふたりの間には自殺死体(ふたりからは、届かない位置)
- 自殺死体の手には、ピストルと、テープレコーダーが握られている
…と、いうもの。
も少し説明すると、数件の、異常な連続殺人事件の概要が回想され、それら事件は、被害者が監禁されてゲーム的な状況におかれ、犯人が提示する無理難題をクリアすると解放されるが、失敗すると死んじゃうというもの。
バスルームに監禁されている一人は、医師ローレンス・ゴードン、妻と子を人質にとられていて、助けるには対角線上にいるもう一人の男アダムを殺さねばならないという、理不尽な「死のゲーム」なのであった。
やがて二人は、それぞれ金ノコをゲット。ローレンスは、ピストルの銃弾1ヶゲット。どうやら犯人はローレンスに、金ノコで自分の足を切り、死体が持っているピストルをゲットして、アダムを殺させようとしているらしい。…と、『決定不能の論理パズル』風の舞台設定なのですが、少々詰めが甘いのでは? と私は一人ごちました。
まず、足首をつないでいる鎖は、ほんとうに金ノコで切れないのか? と思いました。金ノコで鎖を切ったことがある方ならおわかりいただけるでしょうが、この作品の二人のようにガムシャラに切ろうとして切れるものではない。しかし落ち着いて、時間をかければ切れるのでは? 仮に、ノコの刃の硬度が足りないのならば、刃こぼれするカットをアップで見せていただかないと納得がいきませんよね。
監禁された二人は、「金ノコは、鎖を切るためのものじゃない!!(自分の足首を切るためのものだ!)」と早合点しますが、そもそも自分の足首を切る方がよっぽどむずかしいのではないでしょうか?
金ノコで自分の足首を切ったことのある方ならおわかりいただけると思うのですが、そうそうあれ、めちゃ痛いねん。……って切ったことあるんかい! ついノリツッコミしてしまいましたが、普通、痛みで気絶してしまうと思うのですよ。
やはり、ここはアイテムとして「局所麻酔薬と注射器」をご用意していただきたいところです。アダム「…なんだこの薬は…?」。ローレンス「…これは、局所麻酔薬だ!!」…みたいな会話があれば、ローレンス=医師という設定も生きてくると思うのですがいかがでしょうか。
また、医師ローレンスがアダムを殺したとしても、どうしたらバスルームから脱出できるのか? 結局、犯人の善意(?)にすがらないとダメなワケで、それはたいそう不確実、そこらへんで興をそがれて、どうでもいい感がプーンと漂ってしまいます。こういうゲーム的なシチュエーションでプレイするには、少々二人+犯人の頭が悪すぎたと思うのです。『DEATH NOTE』を見習っていただきたいところですね。
バスルームに水洗洋式トイレがあって、「ハートを探せ」のメッセージに従ってアダムは、便器の汚水に顔をしかめながら手をつっこむ…って、普通、タンクを先に調べるやろ! とか、この非常時に吉本新喜劇級のボケをかまされると、ホントにどうでもよくなって、何でもありな感じが漂って、実際、何でもありの結末で、ほのぼのした気分になりました。
監督はジェームズ・ワン、脚本はリー・ワネル(アダム役を自作自演)。二人はオーストラリアの映画学校で知り合い、共同で脚本を書き、その脚本の一部を撮影したパイロットフィルムをDVDに焼き付け脚本とともにアメリカの映画プロデューサーに送って、見事、長編デビューを飾ったそうです。ヴィジュアル的・アイデア的には面白いので、もうちょっとかしこい人に脚本を煮詰めてもらうとよかったのかも? と思いました。ともかく次回作に期待しましょう。
この手の映画がお好きな方にオススメです。
☆(☆= 20 点・★= 5 点)